放射線治療による皮膚炎とは?【画像でわかる症状・ステロイド軟膏の使い方まで専門医が解説】


放射線治療を受けているのですが、
皮膚が赤くなってきました…。
大丈夫でしょうか?

放射線治療では、照射された部分の皮膚に赤みや乾燥などの皮膚炎が起こることがあります。
多くの場合は一時的なものです。

治療を続けても大丈夫なんですか?

はい。
ほとんどの場合は適切なスキンケアで安全に治療を続けることができます。
この記事でわかりやすく説明しますね。
放射線治療中に
皮膚が赤くなってきた
かゆい、ヒリヒリする
皮がむけてきた
「これって大丈夫?」と不安になる方は多いと思います。
放射線皮膚炎は、放射線治療を受ける多くの方が経験する副作用です。
しかし、症状の強さや経過には個人差があります。
この記事では
原因
症状(画像のイメージ)
予防
ステロイド軟膏の使い方
治療後の注意点
新しい治療法
まで、できるだけわかりやすく説明します。
必要な項目だけ読んでいただいても大丈夫です
放射線皮膚炎の原因(なぜ起こる?)
放射線皮膚炎のしくみ(機序)
放射線が体に当たると、
腫瘍の細胞
正常な皮膚の細胞
の両方に影響が出ます。
腫瘍細胞は修復できませんが、正常な皮膚は修復します。
しかし、その過程で
細胞死
炎症物質の放出
が起こり、これが皮膚炎の原因になります。
放射線皮膚炎のリスク因子
起こりやすい疾患
頭頸部癌
乳癌
これらは皮膚に近い場所を治療するため、皮膚炎が起こりやすくなります。
治療法による違い
通常照射 → 起こりやすい
IMRT・SRTなど高精度治療 → 起こりにくい
電子線照射 → 皮膚炎が強く出やすい
そのほかのリスク
肥満
高齢
女性
喫煙・飲酒
化学療法の併用
膠原病
摩擦や紫外線
治療中は
✔ ゆったりした服
✔ 紫外線を避ける
✔ こすらない
ことが大切です。
放射線皮膚炎の症状【画像でみる重症度】

皮膚が赤くて乾燥しています。
これは普通の反応なんでしょうか?

放射線皮膚炎では、赤み・乾燥・かゆみなどがよくみられます。

ひどくなることもありますか?

まれに皮膚がむけることもありますが、
適切なケアで多くはコントロールできます。
放射線皮膚炎は
急性
晩発性
に分かれます。
急性放射線皮膚炎(治療中〜数週間)
治療開始後10~14日で出現します。
Grade 0(症状なし)

Grade 1(軽度の赤み)

発赤
乾燥
多くは自覚症状が少ないです。
Grade 2(皮むけ・かゆみ)

乾性落屑
かゆみ
ヒリヒリ感
約30%がこの段階以上を経験します。
Grade 3(強い炎症・滲出液)

湿性落屑
出血
強い痛み
被覆材が必要になります。
放射線皮膚炎はいつ治る?(回復までの期間)

この皮膚炎はいつ治るんでしょうか?

多くの場合、治療終了後2〜3週間くらいで徐々に改善していきます。

治療が終わったらすぐ治るわけではないんですね。

はい。治療終了後1週間くらいがピークになることもありますが、その後ゆっくり回復します。
放射線皮膚炎は、多くの場合治療終了後2〜3週間程度で徐々に改善していきます。
一般的な経過は次のようになります。
- 治療開始後10~14日:赤みや乾燥が出始める
- 治療終了前後:症状が強くなる
- 治療終了後1週間:ピークになることがある
- 治療終了後2~3週間:徐々に改善
ただし、
- 色素沈着
- 皮膚の乾燥
などは数ヶ月続くことがあります。
晩発性皮膚炎(数か月〜数年後)
色素沈着
脱色
萎縮
毛細血管拡張
繊維化
電子線では変化が強く出やすい傾向があります。
放射線皮膚炎の予防方法
急性期の予防で最も重要なのはスキンケア
✔ 低刺激の石鹸
✔ 保湿剤(ヒルドイド、ワセリンなど)
✔ アルコール含有は避ける
✔ 1日2回程度保湿
治療開始前から行うことで症状が軽くなる可能性があります。
保湿クリーム
保湿は放射線皮膚炎の予防・改善に重要です。ヒルドイド軟膏を使用することが多いですが、ヒルドイドを希望されない方には、市販の保湿クリームも有効です。特に【ニベアクリーム】は肌にやさしく、日々のスキンケアにおすすめです。
スキンケアのポイント
放射線皮膚炎は「どうケアするか」で症状の強さが大きく変わります。
特に保湿のタイミングや使用する製品選びは重要です。
実際の臨床経験をもとにまとめたスキンケア専用記事はこちらです。
→ 【放射線治療中のスキンケアと保湿のポイント】
放射線皮膚炎の治療【ステロイド軟膏は使う?】

皮膚が赤くなってきました。
治療はどのように行うんでしょうか?

