子宮頚癌の治療後では性機能の維持も重要な問題である
目次
1:治療後の性事情
2:子宮頚癌治療後の性機能について
3:ホルモン補充療法(HRT)の考慮を
4:参考文献
治療後の性事情
子宮頚癌の治療において、治療後の性機能が議論されることはそこまで多くないと思います。
特に日本においては、主治医に対してなかなか積極的に性生活について話すということも無いのではないかと思います。
また性生活については国によっても大きく異なっており、一概に他の国の事情をそのまま適応しにくいという点もあります。
ただ、子宮頚癌は子宮体癌などと比べると、比較的若い年代に発生するため、治療後の性機能についても十分に議論をする必要がある疾患です。
子宮頚癌治療後の性機能について
今回紹介する研究では、子宮頚癌治療後の性機能について評価しています。
この研究では約1000例を対象にして、約4年間の経過観察を行っています。
子宮頚癌治療後の腟の状態の評価では約20%に乾燥、約15-20%に短縮、約15-20%に拘縮、約10-20%に性交時の痛み、約40%に性交時に楽しめない、といった症状が見られました。
性交時の痛みは腟の乾燥や短縮、拘縮と有意に相関しており、性交時に楽しめないという症状とは逆の相関関係にあるという結果でした。
そしてホルモン補充療法(HRT)を行うことによって、これらの腟症状には有意な改善が見られました。
ホルモン補充療法(HRT)の考慮を
子宮頚癌治療後の性機能については、十分には議論されていない印象があります。
これは患者側からなかなか積極的に言い出せなかったり、医療者側の問題点として、十分な診療の時間が取れなかったり、性機能障害についての知識が充分でなかったり、といった障壁があることも要因の一つと考えられます。
しかしながら、治療後の性機能というのは、治療後のQOLにおける重要なポイントの一つです。
パートナーとの性行為による満足感や安心感といった側面もありますが、いっぽうで性機能障害によって、パートナーの希望に十分に答えられていないと感じる場合、そのことによる不安や焦燥というのは大きな問題です。
極端な話、期待に応えられないことによる浮気や離婚の恐怖といった問題も考えられます。
これらの観点から、子宮頚癌治療後の性機能は医療者が考えるよりも大きな問題であり、十分にケアしていく必要があります。
この研究ではホルモン補充療法(HRT)が腟症状の改善に有効であることが示されており、閉経前の女性においては投与を考慮するべきであり、QOLの改善が期待できます。
参考文献
Impact of Vaginal Symptoms and Hormonal Replacement Therapy on Sexual Outcomes After Definitive Chemoradiotherapy in Patients With Locally Advanced Cervical Cancer: Results from the EMBRACE-I Study
- PMID: 34478833
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.08.036
Secondary Prevention, Not Secondary Importance: Embracing Survivorship Concerns and HRT After Cervical Cancer Radiation Therapy
- PMID: 34998535
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.09.028
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