放射線治療後の「二日酔いのような症状」― 放射線宿酔とは?原因・症状・対処法【専門医が教える】いつまで続く?食事の注意点は?

2019年3月16日

radiation sickness

放射線治療を受けていると、

  • なんとなく頭が重い

  • 気持ちが悪い

  • 体がだるい

  • めまいがする

といった症状が出ることがあります。

こうした症状は 「放射線宿酔(ほうしゃせんしゅくすい)」 と呼ばれます。

あまり知られていない副作用ですが、
放射線治療を受ける方であれば誰にでも起こる可能性があります。

この記事では、

  • 放射線宿酔の原因

  • 起こりやすい人(リスク因子)

  • 症状とその経過

  • 治療や対処法

  • 治療後に注意すべきこと

について、できるだけ分かりやすく解説します。

※ここでは放射線治療に伴う宿酔について説明します(放射線被曝など治療以外の状況は含みません)。

原因(機序・リスク因子)

放射線宿酔の原因(機序)

実は、放射線宿酔の原因は完全には解明されていません。

宿酔でみられる症状は、

  • 化学療法

  • 貧血

  • 体力低下

などでも起こり得るものです。

そのため「これが原因」と厳密に特定することが難しい場合があります。
人によっては複数の要因が重なって症状が出ていることもあります。

その意味では、放射線治療だけに限った現象というより、
がん治療全体の中で起こりうる体調変化のひとつと考える方が適切な場合もあります。

現在考えられている原因

  • 放射線照射に伴う細胞死

  • 炎症反応およびサイトカインの放出

放射線治療は腫瘍細胞を死滅させることを目的としています。
しかし、腫瘍細胞だけでなく正常細胞の一部も影響を受けます。

正常細胞が死ぬことで、

  • 組織の機能低下

  • 周囲の細胞機能への影響

が生じます。

さらに、照射された組織では炎症が起こります。
炎症の過程で「サイトカイン」と呼ばれる物質が放出されます。

サイトカインは本来、体を守るための物質ですが、
血液中に放出されることで頭痛や倦怠感などの症状を引き起こすと考えられています。

リスク因子(起こりやすい条件)

以下のような場合に宿酔のリスクが高くなります。

  • 頭部への照射

  • 乳腺への照射

  • 腹部への照射

  • 広い範囲への照射(全身照射など)

  • 線量が多い治療

また、

  • 化学療法との併用

  • 貧血

  • 食事量の低下

  • 甲状腺機能低下

なども同様の症状を引き起こすため、複合的に影響することがあります。

症状

いつ起こるのか?

放射線宿酔は、基本的に治療中に出現する症状です。

皮膚炎や粘膜炎は治療開始から約2週間後に出ることが多いですが、
宿酔は 初回の治療後から出る場合もあります。

一方で、治療が終了すると症状は比較的速やかに改善します。
翌日から軽快することも珍しくありません。

もし治療後も長期間症状が続く場合は、
宿酔以外の原因を考える必要があります。

具体的な症状

主な症状は以下のとおりです。

  • 頭痛

  • 悪心(吐き気)

  • 嘔吐

  • めまい

  • 全身倦怠感

すべての症状が出るわけではなく、個人差があります。

また、照射部位によって出やすい症状は異なります。

  • 頭部照射:頭痛、悪心、めまいが出やすい

  • 乳腺・腹部照射:頭痛やめまいは比較的少ない

重要なのは、

日常生活に大きな支障をきたすほどの症状が出る頻度はそれほど高くない

ということです。

また、症状が出ても治療終了後に改善していきます。

起こる可能性を知っておくことは大切ですが、
必要以上に不安になる必要はありません。

放射線宿酔と一般的な副作用(急性期)の比較

比較項目放射線宿酔(ほうしゃせんしゅくすい)一般的な副作用(急性期)
出現時期治療開始直後〜数日以内(極めて早い)治療開始2〜3週間後(蓄積してから)
主な症状吐き気、だるさ、頭痛、二日酔い感皮膚炎、粘膜炎、照射部位特有の症状
症状の範囲照射部位に関わらず出現局所的(放射線が当たった場所のみ)
持続期間一時的(数日で体が慣れることが多い)治療期間中〜終了後数週間続く
主な原因細胞死に伴うサイトカインの放出など正常組織の炎症・ダメージの蓄積

治療(対処法)

対応は症状の程度によって異なります。

軽度の場合

多くは経過観察となります。
治療中でも徐々に改善することがあります。

吐き気や倦怠感がある場合は、水分をこまめに補給することが大切です。

常温の水や経口補水液などを少量ずつ摂取する方法があります。

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また、放射線以外の原因がないかを確認することも重要です。

