肝臓転移に対する体幹部定位照射(SBRT)の有効性について
まとめ
解説
オランダとベルギーの共同研究で、合計500例を超える肝臓転移に対する体幹部定位照射(SBRT)の治療結果の検討である。
肝臓転移は主に大腸癌や肺癌から転移してくることが多く、可能な場合には手術治療が選択されることが多い。
放射線治療が選択される場合もあるが、まだまだ一般的とは言えないであろう。
実際に自分の病院でも緩和目的での照射はたまにあるが、根治を目指して紹介されることは稀である。
今回の研究では体幹部定位照射(SBRT)を用いて治療を行っている。
体幹部定位照射(SBRT)とは1回に照射する線量を通常の治療よりも多くすることで、治療期間の短縮を図るとともに、通常よりもよりも強い治療を行うことを目的としたものである。
肝臓であれば通常の治療で25回程度の照射(合計50Gy程度)が必要となるが、この研究では18-20Gy×3回、11-12Gy×5回、7.5Gy×8回、5Gy×12回などが用いられている。
回数の多いものでも通常の治療の半分程度で終了する。少ないものだと、3回で治療が終了する。
どのような回数を採用するかは病院間でも差異があると考えられ、また病変部の部位によっても異なってくる。
結果として、体幹部定位照射(SBRT)によって良好な治療成績が確認され、重篤な副作用の発生も少ないというものであった。
放射線治療はもともと手術が適応でない症例においても実施できるというメリットがあり、手術に比較すると体への負担も少なくなることが期待できる。
特に、大腸癌は原発巣がコントロールされれば、仮に転移を有していても比較的予後良好な疾患であり、肝臓転移についても積極的に治療するようになってきている。
体幹部定位照射(SBRT)を用いた放射線治療は十分に手術の代替となる選択肢であると考えられる。
注意点としては、肝臓は呼吸によって移動する臓器であり、十分な呼吸移動対策が実施できる施設でないと安全な治療は難しいという点が挙げられる。
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