直腸癌の放射線治療|術前CRT・短期照射・手術省略・免疫療法まで最新エビデンスを解説

2023年2月19日

直腸癌治療はここ数年で大きく変化しています。
従来の術前化学放射線療法(CRT)+手術に加え、

  • 短期照射(5Gy×5回)

  • 手術を省略する治療戦略

  • 免疫療法(ドスタルリマブ)

など、新たな選択肢が報告されています。

本記事では、直腸癌に対する放射線治療の最新エビデンスを分かりやすく整理します。

直腸癌の標準治療とは

ステージ2~3の手術可能な直腸癌では、

術前化学放射線療法(CRT)を先行し、その後に手術を行う

ことが標準治療とされています。

術前化学放射線療法(従来法)

  • 放射線:50~50.4Gy(1回1.8~2Gy)

  • 化学療法:カペシタビン併用

この方法は長年行われてきました。

なぜ術前に行うのか?

目的は以下です。

  • 腫瘍を縮小させる

  • 完全切除率を上げる

  • 肛門温存率を高める

直腸癌手術では、腫瘍が大きいと肛門切除が必要となり、人工肛門となる可能性があります。
肛門温存は生活の質(QOL)に大きく関わります。

① 短期照射(5Gy×5回)は標準治療より優れるのか?

大規模ランダム化比較試験(920例)

標準群

  • 50Gy/25回前後

  • カペシタビン併用

短期照射群

  • 5Gy×5回

  • その後18週間の化学療法

結果

  • 病理学的奏効率:短期照射群が優れる

  • 治療成功率:短期照射群が優れる

  • 遠隔転移:短期照射群が少ない

  • QOL:差なし

治療成績は向上し、QOLは維持されていました。

本研究は大規模ランダム化比較試験であり、エビデンスレベルは高いと考えられます。
今後、標準治療が変わる可能性があります。

今後の課題

短期照射後の18週間の化学療法期間が適切かどうかは今後の課題です。
期間短縮が可能になれば、利便性はさらに向上すると考えられます。

② FOLFOXとCRTの順番はどちらが良いか?

研究では以下を比較しています。

A群

FOLFOX → CRT

B群

CRT → FOLFOX

放射線は両群とも50.4Gy/28回。

結果

  • 腫瘍消失率

    • A群:17%

    • B群:25%

  • 生存率:差なし

  • 副作用:A群で消化管・神経系副作用が多い傾向

先にCRTを行い、その後FOLFOXを行う方が腫瘍制御が高いと期待されます。

③ 術前短期照射(25Gy/5回)の別研究

別の研究では、

短期照射群

  • 25Gy/5回

  • その後FOLFOX 3サイクル

従来群

  • 50.4Gy照射

  • 5-FU+Oxaliplatin

結果

  • 急性期副作用:短期照射群で少ない傾向

  • 完全切除率:差なし(77% vs 71%)

  • 腫瘍消失率:差なし(16% vs 12%)

  • 晩期有害事象:差なし

  • 無病生存率:差なし

短期照射は有効な選択肢と考えられます。

④ 手術は本当に必要か?(手術省略の可能性)

米国退役軍人データ(1313例)

  • CRTのみ:313例

  • CRT+手術:1000例

平均生存期間

  • CRTのみ:30.6か月

  • CRT+手術:89.3か月

しかし、

CRTのみ群のうち**著効例(約20%)**では

  • 平均生存期間:73.5か月

手術群で腫瘍消失例(約10%)では

  • 平均生存期間:133.7か月

結論

  • 著効例では手術群と拮抗する可能性

  • 著効しなかった場合は手術が望ましい

高線量CRTのみの研究(51例)

  • T2-3、N0-1

  • 65Gy(IMRT)

結果

  • 臨床的寛解:40例

  • 5年非再発率:31%

  • 5年全生存率:85%

  • QOL:大きな変化なし(直腸出血は低下)

現時点の考え

手術省略を一般化するのはまだ難しいですが、

  • 高齢者

  • 手術困難例

  • 外科医不足地域

では選択肢となる可能性があります。

⑤ 免疫療法ドスタルリマブの衝撃的結果(NEJM)

対象:
ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)直腸癌
ステージ2–3

治療計画

ドスタルリマブ投与
→ 寛解例はCRT・手術を行わず経過観察

結果(12例評価可能)

全例で寛解達成

追加の放射線治療・手術は不要でした。

今後の放射線治療の役割

  • まず免疫療法

  • 反応を見てCRTや手術

という流れに変わる可能性があります。

その場合、放射線治療は
「標準治療」から「補助的治療」へ
役割が変化する可能性があります。

総まとめ

✔ 術前CRTは標準治療
✔ 短期照射(5Gy×5回)は有望
✔ CRT著効例では手術省略の可能性
✔ dMMR症例では免疫療法が大きな転換点
✔ 直腸癌治療は現在進化の過程にある

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直腸癌の手術では、状況によって人工肛門(ストーマ)が必要になることがあります。
「実際の生活はどうなるのか」「仕事や外出はできるのか」といった不安を抱える方も少なくありません。

人工肛門について正しく理解するためには、専門家による解説書や実際の体験談をまとめた書籍が参考になります。ストーマの基本的な仕組みから日常生活の工夫、ケア方法まで丁寧に解説されており、治療を考えるうえでの安心材料の一つになります。

治療法を選択する際には、医学的な情報だけでなく、その後の生活についても具体的に知っておくことが大切です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 直腸癌の標準治療は何ですか?

