上咽頭癌治療における至適線量の決定にMRIが有用

目次

1:放射線治療におけるMRI画像の利用
2:他のモダリティと放射線治療の併用
3:まとめ
4:参考文献

放射線治療におけるMRI画像の利用

 

上咽頭癌というのは耳鼻科領域の中でも比較的珍しい種類の癌です。

中国からの報告が比較的多く、地域性がある癌のひとつです。

上咽頭癌は化学放射線療法で治療することが多いのですが、その際にMRI画像の結果が治療方針の決定に有用ではないかというのを検討した研究を紹介します。

この研究では、MRI画像の中でも、DWI、いわゆるディフュージョンと呼ばれる画像を利用しています。

DWIは専門的な話をすると、組織の中の水分子の動きやすさを評価する画像で、腫瘍のように固い組織では水が動きにくく、画像としては高信号、光って見えるというものです。

DWIは腫瘍の描出以外にも、急性期の脳梗塞の発見でも使われたりします。

この研究では、DWIでより高信号になる領域は腫瘍細胞が多く悪性度が高い可能性があるため、その部分に追加で高線量を投与して、その結果を解析しています。

研究では260の症例を、DWI画像を用いて治療計画を行う130例と、通常通りに治療計画を行う130例に分けて評価を行っています。

2年間という比較的短期間での評価ですが、DWI画像を用いて治療計画を行った群のほうが、局所制御、生存率ともに有意に優れていたという結果でした。

他のモダリティと放射線治療の併用

今回の研究のように、CT以外の画像を用いて治療計画を行った研究というのもいくつか報告されています。

MRI以外では、PET検査も良く用いられる検査です。

これらの検査は腫瘍の形態だけでなく、活性度や悪性度を評価できる点がCTよりも優れています。

CT画像のみでは十分ではない情報を補完できるというメリットがあります。

特に今回の研究のように、上咽頭癌は放射線治療後に再発した場合の選択肢が少ない疾患です。

上咽頭は、ようは頭蓋骨のちょうど下あたりになるため、仮に手術をする場合は脳や神経・脳に行く血管などに近く非常に手術が難しい領域です。

このため、放射線治療での治癒率を上げるということは、再発による手術を避けられるという点で非常に大きなメリットがあるわけです。

まとめ

MRIやPETは、CT画像のみではわからない腫瘍の性状の情報が補完できる有用な検査です。

これらの画像情報を放射線治療時に併用することでより局所制御、生存率を向上させることが期待できます。

参考文献

The Janus Face in Defining the Optimal Radiation Dose for Nasopharyngeal Carcinoma

Affiliations

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