もし貧血や化学療法など別の原因があれば、
その治療を行います。

症状が強い場合

対症療法を行います。

  • 頭痛 → 鎮痛薬

  • 吐き気 → 制吐薬

場合によっては漢方薬(補中益気湯、十全大補湯など)が処方されることもありますが、実際に使用される機会は多くありません。

放射線治療後に注意すること

宿酔の症状は、治療が終われば比較的速やかに改善します。

  • 長期間続くことはまれ

  • 後遺症を残すこともほとんどありません

もし治療後も症状が持続する場合は、
放射線以外の原因が考えられます。

その際は必ず主治医に相談し、
必要に応じて検査や治療を受けてください。

まとめ

放射線宿酔は、

  • 放射線治療中に起こりうる

  • 比較的早期から出現することがある

  • 多くは治療終了後に速やかに改善する

副作用です。

原因は完全には解明されていませんが、
炎症やサイトカインが関与していると考えられています。

症状を正しく理解することは大切ですが、
必要以上に心配する必要はありません。

気になる症状があれば、遠慮なく主治医に相談してください。

放射線治療中の皮膚炎についての記事はこちら

放射線治療中に起こる副作用の一つである皮膚炎についてまとめています。

頭頸部がんの放射線治療における副作用はこちら

頭頸部がんの放射線治療中に起こる副作用である口渇や味覚障害、QOL低下などを詳しく解説

FAQ:放射線宿酔(ほうしゃせんしゅくすい)について

Q1: 放射線宿酔とは何ですか?

A: 放射線宿酔とは、放射線治療中に起こりうる体調不良の総称です。頭が重い・悪心・だるさ・めまいなどの症状が出ることがあり、「二日酔いのよう」と表現されることもあります。治療以外の放射線被曝状況とは区別して説明されています。

Q2: 放射線宿酔の原因は何ですか?

A: 原因はまだ完全には解明されていませんが、次のような反応が関係していると考えられています:

  • 放射線照射による 細胞死

  • 放射線照射部位で起こる 炎症反応

  • その結果の サイトカイン(炎症物質)の放出

これらが影響し、身体のだるさや頭痛などの症状が出ると考えられています。

Q3: 放射線宿酔が起こりやすいのはどんな人?

A: 以下のような条件で宿酔が出やすい可能性があります:

  • 頭部・乳腺・腹部などへの照射

  • 広い範囲への照射

  • 照射線量が多い治療

  • 同時に 化学療法を受けている

  • 貧血や食欲低下、甲状腺機能低下がある場合

症状の原因が複数重なることもあります。

Q4: どんな症状が出ますか?

A: 主な症状には次のようなものがあります:

  • 頭痛

  • 悪心(吐き気)

  • 嘔吐

  • めまい

  • 全身倦怠感(体のだるさ)

すべての症状が必ず出るわけではなく、個人差があります。また、照射部位によって出やすい症状が異なることもあります。

Q5: いつ頃出て、どれくらい続きますか?

A: 放射線宿酔は治療中に出現することが基本です。初回の治療後から出始める場合もあり、治療終了後に比較的速やかに改善することが多いです。翌日から症状が軽くなることも珍しくありません。もし治療後も長期間症状が続く場合は、宿酔以外の原因の可能性が考えられます。

Q6: 放射線宿酔への対処法は?

A: 対処法は症状の程度によって異なります。

軽度の場合

  • 経過観察が中心

  • 水分補給をこまめに行う(常温の水や経口補水液など)

症状が強い場合

  • 痛みがあれば 鎮痛薬

  • 吐き気が強ければ 制吐薬

  • 場合によっては 漢方薬(例:補中益気湯、十全大補湯) が使われることもあります(使用機会は多くありません)

Q7: 放射線治療後の注意点は?

A: 宿酔の症状は通常、治療終了後に速やかに改善していきます。また、宿酔が原因で後遺症が残ることはほとんどありません。治療後も症状が持続する場合は、別の原因が考えられるため、主治医に相談することが推奨されています。

Q8: 放射線宿酔は放射線被曝や急性放射線症と同じですか?

A: いいえ。この記事が扱う「放射線宿酔」は放射線治療に伴う体調不良です。大量被曝で起こる「急性放射線症」とは異なる現象であり、後者はこの記事の内容とは別の医学的概念です(ページ内では扱われていません)。

放射線治療の副作用(まとめ)

副作用を網羅的にまとめています。

参考文献

Hsiao CP, Daly B, Saligan LN. The Etiology and management of radiotherapy-induced fatigue. Expert Rev Qual Life Cancer Care 2016; 1:323-328

Hofman M, Ryan JL, Figueroa-Moseley CD, Jean-Pierre P, Morrow GR. Cancer-related fatigue: the scale of the problem. Oncologist 2007; 12 Suppl 1:4-10

UpToData○R Treatment of radiation injury in the adult

がん・放射線療法2017 秀潤社

放射線治療計画ガイドライン2016年版 金原出版

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