骨転移に対する放射線治療 〜痛みを和らげ、生活の質を守る重要な治療〜

2023年9月3日

がんが進行すると、骨に転移することがあります。
骨転移は、痛みや骨折、神経の圧迫などを引き起こし、生活の質を大きく低下させる原因となります。

このような場合に重要な役割を果たすのが放射線治療です。
この記事では、骨転移に対する放射線治療について、一般の方にも分かりやすく解説します。

骨転移に放射線治療を行う目的

骨転移に対して放射線治療を行うことは、日常診療において非常によくあります。
主な目的は次の通りです。

①痛みを和らげる

骨転移による痛みは非常につらい症状のひとつです。
放射線治療により、痛みを軽減できる可能性があります。

②病的骨折の予防

骨が弱くなることで骨折しやすくなります。
放射線治療は骨折予防にも重要です。

日々の骨の健康に

骨転移では、放射線治療だけでなく、日常生活の中で骨の健康を意識することも重要です。
カルシウムやビタミンD、マグネシウム、亜鉛などの栄養素は骨の維持に関わるため、食事だけで十分に摂取できない場合にはサプリメントを検討する方もいます。

ディアナチュラ カルシウム・マグネシウム・亜鉛・ビタミンD

③神経の圧迫を改善

骨転移が神経を圧迫している場合には、圧迫を軽減する目的で照射することがあります。

一般的な治療方法(30Gy/10回)

骨転移に対する放射線治療では、
30Gyを10回に分けて照射する方法が一般的です。

この治療は日本全国で広く行われており、多くの患者さんで有効性が確認されています。

痛みの改善率

これまでの研究では、
50〜80%の患者で痛みの改善が期待できます。

ただし、
・4週間後に痛みが消失するのは約50%
・3か月以内に再び痛みが出る患者も約50%

という報告もあります。

1回だけで終わる放射線治療(8Gy単回照射)

近年では、
8Gyを1回だけ照射する方法も行われています。

この方法は以前より認知度が上がってきました。

8Gy単回照射のメリット

通院の負担が少ない

1回で治療が終了するため、身体的・精神的な負担が軽減されます。

費用負担が少ない

治療回数が少ないため、医療費も抑えられる可能性があります。

生活の時間を確保できる

治療期間が短くなることで
・家族と過ごす
・旅行に行く
など、残された時間を大切にできます。

従来治療との比較

多くの大規模研究において、
8Gy単回照射と従来の治療は、

・治療効果
・疼痛改善
・無増悪期間
・病的骨折の発生率

などにおいて差がないことが示されています。

そのため、多くの国のガイドラインでは
単回照射は標準治療のひとつとして推奨されています。

それでも普及していない理由

実際には単回照射の採用率は高くありません。
アメリカのオンタリオ州のデータでは、
骨転移に対する放射線治療のうち単回照射は44%でした。

日本ではさらに低い可能性があります。

これは医療に限らず、
「これまでうまくいっていた方法を変えることへの心理的な抵抗」
が影響している可能性があります。

単回照射の注意点

メリットが大きい一方で、デメリットもあります。

骨折のリスク

比較的大きな骨転移では、骨折率が高いという報告があります。

再照射の可能性

再度治療が必要になるケースが多い可能性があります。

長期の腫瘍制御

複数回照射の方が長期制御に優れる可能性があります。

脊椎転移と放射線治療

脊椎転移は、がんの経過中によく見られる合併症です。
神経症状や麻痺の原因となるため、迅速な治療が重要です。

日本では通常、
10回程度に分けた治療(30Gy/10回照射)が多いですが、
回数を減らすことで、

・患者や家族の負担軽減
・医療資源の有効活用

が期待できます。

1回照射の安全な線量

研究では、
1回治療において14Gyまでであれば比較的安全
と報告されています。

これは腫瘍に対しても高い線量を照射できる可能性を示しています。

まだ一般的ではありませんが、今後の指標になると考えられます。

脊椎転移に対する定位放射線治療(SBRT)

