放射線治療による食道炎|症状・原因・治療・対処法を専門医が解説

放射線治療を始めてから、
食べ物を飲み込むと胸が痛い気がします…。
これは副作用でしょうか?

胸の放射線治療では、食道の粘膜が炎症を起こす『放射線性食道炎』が起こることがあります。

危険な状態なのでしょうか?

多くの場合は一時的な炎症で、
治療後に自然に改善することがほとんどです。
ただし食事がつらい場合は、早めの対処が大切です。
放射線治療では、がんに放射線を当てる過程で周囲の正常組織にも影響が出ることがあります。
胸部に放射線を当てる治療では、食道の粘膜が炎症を起こす「放射線性食道炎」が生じることがあります。
特に次の治療で起こることがあります。
- 肺がんの放射線治療
- 縦隔腫瘍の放射線治療
- 食道がんの放射線治療
- 乳がん(リンパ節照射を含む)
症状は主に
- 飲み込むときの痛み
- 喉や胸の違和感
- 食事がつかえる感じ
などです。
多くの場合、治療終了後数週間で改善します。
しかし症状が強い場合は食事がとりにくくなるため、適切な対処が重要です。
この記事では、放射線治療による食道炎の症状・原因・治療・対処法を専門医の立場からわかりやすく解説します。
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まずは放射線治療の副作用全体について知りたい方は
▶ [放射線治療の副作用まとめ]
放射線治療による口や喉の副作用の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。
放射線治療の副作用全体について
放射線治療ではさまざまな副作用が起こる可能性があります。
詳しくは以下の記事で全体像を解説しています。
放射線治療による食道炎とは
放射線性食道炎とは、放射線によって食道の粘膜が炎症を起こす状態です。
食道の内側は粘膜で覆われています。
この粘膜は細胞の入れ替わりが速く、放射線の影響を受けやすい組織です。
そのため胸部の放射線治療では、
- 粘膜炎症
- 潰瘍
- 痛み
などが起こることがあります。
多くの場合は一時的な副作用(急性期副作用)です。
参考
ASTRO guideline
https://www.astro.org/
食道炎が起こりやすい治療
放射線性食道炎は、食道が照射範囲に入る治療で起こります。
代表例
肺がん
胸部照射では食道が近いため起こることがあります。
食道がん
食道自体を治療するため、炎症が起こりやすいです。
縦隔腫瘍
リンパ腫などで縦隔を照射する場合。
乳がん
鎖骨上リンパ節照射などで食道近くが照射される場合。
食道炎の症状

どんな症状が出ることが多いですか?

よくあるのは次の症状です。
・飲み込むときの痛み
・胸のヒリヒリ感
・食べ物がつかえる感じ
症状は治療開始から2〜3週間後に出てくることが多いですね。
主な症状は次の通りです。
飲み込むときの痛み(嚥下痛)
食べ物や飲み物を飲み込むときに痛みを感じます。
食事がつかえる感じ
食道の炎症や腫れによって起こります。
胸の違和感
胸の奥のヒリヒリ感として感じることがあります。
食欲低下
痛みのため食事量が減ることがあります。
→ 関連内部リンク
食道炎はいつから起こる?

治療が終わるまでずっと続くのでしょうか?

多くの場合は治療終了後に少しずつ改善します。
治療後2〜4週間くらいで楽になる患者さんが多いです。

それを聞いて安心しました。
多くの場合
治療開始2〜3週間後
に症状が出始めます。
その理由は、
食道粘膜の細胞のターンオーバー(入れ替わり)が約1〜2週間だからです。
症状のピーク
- 治療中〜治療終了直後
改善
- 治療終了後2〜4週間
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※放射線治療の急性副作用について全体を知りたい方は
→ 放射線治療の急性副作用まとめ|治療中〜治療後数週間の症状もご覧ください。
放射線治療で食道炎が起こる確率

食道炎は多くの人に起こるのでしょうか?

