肛門癌とは?原因・治療法・放射線治療(IMRT・CRT)までわかりやすく解説
肛門癌という病気は、あまり聞きなれないかもしれません。
肛門癌は、その名の通り肛門にできる癌です。
肛門は直腸から連続する出口の部分ですが、直腸にできる癌は「直腸癌」、肛門にできる癌は「肛門癌」と明確に区別されます。
その理由は、発生する組織が異なるため、治療法も違ってくるからです。
この記事では、肛門癌の基礎知識から放射線治療、将来展望までを順に説明していきます。
1.肛門癌の基礎知識(直腸癌との違い・原因・進行度)
直腸癌との違い
肛門癌は直腸と連続している肛門にできますが、直腸癌とは性質が異なります。
直腸癌:主に「腺癌」
肛門癌:約90%が「扁平上皮癌」
扁平上皮癌は放射線治療が効きやすい癌です。
そのため、肛門癌では放射線治療が適応されることが多いのです。
肛門癌の発生件数と原因
肛門癌は、以前と比較して発生件数が徐々に増加しています。
アメリカのデータでは、2018年時点の件数は2000年時点と比較して1.5倍以上に増加しています。
原因のひとつとして、**ヒトパピローマウイルス(HPV)**の関与が指摘されています。
HPVは子宮頸癌の原因となるウイルスでもあり、ワクチン接種が推奨されています。
子宮頸癌は女性の病気ですが、肛門癌は男女関係なく発生します。
発見時の進行度
肛門癌は発見時点で、
約半数が局所にとどまる状態
約1/3で周囲のリンパ節転移
10~15%で遠隔転移
が見られます。
なぜ手術より放射線治療が主流なのか
かつては手術による切除が主流でした。
しかし、肛門を切除すると便をためる機能が失われ、人工肛門での管理が必要になります。
人工肛門での生活はQOL(生活の質)を大きく低下させる可能性があります。
一方、放射線治療であれば肛門を温存できるため、人工肛門を回避できることが大きなメリットです。
2.肛門癌の標準治療(放射線治療・CRT・IMRT)
現在の標準治療
現在では、肛門癌に対して手術を行うことは稀で、
放射線治療を基本とした治療が標準となっています。
治療成績は腫瘍のTステージに依存すると報告されており、
T1:良好な治療成績
T4:進行するにつれて成績は悪化
という傾向があります。
化学放射線療法(CRT)
放射線治療と化学療法を同時に行う
**化学放射線療法(CRT)**も選択されます。
これまでの研究では、
放射線単独よりCRTの方が腫瘍制御が優れている
将来的に手術が必要になる割合が少ない
ことが報告されています。
IMRT(強度変調放射線治療)
近年では、**IMRT(強度変調放射線治療)**が多くの施設で導入されています。
IMRTは、
腫瘍には十分な線量を照射
周囲の正常組織の線量は低減
できる治療法です。
これにより、
副作用の軽減
副作用による治療中断リスクの低減
が期待できます。
研究では、IMRTは従来法よりも
生存率や局所制御率が優れていたと報告されています。
治療期間と線量の工夫
治療期間が長くなると治療成績が悪化することが報告されています。
そのため、1回線量を増やして治療期間を短縮する試みも行われています。
現時点で推奨される治療
現時点でエビデンスが高い治療法は、
5-FU+MMCの化学療法と放射線治療の併用
です。
3.肛門癌治療の将来展望(免疫療法・MRIリニアック)
免疫療法の可能性
将来的な展望として、免疫療法があります。
現在は臨床試験段階ですが、
遺伝子検査により免疫療法が効果的なタイプが特定されれば、
治療効果のさらなる向上が期待されます。
放射線治療の個別化
患者ごとに最適な線量を設定する「線量の個別化」も課題です。
理想的ではありますが、実現にはまだ時間がかかる印象です。
MRIリニアックの導入
近年ではMRIリニアックを導入する施設も増えています。
これは、より鮮明な画像を用いてリアルタイムに腫瘍を確認しながら治療できる装置です。
治療成績の向上が期待されています。
4.肛門癌治療のまとめ
推奨治療は5-FU+MMC併用の化学放射線療法(CRT)
CRT前の導入化学療法は推奨されない
放射線線量は50~59.4Gyが推奨
放射線治療ではIMRTの利用が推奨
治療効果の評価は治療後8週間以降
(26週以降の完全寛解も稀ではなく、長期フォローが必要)手術は再発時の選択肢として温存
直腸癌の放射線治療に関する記事はこちら
直腸癌は肛門癌と近いですが、性質はだいぶ違います。
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