放射線皮膚炎の治療は、
皮膚の症状の程度(Grade)によって対応が変わります。

症状によって治療が違うんですね。

はい。
多くの場合は清潔と保湿が基本で、
症状が強い場合には薬や被覆材を使うことがあります。
放射線皮膚炎の治療は、症状の程度(Grade)によって対応が変わります。
多くの場合は皮膚を清潔に保ち、保湿を行うことが基本になります。
Grade1(軽度の赤み・乾燥)
主な治療は次の通りです。
- 皮膚を清潔に保つ
- 保湿剤を使用する
保湿剤は
- ヘパリン類似物質
- ワセリン
などがよく使用されます。
入浴後など皮膚が乾燥しやすいタイミングで1日1〜2回程度塗ると効果的です。
ワセリンは使っていい?
放射線治療中の皮膚ケアとして、ワセリンは使用することができます。
ワセリンは皮膚の表面に膜を作り、水分の蒸発を防ぐことで乾燥を防ぐ働きがあります。
そのため、次のような場合によく使用されます。
- 皮膚が乾燥している
- かゆみがある
- 刺激の少ない保湿剤を使いたい
ワセリンは刺激が少ない保湿剤であり、多くの患者さんに安全に使用できます。
ただし、放射線治療の直前に厚く塗ることは避けるよう指示される場合があります。
使用するタイミングについては、担当医や医療スタッフの指示に従いましょう。
Grade2(強い赤み・かゆみ・乾燥)
Grade2では、次の治療を行うことがあります。
- 清潔を保つ
- 保湿剤
- ステロイド軟膏(リンデロンなど)
ステロイド軟膏は炎症を抑える効果があり、皮膚の赤みやかゆみを改善する目的で使用されます。
※ただし、ステロイド軟膏の予防的使用は一般的ではありません。
ステロイド軟膏の塗り方
ステロイド軟膏は、正しい方法で塗ることが大切です。
基本的なポイントは次の通りです。
- 入浴後など皮膚が清潔な状態で塗る
- 指先に少量取り、やさしく広げる
- 強くこすらない
- 1日1〜2回程度使用する
塗る量の目安としては、人差し指の先から第一関節まで出した量(FTU)で、手のひら約2枚分の範囲に塗ることができます。

ステロイド軟膏と聞くと、
少し不安があります…。

心配される方は多いですが、
放射線皮膚炎では炎症を抑えるために有効な薬です。

安全に使えるのでしょうか?

医師の指示通りに使えば、
短期間の使用で大きな問題になることはほとんどありません。
ステロイド軟膏は危険?
ステロイド軟膏に対して「副作用が心配」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、放射線皮膚炎で使用するステロイド軟膏は、炎症を抑えるために非常に有効な治療です。
医師の指示に従って使用する場合、大きな問題になることはほとんどありません。
放射線皮膚炎では、
- 赤み
- かゆみ
- 炎症
を抑える目的で、一定期間使用することがあります。
長期間の自己使用や、自己判断での使用は避け、医師の指示通りに使用することが大切です。
軟膏を塗るときの注意点
皮膚炎を悪化させないために、次の点に注意しましょう。
- 強くこすらない
- 厚く塗りすぎない
- 自己判断で薬を中止しない
- 市販薬を勝手に追加しない
また、放射線治療を受けている皮膚は刺激に弱い状態になっています。
そのため
- 香料の強いクリーム
- アルコールを含む化粧品
などは避けた方がよい場合があります。
Grade3(皮膚がむける・湿性落屑)
皮膚がむけて滲出液(じゅくじゅくした状態)が出ている場合は、被覆材を使用することがあります。
代表的なものには次のようなものがあります。
- モイスキンパッド
- メピレックス
これらは傷を保護し、皮膚の回復を助ける目的で使用されます。
なお、被覆材を固定する際には
接着力の強いテープは皮膚を傷める可能性があるため避けます。

皮膚がむけてきたらどうなるんでしょうか?

