放射線治療領域におけるサステナビリティ

目次

1:放射線治療における4R
2:放射線治療でのリユース
3:まとめ
4:参考文献

放射線治療における4R

最近はSDGsの議論も少し下火かもしれませんが、放射線治療領域におけるサステナビリティの話題です。

SDGsの議論においてはしばしば3Rあるいは4Rが用いられます。

4Rとはリデュース、リユース、リサイクル、リシンクの頭文字の4つのRを取った標語になります。

放射線治療領域における4Rについて考えていきたいと思います。

まずはリデュースについてです。

リデュースとは「減らす」ことです。

つまり、放射線治療領域において、機器や消耗品の使用を減少させることで環境負荷を減らすことを目指すことになります。

放射線治療領域においてはまずは機器の使用電力が一つの大きな問題となります。

CTやMRIといった診断領域で用いられる機器も消費電力はそれなりに多いです。

病院で利用される電力の約4%がCTやMRIに用いられているという試算もあります。

家庭での電力消費と比較すると、CT1台で5つの家庭分、MRI1台で26の家庭の電力消費に相当するという報告があります。

CTやMRIについては、これら以外に「待機電力」というものが存在します。

つまり、すぐには使う予定が無くても、病棟や救急受診で急に検査が必要になった時に、すぐに利用できるようにするために待機しておく状態です。

CTやMRIが完全にシャットダウンされていると、起動をして機械の補正を行っているだけで、数十分かかる可能性もあります。

実際の臨床ではそれだけの時間は待てませんので、どうしても「待機電力」が必要になるのです。

放射線治療領域の装置であるリニアックでも、CTやMRIと同等かそれ以上の電力が必要となります。

放射線治療では夜間に緊急で対応するような事態はほぼ無いため、CTやMRIのような待機電力は必要ありませんが、それでも稼働中にはそれなりに多くの電力を消費するため、できるだけ稼働時間を減らす試みは必要です。

また、放射線治療においては、治療装置のリニアックだけでなく、他にも様々な機器を動かす必要があります。

患者さんの動きをモニターする機器や、位置照合を行うレーザー機器、パソコンなど、治療装置以外にも電力を消費するものは多岐に及びます。

また、治療の際には、場合によってはガウンや手袋といった消耗材を使うこともあります。

これらはそれじたいの消費だけでなく、廃棄の際の運搬やそれにかかる燃料消費などについても意識する必要があります。

放射線治療でのリユース

リユースは再利用することです。

放射線治療領域においては、最近は高精度治療が増えてきましたが、その際に固定具を利用する場合が多いです。

固定具は多くの場合、プラスチック製のもので、ひとりの患者に使った場合は使いまわすことはできずにそのまま廃棄となります。

このため、固定具はどうしても環境負荷の高い材料になります。

固定具以外の方法で位置精度を担保するものとして、バクロックを使う方法があります。

これは患者の背中側に敷いて使うもので、最終的に中の空気を抜くことで固定することが可能です。

空気を入れるとまた柔らかい状態にもどるため、再利用が可能な材料となっています。

ただ、バクロック単体では、プラスチック製の固定具と比較すると精度が甘くなるため、体表監視装置など、他の位置照合方法と合わせての使用が好ましいと言えます。

まとめ

放射線治療領域においても持続可能性というのは重要な問題です。

放射線治療では電力消費が大きな問題ですが、それ以外にも再利用可能な材料を積極的に利用するなど、環境負荷をいかに低減していくかを日々考えていく必要があります。

参考文献

Transitioning to Environmentally Sustainable, Climate-Smart Radiation Oncology Care

Affiliations

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