ポストコロナにおける放射線治療①

目次

1:コロナ流行による影響
2:寡分割照射の導入
3:寡分割照射が導入された領域①
4:参考文献

コロナ流行による影響

最近ではコロナ感染についてもようやく落ち着いてきた感じがあります。

小規模な感染拡大はあるものの、一時期のように流行によって社会機能がマヒするという事態は起こらなくなりました。

社会生活もコロナ流行以前に戻ったように思いますが、コロナ流行以前と比べて変わったものも多くあると思います。

医療現場においても、コロナ感染が与えた影響というのは大きく、多くの現場において新たな対応を余儀なくされましたし、現在までその影響が残っている部分もあります。

今回は、放射線治療の領域においてコロナ感染が与えた影響についてみていこうと思います。

寡分割照射の導入

放射線治療の領域で影響が大きかったものと言えば、寡分割照射の導入がそのひとつと言えます。

寡分割照射は、1回に照射する線量を多くすることで、治療期間の短縮を図るものです。

コロナ禍においては長期の通院じたいが感染のリスクとなるため、患者本人やスタッフの感染リスクを下げる目的で寡分割照射を採用する病院は多かったです。

そしてコロナ禍を経て寡分割照射が定着し、そのまま通常の治療として継続されている場合も多いのではないかと思います。

寡分割照射が導入された領域①

寡分割照射がもっとも広く導入された領域と言えるのは乳癌だと思います。

乳癌の標準治療は、乳房温存術後に25回で照射するのがこれまでは一般的でしたが、コロナ流行の少し前頃より、16回で照射する方法が広まりだしていました。

そして、コロナ禍を経て、この16回照射が多くの病院で広く導入されました。

乳癌の寡分割照射において保険点数がつくのも後押しになったと思います。

いっぽう、海外では16回だけでなく、5回で照射する方法も取り入れられており、大規模研究においてその有効性が示されています。

現在では16回照射がむしろ標準的な照射の位置づけで、寡分割照射といえば5回照射のような感じになってきています。

日本ではまだまだ乳癌術後で5回照射を行う施設は少ないと思いますが、今後、COVID-19のような大規模感染症が流行し、行動制限がかかるような場合があれば、5回照射が導入されることになるかもしれません。

 

少し長くなりましたので、続きは次回の記事にしようと思います。

参考文献

Breast, Prostate, and Rectal Cancer: Should 5-5-5 Be a New Standard of Care?

Affiliations

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