放射線治療を完遂できない要因とは?
まとめ
解説
これは男性において前立腺癌に対する放射線治療での、治療の完遂率を調査したものである。
対象は約15万例と比較的大規模な研究である。
治療の完遂率が悪化する一つの要因としては人種を挙げている。アフリカ系アメリカ人では治療の完遂率が悪かったという結果であった。
日本においては人種差というものはほとんど無いので、こちらの結果はあまり参考にはならないであろう。
もう一つの要素としては、体幹部定位照射(SBRT)の利用によって治療の完遂率が改善するというものであった。
(その他の要因としては、ホルモン治療の併用、高リスク群、若年、経済状況の悪い地区などが完遂率悪化の原因として挙げられている。)
体幹部定位照射(SBRT)については、通常の治療を行った群では非完遂率が12%程度であったのに対して、SBRT群では2%程度と大きな改善が見られている。
体幹部定位照射(SBRT)とは1回に照射する線量を多くして、治療回数を少なくする治療法であり、回数が少なくなれば完遂率も改善するというのは容易に想像できるところである。
さらに重要なことは、完遂率が悪くなれば、当然生存率も悪くなってしまうということも、今回のデータの中では示されている。
このため、完遂率を高めるということは治療成績においても非常に重要な要素となる。せっかく治癒可能な治療を行っていても、完遂しなければ意味は無いのである。
前立腺癌に対する体幹部定位照射(SBRT)の利用は日本ではまだまだ一般的とは言えないであろう。
現時点でも前立腺癌に対してはIMRTを用いた高精度治療は一般的に行われているが、体幹部定位照射(SBRT)を行うにはより高度な精度管理および副作用低減の試みが必要になってくると考えられるからである。
ただ、上記のように体幹部定位照射(SBRT)の採用は、治療期間短縮にともなう患者負担の軽減だけでなく、治療成績の純粋な向上という側面もあり、今後積極的に導入されていくべき治療法であると考える。
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