前立腺癌の治療選択肢が非常に複雑になってきている

目次

1:治療選択肢の複雑化
2:放射線治療における選択肢
3:適切な治療選択のために
4:参考文献

 

治療選択肢の複雑化

最近になって前立腺癌の治療選択肢が複雑化してきているという話です。

前立腺癌じたいは比較的進行が緩やかな病気で、これまでもさまざまな治療法がありました。

手術においてはロボット手術の登場や、ホルモン治療後に手術を行う方法もありますが、放射線治療の領域でも治療法が大きく変化してきています。

 

放射線治療における選択肢

放射線治療領域ではいわゆる体外照射と呼ばれる、通常の放射線治療を行うのが一般的でした。

特にIMRT(強度変調放射線治療)の普及に伴い、多くの施設で前立腺癌に対する放射線治療が行えるようになってきています。

そして、近年では1回の線量を増やして治療回数を減らす寡分割照射も普及しだしています。

また、治療施設は限られますが、陽子線治療や重粒子線治療といった粒子線治療も最近になって保険適応となり、治療選択肢の一つとなってきています。

特殊な治療では小線源治療と呼ばれる放射線を発生する線源を一次的あるいは永久的に前立腺内に挿入する治療も行われており、良好な治療成績が報告されています。

さらに、この小線源治療と体外照射を組み合わせた治療も行われています。

このように放射線治療の領域だけでも様々な治療法が存在しており、それぞれ有効であるとする報告がなされています。

これだけたくさんの治療選択肢があると、その施設で実施できるかどうかという問題点はありますが、どの選択肢が最も適切であるかは放射線治療医自身も判断が難しい場合が少なくありません。

最終的には、現実的に実施可能な選択肢の中から最善と考えるものを提示することになるのですが、これらの治療選択肢から個々の症例にあわせて適切な治療法を選択することができるようになれば、治療成績の向上のみでなく多くのメリットが生まれると期待できます。

特に近年普及してきている寡分割照射では治療期間の短縮が期待できるため、通院の負担が少なくなりますし、また治療回数が少なくなることで医療費の削減というメリットも存在します。

 

適切な治療選択のために

適切な治療選択にはなにが必要になってくるのでしょうか。

これまでの治療成績は、従来のステージ分類に従って評価されてきましたが、新たな層別化の指標が必要になる可能性があります。

これは遺伝子検査であったり、新たな画像検査などを組み合わせて行われるかもしれません。

ただ、前立腺癌は経過の長い疾患であり、明確な研究結果が出てくるには5年以上の経過観察期間が必要になると考えられますが、現在進行形の研究も複数あるため、新たな治療選択の指標が出てくる未来もそこまで遠くはないのかもしれません。

 

参考文献

Evolving Brachytherapy Boost in Prostate Cancer in the Era of Hypofractionation

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