放射線治療後に再発することはある?再照射はできる?専門医がわかりやすく解説

放射線治療って、
終わればもう再発しないんでしょうか?

再発の可能性はゼロではありません。
ただし、多くのがんで再発率を大きく下げる治療です。

もし再発したら、
もう放射線治療はできないんですか?

条件が合えば再照射(もう一度放射線治療)が可能な場合もあります。
がんの放射線治療を受けると、
「治ったのか?再発することはあるのか?」
と不安になる方は少なくありません。
結論から言うと、
- 放射線治療後でも再発する可能性はゼロではない
- しかし再発率は多くのがんで大きく低下する
- 条件によっては再照射(もう一度放射線治療)も可能
この記事では、
- 放射線治療後の再発率
- 再発した場合の治療選択肢
- 再照射ができるケース
- 再照射のリスク
を、専門医の立場からわかりやすく解説します。
※放射線治療の基本は
→ 放射線治療の初心者向け総合ガイド
放射線治療後に再発することはある?

放射線治療を受けても、
やっぱり再発することはあるんですね…

はい。
ただし治療をしない場合に比べて、
再発率は大きく下がることが多いです。

つまり再発を防ぐための治療なんですね。

その通りです。特に局所再発を防ぐ効果が重要です。
結論から言うと、再発する可能性はあります。
しかしこれは放射線治療に限った話ではありません。
- 手術
- 抗がん剤
- 免疫療法
など、どの治療でも再発リスクは完全にはゼロになりません。
がんは非常に複雑な病気で、
- 目に見えない微小転移
- 放射線が届きにくい細胞
- 生物学的に強いがん細胞
などが原因で再発することがあります。
→放射線治療後の再発に対する不安やストレスなどの心理ガイドの記事はこちら
放射線治療は再発率を下げる治療
放射線治療の目的は
「局所再発を防ぐこと」
です。
例えば乳がんでは、
- 手術のみ
→ 再発率 約20% - 手術+放射線治療
→ 再発率 約5%
というように、再発率を大きく下げることが知られています。
国際的な臨床試験でも、放射線治療は
- 局所再発を大きく減らす
- 生存率を改善する
ことが示されています。
参考
- NCCN Guidelines
- ASTRO clinical guideline
(公式サイト)
https://www.nccn.org
(ASTRO)
https://www.astro.org
放射線治療後の再発には3つのパターンがある

再発って、同じ場所に起こるんですか?

必ずしも同じ場所とは限りません。
再発にはいくつかのパターンがあります。

場所によって治療も変わるんですか?

はい。再発した場所によって治療方針が大きく変わります。
再発には大きく分けて3つあります。
① 局所再発
同じ場所に再発
例
- 乳房温存後の乳房
- 前立腺
- 頭頸部
など。
これは放射線治療の効果が不十分だった場合に起こります。
② 領域再発
近くのリンパ節などに再発するケース。
例
- 頸部リンパ節
- 腋窩リンパ節
など。
③ 遠隔転移
体の別の場所に転移するケース。
例
- 肺
- 肝臓
- 骨
など。
これは放射線治療では防ぎきれない場合があります。
(放射線治療は基本的に局所治療のため)
再発した場合の治療選択肢

再発したら、もう治療は難しいんでしょうか?

そんなことはありません。
再発後でもいくつかの治療選択肢があります。

放射線治療もまたできる可能性があるんですか?

条件が合えば再照射という形で行うこともあります。
再発しても治療は可能です。
主な治療は次の通りです。
手術
可能なら最も根治性が高い治療です。
放射線治療(再照射)
条件が合えば
再度放射線治療を行うこともあります。
抗がん剤
全身に転移している場合など。
免疫療法
がん種によって適応があります。
放射線治療後に手術はできる?(癒着の問題)

放射線治療のあとに手術することもあるんですか?

あります。ただし放射線の影響で組織癒着(線維化)が起こることがあります。

癒着すると何が大変なんですか?

