IMRTやVMATは従来の放射線治療と比較して肺癌の治療成績を改善するのか

目次

1:肺癌に対するIMRT、VMATを用いた治療
2:高精度照射の採用で治療成績は向上するのか?
3:まとめ
4:参考文献

肺癌に対するIMRT、VMATを用いた治療

III期の非小細胞肺癌(NSCLC)は化学放射線療法が選択されることが多いです。

肺癌の放射線治療では従来は3次元照射と呼ばれる2方向や4方向からの照射が一般的でした。

近年では、それらの方法に変わって、IMRTやVMATと呼ばれる高精度治療を採用する病院が増えてきました。

IMRTやVMATは体の全方向から複雑な形状を用いて照射することで、治療をしたい部位には十分に線量を投与し、当てたくない重要臓器については避けながら治療をすることが可能です。

このため、十分な治療効果を得ながら、従来よりも少ない副作用で治療ができるというメリットがあります。

高精度照射の採用で治療成績は向上するのか?

今回紹介する論文では、III期の非小細胞肺癌において、通常照射と比較して、IMRTあるいはVMATは治療成績を改善するのかを評価したものです。

この研究では約4000例を対象として、通常照射群と高精度照射群にわけて検討しています。

生存期間の中央値は通常照射群で21.2ヶ月、IMRT群で23.9ヶ月、VMAT群で24.9ヶ月と、高精度照射で生存期間の延長が見られましたが、統計解析では有意な差は見られませんでした(p=0.06)。

まとめ

今回紹介した論文は比較的大規模な対象において、高精度照射の有効性を検討したものでしたが、結果として、従来の照射と比較して高精度照射の優位性は示すことができませんでした。

しかしながら、高精度照射は本来避けるべき正常組織の線量を下げることが可能であり、生存期間だけでなく、QOLの改善に寄与する点もあります。

今回の結果から、III期の非小細胞肺癌における化学放射線療法において、ただちに高精度照射が不要であると考えるのは早計であると思います。

今後、高精度照射を用いてどのように治療成績を改善していくのか模索していく必要があると考えます。

参考文献

A Comparison of Radiation Techniques in Patients Treated With Concurrent Chemoradiation for Stage III Non-Small Cell Lung Cancer

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