骨転移に対する単回照射について
目次
1:骨転移に対する放射線治療
2:8Gy1回照射
3:8Gy1回照射の今後
4:参考文献
骨転移に対する放射線治療
骨転移に対して放射線治療を行うことは日常診療においてよくあります。
主な目的は疼痛緩和や病的骨折の予防です。
特殊な状況では骨転移が隣接する神経を圧迫している場合もあるので、圧迫解除の目的で照射する場合もあります。
骨転移に対する放射線治療では30Gyを10回に分けて照射するのが一般的です。
いっぽうで最近では8Gyを1回だけ照射する方法も行われており、以前に比べるとその認知度も上がってきました。
8Gy1回照射
1回照射のメリットはなんといっても、1回で治療が終わるため負担が少ないです。
これは通院による負担もそうですし、費用的にも従来よりも少なくなることが期待できます。
そして、これまでに様々な研究において、8Gy1回治療と従来の治療との比較が行われてきました。
その結果、様々な大規模研究において、治療効果、治癒率、疼痛改善効果、無増悪期間、病的骨折の発生率など、多くの項目で1回照射と従来照射は差が無いことが示されてきました。
この結果を受けて、多くの国の学会や機関では、1回照射を骨転移に対する放射線治療の標準治療のひとつとして勧めるというガイドラインを作成しています。
しかしながら、現実的には1回照射の採用率というのはそこまで高いものではありません。
アメリカのデータになりますが、2009年~2012年の間でオンタリオ州で骨転移に対して放射線治療を受けた症例のうち1回照射が適応されたのは44%でした。
おそらく日本ではもっと低い値になっているのではないかと思います。
これについては治療医における精神的な障壁が、1回照射の採用率を低下させている可能性があります。
これは医療のみに限った話ではありませんが、これまでにうまくいっている方法を、別の新しい同等の効果を持つ方法が出てきたとして、容易に変えられないというものです。
おそらく日常生活における身近な部分でもこういったことは起こり得ると思います。
8Gy1回照射の今後
8Gy1回照射には治療期間を短縮できるという大きなメリットがありますが、デメリットがまったくないわけでもありません。
オランダの研究では、比較的大きめの骨転移に対する放射線治療では、単回照射群でその後の骨折の率が高かったことが報告されています。
また、同じ研究では単回照射群で、その後に再度照射が必要となった症例が多く、長期的な腫瘍制御という点では、単回照射よりも複数回照射のほうが優れている可能性があります。
8Gy1回照射の適応については上記のようにすべての症例で適応できるというわけではありませんが、治療期間を短縮できるのは大きなメリットです。
それによって家族や親しい人々と一緒に過ごす時間が増えますし、できた時間で旅行に行くこともできるかもしれません。
すでに8Gy1回照射については十分なエビデンスが積みあがってきていると言え、医療者としても今後採用率を高めていく必要がある段階にきていると思います。
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