ステージ2~3の手術可能な直腸癌では、術前化学放射線療法(CRT)を行った後に手術をする治療が標準とされています。
放射線は50~50.4Gyを分割して照射し、カペシタビンなどの抗がん剤を併用します。

Q2. なぜ直腸癌では手術の前に放射線治療を行うのですか?

術前に放射線治療と化学療法を行うことで、

  • 腫瘍を縮小させる

  • 完全切除率を高める

  • 肛門温存の可能性を上げる

といった効果が期待されるためです。
肛門を温存できるかどうかは、生活の質(QOL)に大きく影響します。

Q3. 短期照射(5Gy×5回)は従来の治療より良いのですか?

920例を対象とした大規模ランダム化比較試験では、

  • 病理学的奏効率

  • 治療成功率

  • 遠隔転移の抑制

いずれも短期照射+長期化学療法群の方が優れているという結果でした。
生活の質(QOL)には差がありませんでした。

Q4. 短期照射は副作用が強いのではありませんか?

別の研究では、短期照射群のほうが急性期の副作用は少ない傾向が示されています。
晩期有害事象や生存率には有意差は認められていませんでした。

Q5. FOLFOXとCRTはどちらを先に行うべきですか?

研究では、

  • FOLFOX → CRT

  • CRT → FOLFOX

を比較しています。

腫瘍消失率は**CRTを先に行った群のほうが高い(25% vs 17%)**という結果でした。
生存率には差はありませんでした。

Q6. 化学放射線療法だけで手術を省略することは可能ですか?

米国退役軍人データの解析では、

  • CRTのみ群の平均生存期間:30.6か月

  • CRT+手術群:89.3か月

でした。

ただし、CRTのみ群のうち著効例(約20%)では平均生存期間が73.5か月と、手術群と拮抗する結果でした。

著効例では手術を回避できる可能性がありますが、著効しなかった場合は手術が望ましいと考えられます。

Q7. 高線量の放射線治療だけで治すことはできますか?

65Gyを照射した研究では、

  • 5年全生存率:85%

  • 5年非再発率:31%

という結果でした。

ただし、手術で完全切除が可能な場合と比較すると、一般化するにはさらなる検討が必要とされています。

Q8. ドスタルリマブとは何ですか?

ドスタルリマブは抗PD-1抗体という免疫治療薬です。
特にミスマッチ修復機能欠損(dMMR)直腸癌に高い効果を示します。

Q9. ドスタルリマブの効果はどれくらいですか?

NEJMに掲載されたフェーズ2研究では、評価可能な12例すべてで寛解を達成しました。
追加の化学放射線治療や手術は不要でした。

Q10. 今後、放射線治療の役割はどうなりますか?

dMMR症例では、

  1. 免疫療法を先に行う

  2. 効果を見て放射線治療や手術を検討する

という流れに変わる可能性があります。

その場合、放射線治療は標準治療というより補助的な位置づけになる可能性があります。

Q11. 手術を避ける最大のメリットは何ですか?

直腸癌手術では肛門を切除する可能性があり、その場合は人工肛門となります。
人工肛門は生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、可能であれば回避したい治療です。

Q12. 現時点で最も確実な治療は何ですか?

治療成績のみを見るのであれば、化学放射線療法+手術を行う方法が無難と考えられます。
ただし、著効例では手術を回避できる可能性もあります。

短期照射、寡分割照射が広がった背景を解説

コロナ禍によって、短期間の治療の需要が高まりました。

参考文献

Compliance and tolerability of short-course radiotherapy followed by preoperative chemotherapy and surgery for high-risk rectal cancer – Results of the international randomized RAPIDO-trial

Long-term Clinical Outcomes of Nonoperative Management With Chemoradiotherapy for Locally Advanced Rectal Cancer in the Veterans Health Administration

Long-Term Patient-Reported Outcomes After High-Dose Chemoradiation Therapy for Nonsurgical Management of Distal Rectal Cancer

Randomized Phase II Trial of Chemoradiotherapy Plus Induction or Consolidation Chemotherapy as Total Neoadjuvant Therapy for Locally Advanced Rectal Cancer: CAO/ARO/AIO-12

Long-course preoperative chemoradiation versus 5 × 5 Gy and consolidation chemotherapy for clinical T4 and fixed clinical T3 rectal cancer: long-term results of the randomized Polish II study

PD-1 Blockade in Mismatch Repair–Deficient, Locally Advanced Rectal Cancer

Authors: Andrea Cercek, M.D., Melissa Lumish, M.D. https://orcid.org/0000-0003-4173-5567, Jenna Sinopoli, N.P., Jill Weiss, B.A., Jinru Shia, M.D., Michelle Lamendola-Essel, D.H.Sc., Imane H. El Dika, M.D., +24 , and Luis A. Diaz, Jr., M.D.Author Info & Affiliations
Published June 5, 2022
N Engl J Med 2022;386:2363-2376
DOI: 10.1056/NEJMoa2201445
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