定位放射線治療は、
ピンポイントで高線量を照射する先進的な治療です。

SC.24試験

この研究では、
24Gy/2回照射の有効性が示されています。

線量増加の研究

24Gy/2回と28Gy/2回を比較した研究では、
局所再発率が改善しました。

・28Gy群:11.1%
・24Gy群:17.6%

線量増加により治療成績の向上が示されました。

また、椎体骨折は約10%で、
線量増加による増加は認められませんでした。

原発がんの違いと治療効果

脊椎転移に対する定位放射線治療では、
原発腫瘍による違いも報告されています。

非小細胞肺がんや大腸がんでは、
乳がんや甲状腺がんと比較して治療成績が不良でした。

ただし、
これらは予後良好ながんとの比較であり、
単純な結論は難しいと考えられます。

この結果から、
これらのがんではより高線量が必要な可能性があります。

温熱療法との併用

標準的な放射線治療(30Gy/10回)に
温熱療法を追加することで、

・疼痛コントロールの改善
・再燃までの期間延長

が報告されています。

ただし、温熱療法を行える施設は限られています。
可能であれば選択肢のひとつとなります。

骨転移の放射線治療の比較

治療方法通院回数メリットデメリット向いている患者
標準照射(30Gy/10回)約2週間実績が豊富、長期制御が期待通院負担が大きい体力があり長期予後が期待できる
単回照射(8Gy)1回負担が少ない、費用が少ない再照射の可能性通院困難、生活の質重視
定位放射線治療1〜3回高い局所制御技術が必要、施設限定少数転移、局所制御重視
温熱療法併用10回+温熱痛み改善、再燃抑制施設が少ない痛みが強い患者

まとめ

骨転移に対する放射線治療は、
痛みの改善や生活の質の維持に重要な役割を果たします。

現在は、

・標準的な分割照射
・単回照射
・定位放射線治療
・温熱療法併用

など、患者の状態に応じて治療が選択されます。

今後は、
短期間で高い効果を得る治療の普及が期待されています。

治療の選択は個々の状況によって異なるため、
主治医と十分に相談することが大切です。

オリゴ転移についての記事はこちら

少数転移であれば、強い治療を行うことで完治する可能性があります。

脳転移についての記事はこちら

脳転移に対する放射線治療について分かりやすく解説しています。

放射線治療の費用、期間、副作用についてはこちら

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骨転移に対する放射線治療のFAQ

Q1. 骨転移に対する放射線治療の目的は何ですか?

骨転移に対する放射線治療の主な目的は、痛みの軽減、病的骨折の予防、神経圧迫の改善です。生活の質を保つために重要な治療です。

Q2. 骨転移の痛みはどれくらい改善しますか?

これまでの研究では、50〜80%の患者さんで痛みの改善が期待できます。ただし、効果には個人差があります。

Q3. 放射線治療は何回くらい通院しますか?

一般的には30Gyを10回に分けて治療しますが、最近では1回のみ(8Gy)で終了する方法もあります。

Q4. 1回だけの放射線治療は安全ですか?

多くの研究で、従来の方法と同等の効果が示されています。ただし、大きな骨転移では骨折や再治療のリスクが高い可能性があります。

Q5. 単回照射のメリットは何ですか?

通院回数が少なく、身体的・精神的・経済的な負担を軽減できることが大きなメリットです。

Q6. 脊椎転移にも放射線治療は有効ですか?

脊椎転移に対しても放射線治療は重要で、痛みや麻痺の予防、神経圧迫の改善に役立ちます。

Q7. 定位放射線治療とは何ですか?

高精度で腫瘍に集中して照射する治療です。短期間で高い効果が期待できる先進的な治療方法です。

Q8. 温熱療法とは何ですか?

腫瘍を温めて放射線の効果を高める治療です。痛みの改善や再燃までの期間延長が期待できますが、実施できる施設は限られています。

Q9. どの治療が自分に合っているか分かりません

骨転移の治療は患者さんの状態、予後、腫瘍の性質によって異なります。主治医と相談して最適な治療を選択することが大切です。

参考文献

It’s Time.

2017 Nov 1;99(3):598-607. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.05.053.

A Detailed Dosimetric Analysis of Spinal Cord Tolerance in High-Dose Spine Radiosurgery.

Dose-Escalated 2-Fraction Spine Stereotactic Body Radiation Therapy: 28 Gy Versus 24 Gy in 2 Daily Fractions

Affiliations

Comparing the Effectiveness of Combined External Beam Radiation and Hyperthermia Versus External Beam Radiation Alone in Treating Patients With Painful Bony Metastases: A Phase 3 Prospective, Randomized, Controlled Trial

DOI: 10.1016/j.ijrobp.2017.09.030

 

2017 Dec 1;99(5):1207-1215. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.08.028. Epub 2017 Sep 1.

Heterogeneity in Treatment Response of Spine Metastases to Spine Stereotactic Radiosurgery Within “Radiosensitive" Subtypes.

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