局所進行直腸癌に対する術前化学放射線療法
目次
1:局所進行直腸癌に対する術前CRT
2:術前のFOLFOXとCRTの順番は?
3:まとめ
4:参考文献
局所進行直腸癌に対する術前CRT
局所進行直腸癌に対する術前の化学放射線療法(CRT)は最近、多くの病院で実施されるようになってきました。
直腸癌の手術において重要な点の一つとして、肛門を温存できるかどうかということがあります。
腫瘍がある程度大きくなると、腫瘍とともに肛門も切除する必要があるのですが、肛門が無くなってしまうと、便を止めておく部分が無くなってしまうため、人工肛門が必要になります。
人工肛門はお腹に別の排便用の穴をあけて、そこを大腸につなげてそこから排便する方法です。
想像してもらうと分かりますが、病期が治ってもその後の生活の質(QOL)が大きく下がってしまいます。
このため、肛門を温存できるかどうかとういのは非常に重要になるわけです。
そして、最初の状態ではある程度大きい腫瘍で、肛門が温存できないあるいは、完全切除が難しい症例において行われるのが、術前の化学放射線療法です。
術前に化学放射線療法を行うことによって、腫瘍を縮小することができれば、切除範囲を小さくすることができ、肛門温存や完全切除が可能になる、というわけです。
術前のFOLFOXとCRTの順番は?
この術前に化学放射線療法を行う際の、FOLFOX投与とCRTの順番はどちらがいいのかを検討した研究を紹介します。
研究ではFOLFOXを3週間投与したのちにCRTを行ったA群と、CRTを行った後にFOLFOX投与を行ったB群で検討しています。
放射線はいずれも50.4Gyを28回にわけて照射しており、放射線治療中の化学療法は5-FUとOxaliplatinを併用しています。
副作用について、A群では消化管および神経系の副作用が多い傾向が見られました。
また、術前療法の完遂度はどちらの群でも変わりませんでした。
切除された標本の顕微鏡検査では、A群で17%の症例で腫瘍の消失が見られ、B群では25%でした。
またB群では消失以外にもより多くの症例で腫瘍の縮小傾向が見られるという結果でした。
腫瘍切除後の生存率はA群、B群で有意な差は見られませんでした。
まとめ
局所進行直腸癌に対する術前化学放射線療法は、腫瘍制御を向上させる有効な手段であると言えます。
FOLFOXとCRTを術前に行う場合、先にCRTを行い、その後FOLFOXを行う方が、腫瘍制御が高くなることが期待されます。
参考文献
Randomized Phase II Trial of Chemoradiotherapy Plus Induction or Consolidation Chemotherapy as Total Neoadjuvant Therapy for Locally Advanced Rectal Cancer: CAO/ARO/AIO-12
- PMID: 31150315
- DOI: 10.1200/JCO.19.00308
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