皮膚がむけてじゅくじゅくした状態(湿性落屑)になることがあります。

その場合はどう治療するんですか?

皮膚を守るために、モイスキンパッドやメピレックスなどの被覆材を使用することがあります。
保湿剤はいつ塗る?(放射線治療前後の注意)
放射線治療中の皮膚ケアでは、保湿剤を適切なタイミングで使用することが大切です。
基本的には、次のタイミングで塗ることが勧められます。
- 入浴やシャワーのあと
- 皮膚が乾燥しているとき
- 医師や看護師から指示されたタイミング
多くの場合、1日1〜2回程度の使用が目安になります。
放射線治療の直前は避けることがあります
施設によって方針は異なりますが、放射線治療の直前に軟膏やクリームを塗ることを避けるよう指示される場合があります。
これは、
- 皮膚表面の状態が変わる可能性
- 治療位置のマーキングが消える可能性
などを避けるためです。
そのため、保湿剤は
治療が終わったあとや、帰宅後に塗るようにすると安心です。
保湿剤を塗るときのポイント
保湿剤を使用するときは、次の点に注意しましょう。
- 皮膚をこすらず、やさしく広げるように塗る
- 赤くなっている部分だけでなく、照射範囲全体に塗る
- 香料や刺激の強い化粧品は避ける
皮膚の乾燥を防ぐことで、皮膚炎の悪化を予防できる可能性があります。
使用する薬は自己判断で変更しない
市販のクリームや軟膏を自己判断で追加するのではなく、
放射線治療の担当医や医療スタッフに相談して使用することが大切です。
皮膚の状態に応じて、適切な薬や保湿剤が選ばれます。
放射線治療中の入浴・シャワーはしてもいい?

皮膚が赤いのですが、
お風呂に入っても大丈夫ですか?

基本的に入浴やシャワーは問題ありません。

気をつけることはありますか?

熱いお湯やこすり洗いは避けることが大切です。
やさしく洗って保湿をしましょう。
基本的に入浴やシャワーは問題ありません。
ただし、皮膚炎を悪化させないために次の点に注意してください。
- 熱いお湯は避ける
- ゴシゴシこすらない
- 低刺激の石鹸を使用する
- 入浴後は保湿剤を使用する
タオルで拭くときはこすらず軽く押さえるように水分を取るのがポイントです。
放射線治療中は日焼け止めを使っていい?
放射線治療中の皮膚は、紫外線の影響を受けやすい状態になっています。
そのため、照射された部位は強い日光を避けることが大切です。
外出する場合には
- 帽子
- 衣服で覆う
- 日陰を利用する
などの対策が勧められます。
日焼け止めについては、皮膚の状態によっては刺激になる可能性があります。
そのため、
- 赤みが強い場合
- 皮膚炎がある場合
には、使用する前に医療スタッフに相談することが安心です。
放射線治療後に注意すること
終了後1週間は悪化することがある
改善まで2~3週間
乾燥は持続するため保湿継続
紫外線を避ける
リコール現象に注意
晩発性皮膚炎の治療
パルスダイレーザー(毛細血管拡張)
高圧酸素療法(研究段階)
確立した治療法はまだありません。
新しい治療(研究段階)
TGF-β1阻害剤
IL-12
皮膚幹細胞移植 など
今後の研究が期待されています。
放射線皮膚炎で受診が必要な症状

皮膚がむけてきたら大丈夫でしょうか?

軽い皮むけなら心配ないことも多いですが、
強い痛み・広い範囲の皮むけ・じゅくじゅくした状態がある場合は医師に相談してください。

早めに相談した方がいいんですね。

はい。必要に応じて被覆材などの治療を行うことがあります。
多くの放射線皮膚炎は軽度で自然に改善しますが、次のような症状がある場合は医師に相談してください。
- 強い痛み
- 広い範囲の皮むけ
- じゅくじゅくした滲出液
- 出血
- 発熱
- 膿のような分泌物
特に湿性落屑(皮膚がむけて滲出液が出る状態)の場合は、被覆材などの処置が必要になることがあります。
症状が強い場合は、自己判断せず放射線治療医に相談しましょう。

放射線皮膚炎が出ると、
治療が心配になります…。

多くの場合は適切なスキンケアで安全に治療を続けることができます。

気になる症状があったらどうすればいいですか?

