一人で論文を書くということ②
前回は後ろ向き研究を始めるところまででした。
どの研究でもそうですが、後ろ向き研究をする場合にもテーマを決めるのは非常に重要になります。基本的には一度テーマを決めてしまえば、多少の変更はあっても、大筋はそのままで最後(アクセプト)まで走りきる必要があります。
仮に最初のテーマ設定を失敗すれば、場合によってはその研究のすべてが無駄になってしまう可能性もあります。
良い研究のテーマというのは、多くの研究者が知りたいと思うことを対象にして行います。ただ、これは前回でも書いたように恵まれた環境にいる場合に許されることです。協力者も少なく、論文作成の経験が少ない状態では、そういったインパクトの強い研究テーマには、挑もうと思っても挑めるものではありません。
では、どういったテーマを目指すのか。結論を言えばアクセプトされやすいテーマということになりますが、素晴らしい内容でアクセプトされるというよりは、そういえばこれはまだ誰も報告したことが無いなという、要はニッチな領域を目指したテーマになります。
ありふれたテーマは研究がしやすい反面、多くの人がすでに研究対象としている場合が多いため、あとから同じようなことをしても、まったく相手にされない結果となります。もちろん対象の多い疾患であっても、その中でさらに論点を絞った形にすれば対抗する手段はあるかもしれません。
なにより、自分の施設の得意領域を把握することが重要です。ほかの施設に比べると、この疾患の治療件数が多いなどは、十分にテーマの候補となります。研究の対象となるためには症例数も重要なポイントになります。症例数が少なければ、その時点で雑誌からリジェクトを食らう場合もあるからです。
そして、ある程度のテーマが決まれば、過去の文献をあたるのが、欠かせないプロセスになります。自分がやろうと思っている内容と、同じようなものが無いのかをくまなく調べる必要があります。文献の検索はPubMedやWeb of Scienceを使うことになると思います。施設によってはfull paperが見られない場合もありますが、abstractだけでも目を通しましょう。過去の文献を調べることで、他の著者はどいうったテーマで書いているのかも分かるため、自分の論文の方向性の参考にもなります。
過去論文は自分のテーマと重複しないかを調べるだけでなく、実際に論文を書く時にも非常に役に立ちます。もちろん内容のコピーアンドペーストはダメですが、自分の論文を書く際に参考になる部分は多く、書き方や言い回しを一部拝借することもあるかと思いますし、一部でも使えれば英語が苦手であっても、ある程度の形にはなります。そういった意味でもしっかりと論文は調べておくことが大事です。
また長くなってしまったので、続きます。
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