組織が硬くなり、手術の難易度が上がることがあるのです。
放射線治療を受けたあとでも、手術が必要になる場合があります。
例えば
- がんが再発した
- 放射線だけでは治療が不十分だった
- 合併症の治療が必要
などのケースです。
ただし、放射線治療後の手術には特有の難しさがあります。
その代表的なものが
組織癒着(そしきゆちゃく)
です。
放射線治療後に起こる「組織癒着」とは
放射線が当たった組織では、
- 炎症
- 線維化(組織が硬くなる)
- 血流低下
などが起こります。
その結果、周囲の組織同士が
くっついてしまう
ことがあります。
これを医学的に
組織癒着(fibrosis / adhesion)
と呼びます。
組織癒着が起こると手術は難しくなる
癒着があると、手術では次のような問題が起こります。
- 正常組織の境界が分かりにくい
- 血管や神経が剥がしにくい
- 出血のリスクが高くなる
- 手術時間が長くなる
そのため
放射線治療後の手術は難易度が上がる
ことがあります。
癒着の程度は患者さんごとに違う
すべての患者さんで強い癒着が起こるわけではありません。
影響する要因には
- 放射線の線量
- 照射範囲
- 治療からの経過時間
- 個人の体質
などがあります。
最近の
- IMRT
- IGRT
- 粒子線治療
などの高精度放射線治療では、正常組織への影響が減り、
癒着が軽くなる可能性もあります。
放射線治療後の手術は専門施設で行われることが多い
放射線治療後の手術は
- 癒着
- 組織の血流低下
- 創傷治癒の遅れ
などの問題があるため、
経験のある外科チームで行うことが重要
です。
特に
- 頭頸部がん
- 直腸がん
- 前立腺がん
などでは、放射線治療後の手術が検討されることがあります。
それでも手術が重要な治療になることもある
放射線治療後であっても、
- 再発が局所に限られている
- 他に有効な治療がない
場合には
手術が最も有効な治療になることもあります。
そのため
- 外科医
- 放射線腫瘍医
- 腫瘍内科医
などが協力する
集学的治療(multidisciplinary treatment)
が重要になります。
再照射(re-irradiation)とは?

再照射って、同じ場所にもう一度放射線を当てるんですか?

はい。ただし通常の放射線治療よりも慎重な判断が必要な治療です。

やっぱり体への負担が大きいんですか?

正常組織がすでに放射線を受けているため、
安全性の評価が重要になります。
再照射とは
一度放射線治療を受けた部位に、もう一度放射線を当てる治療
です。
医学的には
re-irradiation
と呼ばれます。
再照射は可能?
結論
可能な場合があります。
ただし、すべての患者さんでできるわけではありません。
再照射はなぜ難しいのか?

どうして再照射はそんなに難しいんですか?