我慢せずに放射線治療のスタッフに相談することが大切です。
早めに対応すれば症状はコントロールできます。
専門医コメント
放射線治療では、照射された部位の皮膚に赤みや乾燥などの皮膚炎が起こることがあります。これは放射線が皮膚の細胞にも影響するために起こる一時的な反応で、多くの場合は治療終了後に徐々に改善していきます。
皮膚症状を悪化させないためには、皮膚を清潔に保ち、刺激を避けること、保湿を行うことが重要です。また、強い痛みや皮膚のただれ(湿性落屑)が出た場合には、適切な処置が必要になることがあります。
放射線治療中に皮膚の変化があっても、自己判断で市販薬を使用する前に担当の医師や医療スタッフに相談することが大切です。適切なスキンケアや治療を行うことで、多くの皮膚症状は安全にコントロールできます。
気になる症状がある場合は、遠慮せずに医療スタッフに相談してください。
放射線治療中の副作用のひとつ放射線宿酔の記事はこちら
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放射線宿酔について症状や時期、対処法などを解説しています。
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よくある質問(FAQ)
放射線治療の皮膚炎はなぜ起こるのですか?
放射線が照射された部分では、腫瘍細胞だけでなく正常な皮膚細胞の一部も影響を受けます。細胞の一部が死んだり、炎症物質が放出されたりすることで、発赤・乾燥・かゆみ・皮むけ(落屑)などの放射線皮膚炎が起こります。頭頸部がんや乳がんのように皮膚に近い部位を治療する場合は起こりやすい傾向があります。
放射線皮膚炎はいつから出ますか?どんな症状がありますか?
急性の放射線皮膚炎は、治療開始後10~14日頃から出現することが多いです。
主な症状は、発赤、紅斑、乾燥、かゆみ、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着などです。
約90%の方が軽度以上を経験し、約30%の方が中等度以上になります。多くは治療終了後2~3週間で徐々に改善しますが、治療後もしばらくは悪化することがあるため注意が必要です。
放射線皮膚炎を予防する方法はありますか?
完全に防ぐことは難しいですが、症状を軽くする予防は可能です。
ポイントは次のとおりです。
皮膚を清潔に保つ(微温水+低刺激石鹸)
保湿剤(ヒルドイド、ワセリンなど)を使用する
アルコール入り製品や刺激の強い化粧品を避ける
締め付けの強い服や化繊を避ける
紫外線を避ける
喫煙・飲酒を控える
放射線治療開始前または開始直後からスキンケアを行うことが重要です。
ステロイド軟膏は使いますか?
炎症が強くなった場合(Grade2以上)には、ステロイド軟膏(例:リンデロン)を使用することがあります。
軽度(発赤のみ)であれば保湿中心で対応しますが、赤みが強い・皮がむける場合にはステロイドを併用します。
広範囲にじゅくじゅくした場合(Grade3)は被覆材(モイスキンパッド、メピレックスなど)を使用します。
自己判断ではなく、必ず放射線治療医の指示に従いましょう。
放射線治療後も皮膚のケアは必要ですか?
はい、必要です。治療終了後も2~3週間は急性皮膚炎が続くことがあります。
赤みや皮むけが改善しても、乾燥や色素沈着はしばらく残ります。
そのため、
保湿の継続
紫外線を避ける
刺激を避ける
ことが大切です。
また、数ヶ月~数年後に晩発性皮膚炎(色素沈着、萎縮、毛細血管拡張など)が出ることがあります。気になる変化があれば医師に相談してください。
放射線治療の副作用(まとめ)
副作用を網羅的にまとめています。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
参考文献
Seite S, Bensadoun RJ, Mazer JM. Prevention and treatment of acute and chronic radiodermatitis. Breast Cancer (Dove Med Press) 2017; 9:551-557
Chan RJ, Webster J, Chung B, Marquart L, Ahmed M, Garantziotis S. Prevention and treatment of acute radiation-induced skin reactions: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cancer 2014; 14:53
Spalek M. Chronic radiation-induced dermatitis: challenges and solutions. Clin Cosmet Investig Dermatol 2016; 9:473-482
Berkey FJ. Managing the adverse effects of radiation therapy. Am Fam Physician 2010; 82:381-388, 394
UpToData○R Radiation dermatitis
がん・放射線療法2017 秀潤社
放射線治療計画ガイドライン2016年版 金原出版
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。




























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