胸部の放射線治療では比較的よく見られる副作用です。
ただし最近はIMRTなどの高精度治療により、重い食道炎は減ってきています。
放射線治療による食道炎の発生率は、治療部位・放射線量・化学療法併用の有無によって異なります。
代表的な報告では次のような頻度が報告されています。
肺がんの化学放射線療法
肺がんの化学放射線療法では比較的よく見られる副作用です。
報告例
- Grade2以上の食道炎:20〜40%程度
- Grade3以上の重い食道炎:5〜15%程度
特に
- 同時化学放射線療法
- 高線量照射
- 食道に近い腫瘍
では発生率が高くなります。
参考文献
Bradley JD et al.
RTOG 0617 trial
Journal of Clinical Oncology
→肺がんの放射線治療についてはこちらの記事で解説しています。
食道がんの放射線治療
食道自体を治療するため、炎症はほぼ必ず起こります。
しかし多くは
- 軽度〜中等度
- 治療終了後に改善
することがほとんどです。
→食道がんの放射線治療についてはこちらの記事で解説しています。
乳がんの放射線治療
乳がんの放射線治療では、食道が照射範囲に入ることは少ないため、食道炎は比較的まれです。
ただし
- 鎖骨上リンパ節照射
- 内胸リンパ節照射
などの場合には起こる可能性があります。
→乳がんの放射線治療についてはこちらの記事で解説しています。
近年は副作用が減少
現在は
- IMRT(強度変調放射線治療)
- IGRT(画像誘導放射線治療)
などの技術により、食道への線量を減らすことができるようになっています。
そのため、以前と比べて重い食道炎は減少しています。
参考
ASTRO guideline
https://www.astro.org

食べると痛いのですが、何を食べればいいでしょうか?

食道炎があるときは、
やわらかくて刺激の少ない食事がおすすめです。
おかゆやうどん、スープなどは比較的食べやすいですね。
放射線治療中に食道炎がつらいときの食事
食道炎があると、飲み込むときの痛み(嚥下痛)が出ることがあります。
その場合は食事内容を工夫することで、症状を軽くできることがあります。
おすすめの食事
食道への刺激が少ない食事がおすすめです。
例
- おかゆ
- うどん
- スープ
- 豆腐
- ヨーグルト
- プリン
- ゼリー
ポイント
- やわらかい食事
- 飲み込みやすい食事
- 常温〜ぬるめ
避けたほうがよい食べ物
食道炎があるときは、次の食品は刺激になることがあります。
- 辛い食べ物
- 酸味の強い食べ物
- アルコール
- 炭酸飲料
- とても熱い食べ物
食事の工夫
少しの工夫で食べやすくなることがあります。
例
- 少量ずつ食べる
- よく噛む
- 水分と一緒に飲み込む
- やわらかく調理する
食事が難しい場合は、栄養補助食品を利用することもあります。
栄養補助食品
食事量が減ってしまう場合は、栄養補助飲料を利用することもあります。
例えば次のような栄養補助ドリンクは、少量でもカロリーやタンパク質を補給できます。
・メイバランス
・エンシュア
食事が取りにくいときの栄養補給として利用されることがあります。
食欲低下や嚥下障害がある場合
食道炎があると
- 食欲低下
- 嚥下障害
が同時に起こることもあります。
→詳しくは次の記事も参考にしてください。
ゼリータイプの栄養補給
食事がつらい場合は、ゼリータイプの栄養食品を利用する方法もあります。
ゼリーは飲み込みやすく、食道への刺激が比較的少ないため、
放射線治療中でも食べやすいことがあります。
カロリー維持に
食事がほとんど取れないときは、
ゼリー飲料などでエネルギーを補給する方法もあります。
少量でもカロリー補給ができるため、
体力維持に役立つことがあります。
食道炎の重症度
国際的にはCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)という基準で評価されます。
Grade1
軽い違和感
Grade2
食事時の痛み
軟らかい食事が必要
Grade3
固形物が食べられない
Grade4
重篤(非常にまれ)
参考
NCI CTCAE
https://ctep.cancer.gov/

薬でよくなることもありますか?

