肛門癌に対する根治的化学放射線療法後の副作用について

まとめ

肛門癌に対する根治的化学放射線療法においては副作用が長期に持続する傾向があるため、IMRTを用いるなど、治療中・治療後での副作用低減の取り組みが重要である。

 

 解説

肛門癌に対する根治的な化学放射線療法後の長期副作用について解析した研究である。

肛門癌は直腸に近い部分にできるが、直腸癌と異なり、化学放射線療法が第一選択となる疾患である。

化学放射線療法の意義としては肛門温存ができる点が重要であり、その後のQOL(生活の質)に大きく影響する部分である。

肛門が温存できない場合には、便を我慢できない状態になってしまうため、人工肛門を作るなどの対応が必要であり、QOLを大きく下げてしまう要因となる。

肛門癌に対する化学放射線療法の治療成績は比較的良好で、約80%程度の症例で長期生存が望める結果となっている。

いっぽうで、化学放射線療法に伴う長期的な副作用については十分に検討されているとは言えない。

短期の副作用については強度変調放射線治療(IMRT)を用いることにより、有意に発生率を低下させることができることが報告されている。

この研究では長期的な副作用について検討しており、治療はIMRTを用いて行われている。

結果として、化学放射線療法後の副作用は比較的長期間にわたって持続し、手術治療と比較しても副作用が強い傾向にあった。

別の研究では、化学放射線療法後の長期的な副作用は55%の患者でGrade 2相当、16%の患者でGrade 3相当の比較的強い副作用が報告されている。

この結果は自分にとっては意外なもので、通常放射線治療は手術と比較すると副作用が軽いのが一般的なイメージである。

これに反して肛門癌では手術よりも化学放射線療法のほうが副作用が強くなるという結果であった。

上でも触れたように化学放射線療法には肛門を温存できるというメリットがあるため、長期的な副作用という観点だけで劣っている治療というわけではないが、できるだけ副作用を少なくする試みが必要になってくると考えられる。

本文中で、肛門癌に対する放射線治療で取り組むべき点として挙げられているのは以下のものである。

IMRTの利用:可能であればSIBも用いた領域照射

治療前CTを用いた膀胱容量の確認および、膀胱・直腸線量の低減

治療後の骨盤底筋群の強化指導

である。

参考文献

Patient-Reported Bowel and Urinary Function in Long-Term Survivors of Squamous Cell Carcinoma of the Anus Treated With Definitive Intensity Modulated Radiation Therapy And Concurrent Chemotherapy

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