姑息照射(緩和照射)に30Gy10回の治療はもう古い?

2022年5月29日

まとめ

脊椎転移における姑息照射では脊髄麻痺といった神経への長期影響が問題となるが、48.5Gy10回治療あるいは35Gy5回治療でも長期の重篤な有害事象は認めず、安全に施行できると考えられる。

 

 解説

放射線治療はさまざまな目的で照射を行うが、病気に伴う症状緩和目的に行う治療を姑息照射あるいは緩和照射と呼ぶ。

これは病気の治癒を目指したものではないため、いわゆる根治照射に比べると弱めの治療になる。

標準的には30Gyを10回に分けて治療するのであるが、欧米ではより短期的に、一方で線量を増やして治療する方法が模索されている。

線量を増やす際に問題となるのは、特に脊髄が照射範囲に入る場合である。

神経は連続した組織のため、1ヶ所が障害されるとそこから先の神経がすべてダメになってしまう。放射線治療の際には気を遣う部分である。

姑息照射においては脊椎転移への照射もたびたび経験するが、脊椎の中を脊髄が通っているため、高線量を投与できないというジレンマが発生する。

今回の研究ではIMRTという手法を用いて、脊椎には十分な線量を投与しつつ、脊椎内の脊髄の線量を抑えるという手法で治療を行った患者の長期的なフォローの報告である。

ある程度の長期予後が期待できる患者に対しては48.5Gyを10回に分けて、中程度の予後の場合には35Gyを5回に分けて照射している。

いずれも標準的な30Gy10回の照射に比べると高線量の投与となっている。

脊髄線量については、最大線量を10回照射で平均33Gy程度に、5回照射では20Gy程度に抑えて治療をしている。

結果として十分な病変コントロール、疼痛改善効果を得るとともに、脊髄麻痺といった重篤な神経障害は見られなかった。

これまでは姑息照射といえば30Gy10回治療が標準であったが、治療法の改善に伴い進行癌においても生命予後の延長が期待できるようになってきている。

予後が短ければ30Gy10回治療でも大きな問題はなかったのだが、予後が長くなると、病変部が再度悪化する、疼痛が再燃するという事態に少なからず遭遇することになる。

このため、近年では姑息照射であってもより高線量を投与するという試みがなされているわけである。

この傾向は欧米でより強く、日本ではまだそこまで浸透していないように感じるが、今後、姑息照射においても高線量投与が一般的になり、30Gy10回治療が過去の治療となる日もそう遠くはないのではないかと期待している。

 

参考文献

Long-Term Results of Dose-Intensified Fractionated Stereotactic Body Radiation Therapy (SBRT) for Painful Spinal Metastases

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