体の臓器には耐えられる放射線量の限界(耐容線量)があるからです。

つまり、すでに放射線を受けているからですね。

その通りです。だからどれだけ追加で照射できるかを慎重に計算します。
再照射(re-irradiation)は、
一度放射線治療を受けた部位に、もう一度放射線を当てる治療です。
医学的には可能な場合もありますが、
通常の放射線治療よりも慎重な判断が必要になります。
その理由は、正常組織の耐えられる放射線量には限界があるためです。
正常組織には「耐容線量」がある
放射線はがん細胞だけでなく、周囲の正常組織にも影響します。
そのため臓器ごとに
耐容線量(tolerance dose)
と呼ばれる「安全に耐えられる放射線量の目安」があります。
例えば
- 脊髄
- 小腸
- 視神経
- 脳
などの重要臓器は、
一定以上の放射線を受けると重い障害が起こる可能性があります。
一度放射線治療を行うと、
これらの臓器はすでにある程度の線量を受けている状態になります。
そのため、再照射では
追加でどれだけ放射線を当てられるか
を慎重に計算する必要があります。
放射線による組織の変化(線維化)
放射線を受けた組織では、時間とともに
- 線維化(組織が硬くなる)
- 血流低下
- 修復能力の低下
などが起こります。
この状態でさらに放射線を当てると、
- 組織壊死
- 出血
- 神経障害
などの重い副作用が起こるリスクがあります。
そのため再照射では、
副作用のリスク評価が非常に重要になります。
重要臓器が近いと再照射は難しくなる
再照射が特に難しいのは、
重要臓器の近くに腫瘍がある場合です。
例えば
- 頭頸部がん(脊髄・脳幹)
- 前立腺がん(直腸・膀胱)
- 肺がん(肺・心臓)
などでは、
正常組織を守りながら再照射することが難しい場合があります。
それでも再照射が行われる理由
再照射には難しさがありますが、
条件が合えば有効な治療になることもあります。
特に近年は
- IMRT(強度変調放射線治療)
- SBRT(定位放射線治療)
- 粒子線治療
などの高精度放射線治療により、
正常組織への線量を抑えながら
再照射が可能になるケースも増えています。
再照射は専門医による慎重な判断が必要
再照射では
- 前回の放射線治療計画
- 受けた総線量
- 再発部位
- 周囲臓器の状態
などを詳細に検討する必要があります。
そのため再照射は、
放射線治療専門医による慎重な評価のもとで検討されます。
再照射が可能かどうかの判断ポイント
主に以下を総合的に判断します。
① 前回の放射線量
体には耐えられる放射線量の限界があります。
② 再発までの期間
一般的には
- 1年以上
- 2年以上
空いている方が治療成績は良いとされています。
③ 再発の場所
同じ場所か
少しずれた場所か
によって大きく変わります。
④ 周囲の臓器
例
- 脊髄
- 腸
- 脳
- 視神経
など。
重要臓器が近いと難しくなります。
⑤ 患者さんの体力
- 年齢
- 全身状態
- 合併症
なども重要です。
再照射に適した放射線治療はある?

再照射でも、安全にできる方法はあるんですか?

最近は技術が進歩して、
正常組織への影響を減らす治療法が増えています。

例えばどんな治療ですか?

定位放射線治療や粒子線治療などが代表的です。
再照射(re-irradiation)では、すでに一度放射線を受けている正常組織への影響をできるだけ減らすことが重要です。
そのため近年は、
できるだけ腫瘍に集中して照射できる治療法
が再照射で検討されることが多くなっています。
代表的な治療には次のようなものがあります。
定位放射線治療(SBRT / SRS)
定位放射線治療は、
高い精度で腫瘍にピンポイントに放射線を当てる治療
です。
特徴
- 非常に高い位置精度
- 周囲の正常組織への線量を抑えられる
- 少ない回数で治療できる
そのため、
- 脳腫瘍
- 肺腫瘍
- 転移性腫瘍
などでは再照射として選択されることがあります。
特に
- 定位放射線手術(SRS)
- 体幹部定位放射線治療(SBRT)
は再照射の研究報告も増えています。
参考
ASTRO clinical guideline
https://www.astro.org
粒子線治療(陽子線・重粒子線)
粒子線治療は
- 陽子線治療
- 重粒子線治療
などの粒子線を使用する放射線治療です。
粒子線の特徴は
ブラッグピーク(Bragg peak)
と呼ばれる物理特性です。
これにより
- 腫瘍に集中して線量を届ける
- 周囲の正常組織の線量を減らす
ことができます。
そのため
- 頭頸部がん
- 骨軟部腫瘍
- 再発腫瘍
などで再照射として検討されることがあります。
参考
日本放射線腫瘍学会
https://www.jastro.or.jp
小線源治療(ブラキセラピー)
小線源治療(brachytherapy)は
放射線源を体内に入れて照射する治療です。
特徴
- 腫瘍のすぐ近くから放射線を当てる
- 周囲組織の線量を抑えられる
そのため
- 前立腺がん
- 婦人科がん
- 頭頸部がん
などでは
再発後の再照射として検討されることがあります。
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)
BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)は
ホウ素薬剤と中性子を組み合わせた放射線治療
です。
仕組みとしては
- がん細胞にホウ素薬剤を集める
- 中性子を照射する
- がん細胞の中で強い放射線が発生する
という特徴があります。
このため理論的には
正常組織への影響を抑えながら腫瘍を攻撃できる
可能性があります。
現在、日本では
- 再発頭頸部がん
- 切除不能腫瘍
などで治療が行われています。
参考
日本中性子捕捉療法学会
https://www.jsnct.jp
治療法の選択は患者ごとに異なる
再照射でどの治療法が適しているかは、
- 前回の放射線量
- 再発の場所
- 腫瘍の大きさ
- 周囲臓器の位置
- 全身状態
などによって大きく変わります。
そのため再照射では、
放射線治療専門医による詳細な治療計画の検討
が非常に重要になります。

