コロナ肺炎に対する低線量全肺照射の結論

目次
1:肺炎と全肺照射
2:コロナ肺炎に対する全肺照射の効果
3:まとめ
4:参考文献
肺炎と全肺照射

コロナ禍には、コロナ肺炎に対して様々な治療法が試みられました。
未知の感染症であっただけに治療法も手探りでした。
放射線治療領域でも同様に可能な治療法が無いかが模索され、その一つが全肺照射でした。
以前にこのサイトでも取り上げたことがあるかと思います。
全肺照射はそもそも100年ほど前に行われていた治療で、重症のウイルス・細菌感染に伴う肺炎の改善を期待して行われていました。
おそらくは、放射線照射に伴う抗炎症作用などが症状の改善につながる例もあったのではないかと思います。
ただ、抗生物質や抗ウイルス薬の進歩に伴い、全肺照射はすたれていきました。
そもそも肺全体に放射線を照射することじたいが肺へのダメージを誘発させるため、よほど治療選択肢が限られた状態でなければ勧められない治療だろうと思います。
コロナ肺炎に対する全肺照射の効果

今回は、その全肺照射に関する様々な研究報告をまとめたシステムレビューおよびメタアナリシスの紹介になります。
このレビューでは、全部で10個の研究結果を評価しており、そのうちの5つがメタアナリシスで評価されました。
結果として、全肺照射により、わずかに挿管が不要な期間がのびる傾向が見られましたが、全生存については有意な改善は見られませんでした。
現時点では、中~高リスクのコロナ肺炎に対して、全肺照射は一律に勧めるべきではないと結論付けられています。
ただ、この研究での問題点としては、様々な研究がコロナ禍でなされたことから、治療対象や評価法などに混乱があり、十分に統一されていないという点があります。
このため、一部の事実を見落としている可能性も完全には否定できない点は、念のため注意が必要であると考えます。
まとめ
コロナ禍において、重症肺炎の治療目的に低線量の全肺照射が一部で行われましたが、結果として生存率に対する有意な改善効果は認めないという結論でした。
現時点で、中~重度のコロナ肺炎に、全肺照射は積極的に勧めるべきではないと考えます。
参考文献
Low-Dose Whole Lung Irradiation for Treatment of COVID-19 Pneumonia: A Systematic Review and Meta-Analysis
- PMID: 35537577
- PMCID: PMC9077801
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2022.04.043


















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