はい。症状が強い場合は
・粘膜保護薬
・痛み止め
・制酸薬
などを使うことがあります。
我慢せず相談することが大切です。
食道炎の対処法
症状に応じて次の対処が行われます。
食事の工夫
おすすめ
- やわらかい食事
- 常温の食事
- 刺激の少ない食事
避けたいもの
- 辛い食べ物
- アルコール
- 熱い食べ物
薬物治療
症状が強い場合は薬を使います。
代表例
- 粘膜保護薬
- 制酸薬
- 痛み止め
- 局所麻酔薬
栄養サポート
食事量が減る場合は
- 栄養補助食品
- 高カロリー飲料
などを使うことがあります。
栄養補助食品
食事量が減ってしまう場合は、栄養補助飲料を利用することもあります。
放射線治療後の食道炎はどれくらいで治る?
多くの放射線性食道炎は、治療終了後に自然に改善します。
一般的な経過は次の通りです。
発症時期
治療開始
2〜3週間後
症状のピーク
治療中〜治療終了直後
回復までの期間
治療終了後
2〜4週間程度で改善
完全に回復するまで
多くの患者さんでは
1〜2か月以内
に症状がほぼ消失します。
長く続く場合
まれに
- 強い炎症
- 潰瘍
- 食道狭窄
などが起こることがあります。
症状が続く場合は
- 内視鏡検査
- 薬物治療
などが必要になることがあります。
症状が強いときは早めに相談
次の症状がある場合は、主治医へ相談することが重要です。
- 水も飲みにくい
- 食事がほとんど取れない
- 強い胸の痛み
適切な治療により、症状を軽くできることが多いです。
食道炎を予防できる?
完全な予防は難しいですが、次の対策が有効です。
- 適切な放射線治療計画
- IMRTなど高精度治療
- 早期の症状対策
近年は高精度放射線治療により副作用は減少しています。
参考研究
Bradley JD et al.
RTOG0617 trial
Journal of Clinical Oncology
放射線治療後の食道狭窄(まれ)
長期的にまれですが
食道狭窄
が起こることがあります。
症状
- 食べ物がつかえる
- 飲み込みにくい
この場合は
- 内視鏡治療
- 食道拡張
などで治療します。

症状が出ると、治療を続けられるか心配になります…。

多くの患者さんは、食事の工夫や薬で症状をコントロールしながら治療を続けることができます。
つらい症状がある場合は、早めに主治医に相談してください。
専門医コメント
放射線性食道炎は、胸部の放射線治療では比較的よくみられる副作用です。
しかし多くの場合は一時的な炎症であり、治療終了後に自然に改善します。
症状が強い場合でも、
- 食事の工夫
- 薬物治療
- 栄養サポート
によって治療を継続できることがほとんどです。
飲み込みにくさや痛みがある場合は、我慢せず早めに主治医へ相談することが重要です。
関連記事
放射線治療では、口や喉にさまざまな副作用が起こることがあります。
口内炎・味覚障害・口の渇き・嚥下障害など、頭頸部の副作用についての全体像は以下の記事でまとめて解説しています。
まとめ
放射線治療による食道炎のポイント
- 胸部の放射線治療で起こることがある
- 主な症状は嚥下痛・つかえ感
- 治療開始2〜3週間後に出やすい
- 多くは治療終了後に改善する
- 食事の工夫と薬で対処できる
放射線治療の副作用全体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
FAQ(よくある質問)
放射線治療で食道炎はよく起こりますか?
胸部の放射線治療では比較的よく見られる副作用ですが、多くは軽度で一時的です。
食道炎はいつ頃から起こりますか?
治療開始から2〜3週間後に症状が出ることが多いです。
治療が終われば治りますか?
多くの場合、治療終了後2〜4週間で改善します。
食事は普通にできますか?
症状が軽ければ可能ですが、痛みがある場合はやわらかい食事がおすすめです。
痛み止めは使えますか?
必要に応じて処方されます。
水を飲むと痛いのですが大丈夫ですか?
食道炎で起こることがあります。症状が強い場合は医師へ相談してください。
食道炎で入院が必要になりますか?
多くの場合は外来で対応できます。
放射線治療を中止する必要がありますか?
多くの場合、症状をコントロールしながら治療を継続できます。
食道炎は将来残りますか?
ほとんどの場合は一時的な炎症です。
食道が狭くなることはありますか?
まれに食道狭窄が起こることがありますが、内視鏡治療で改善する場合が多いです。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。


























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