いろいろな放射線治療があるんですね。

はい。再照射では特に高精度治療が重要になります。

患者ごとに治療が変わるんですね。

腫瘍の場所や前回の線量によって最適な方法を選びます。
再照射の成功率
がんの種類によって大きく異なります。
例
頭頸部がんでは
- 初回放射線治療の局所制御率:約60%
- 再照射:約30%程度
と報告されています。
しかし近年は
- IMRT
- SBRT
- 粒子線治療
などの技術進歩で治療成績は改善しています。
再照射のリスク
再照射にはリスクもあります。
主なもの
- 重い放射線障害
- 組織壊死
- 出血
- 神経障害
など。
そのため
専門医による慎重な判断が必要です。
再発を防ぐために大切なこと
再発を完全に防ぐ方法はありません。
しかし次のことは非常に重要です。
定期検査
- CT
- MRI
- 血液検査
など。
生活習慣
- 禁煙
- 適度な運動
- 栄養管理
症状の変化を放置しない
- 痛み
- 出血
- しこり
など。

再発しても、まだ治療できる可能性があるんですね。

はい。再発=治療できない、ではありません。

再照射も含めて、いろいろな選択肢があるんですね。

重要なのは、専門医と相談して最適な治療を選ぶことです。
専門医コメント
放射線治療後に再発することは、残念ながら一定の確率で起こります。
しかし現在は治療の選択肢が増えており、再照射や手術などで再度治療できるケースも少なくありません。
特に近年は
- IMRT
- SBRT
- 粒子線治療
などの技術が進歩し、以前より安全に再照射できる場合も増えています。
再発が疑われた場合でも、すぐに「もう治療できない」と考える必要はありません。
放射線治療専門医を含めた多職種チームでの評価が重要です。
まとめ
放射線治療後の再発についてまとめます。
- 放射線治療後でも再発は起こる可能性がある
- しかし多くのがんで再発率を大きく下げる治療
- 再発しても治療選択肢はある
- 条件が合えば再照射も可能
放射線治療についての基本は
→ 放射線治療の初心者向け総合ガイド
FAQ(よくある質問)
放射線治療をすると再発は防げますか?
再発リスクは大きく下がりますが、完全にゼロにはなりません。
放射線治療後の再発率はどのくらいですか?
がんの種類や進行度によって大きく異なります。
再発したらもう治療できませんか?
いいえ。手術・再照射・抗がん剤など複数の治療選択肢があります。
再照射とは何ですか?
一度放射線治療を受けた部位に、もう一度放射線治療を行うことです。
再照射は誰でもできますか?
前回の線量や再発部位などにより、できない場合もあります。
再照射の間隔はどのくらい必要ですか?
一般的には1年以上空いていることが望ましいとされています。
再照射の副作用は強いですか?
通常の放射線治療より副作用リスクは高くなる可能性があります。
再照射の成功率はどれくらいですか?
がん種によりますが、局所制御率30~50%程度の報告があります。
再発はどうやって見つかりますか?
定期検査や症状の変化によって発見されます。
再発を防ぐ方法はありますか?
定期フォローと生活習慣管理が重要です。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。
























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