ポストコロナにおける放射線治療②
目次
1:寡分割照射が導入された領域②
2:寡分割照射が導入された領域③
3:5回治療の可能性
4:参考文献
寡分割照射が導入された領域②
寡分割照射が導入された領域について、前回は乳癌を挙げました。
その他の領域としては、前立腺癌が挙げられます。
これまでは標準的には35回~39回程度を照射するのが一般的でした。
最近では1回線量を増やして20回で照射する病院も出てきています。
乳癌の治療と比較して、前立腺癌の放射線治療では周囲に直腸や膀胱といった臓器が存在するため、1回線量を増やす際には注意が必要ですが、20回照射でも十分に安全に治療ができるようです。
さらに、前立腺癌の領域でも、乳癌と同様に、5回で治療する方法も報告されています。
そして5回照射によっても十分な腫瘍制御が得られており、副作用も従来と比較して同程度であったという報告でした。
ただし、5回治療はまだ歴史的に浅いことから、長期的な治療成績についてのデータが充分ではないことに注意が必要です。
また、5回で治療する際には、1回の線量がかなり高くなるため、副作用を低減するために直腸のそばにスペーサーと呼ばれるものを注入あるいは手術で留置する必要があります。
5回治療は準備に手間がかかるため、まだまだ一般的ではありませんが、将来的には20回照射が通常の照射で、寡分割照射といえば5回照射と考えられる時代が、前立腺癌の領域においても来るかもしれません。
寡分割照射が導入された領域③
他に寡分割照射が導入された領域というと直腸癌の術前照射が挙げられます。
直腸癌の術前照射では25回程度を照射するのが一般的ですが、5回で照射する方法も普及してきています。
5回で照射しても十分に治療効果が得られ、副作用も通常照射と比較して多くなかったと報告されています。
5回照射の可能性
乳癌、前立腺癌、直腸癌の領域において、5回で治療を行う寡分割照射が徐々に広がってきています。
これまでにも寡分割照射については研究されてきましたが、コロナ禍を経て、寡分割照射への移行がより加速された印象です。
いっぽうで、移行が急速であったためにエビデンスが充分に蓄積されていないという懸念があります。
コロナのワクチンについても同様ですが、コロナ禍において十分なエビデンスを得ないままに、治療が見切り発車で行われる状態が少なからずあります。
これまでの治療は先人達が膨大に積み上げてきたエビデンスの上で、有効性や安全性が証明されてきたものであり、コロナ感染が落ち着いてきた現在、改めてエビデンスの重要性について意識していく必要があります。
将来的には5回照射が一般的となる未来もあるかもしれませんが、それまでには今後もさらなるエビデンスの蓄積が必要不可欠です。
参考文献
Breast, Prostate, and Rectal Cancer: Should 5-5-5 Be a New Standard of Care?
- PMID: 32890517
- PMCID: PMC7462831
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2020.06.049
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