放射線治療において前立腺の中の尿道を避ける必要があるのか

目次

1:前立腺癌治療と排尿障害
2:尿道線量は下げるべきなのか?
3:まとめ
4:参考文献

前立腺癌治療と排尿障害

前立腺癌の放射線治療において、おもな副作用は排尿障害になります。

症状としては頻尿や尿の勢いが落ちたり、残尿感、排尿時痛などです。

前立腺癌の治療で、排尿症状が出るのは、前立腺の真ん中を尿道が走行しているためです。

このため、前立腺に放射線を当てると必然的に尿道にも放射線があたるため、尿の症状が出てしまうということになります。

これまでの研究においても、前立腺内の尿道に当たる線量が尿路系の副作用の程度と相関することが報告されています。

尿道線量は下げるべきなのか?

尿道の線量と、排尿障害の程度が相関することは様々な研究で報告されています。

つまり、尿道線量を下げることができれば、前立腺癌治療における副作用の大部分を占める、排尿障害の症状を低減することができます。

では、尿道線量を積極的に下げていくことは必要なのでしょうか?

実は、これは単純に尿道線量を下げれば良いというわけでもないのです。

まず一つの根拠として、尿道の周囲も前立腺組織が存在するわけで、そこにも癌が発生することが報告されています。

つまり、尿道の線量を下げるということは、本来治療すべき領域にも十分に線量を投与できない可能性があり、結果的に副作用は良くなったけれども治療成績が悪くなったという結果になりかねないのです。

二つ目の根拠としては、通常のCTでは前立腺内の尿道を同定することはほぼ不可能であるということです。

尿道じたいは非常に細いため、通常のCTではほぼ描出されません。

見えないものを避けることはできないため、現実的に尿道の線量を下げることができないわけです。

尿道を見えるようにするための方法として、一つは治療の際に尿道にカテーテルを入れる方法があります。

カテーテルはそれなりに太さがあるため、カテーテルを入れているとCTでも尿道が分かります。

ただ、放射線治療のたびに、毎回カテーテルを入れるのか、あるいは入れっぱなしにするのかという問題があり、あまり現実的ではないと思います。

他の方法としてはMRIリニアックを用いるものです。

MRIリニアックは、MRIと放射線治療装置が一緒になったもので、治療の際にMRI画像を撮影できるのが大きなメリットになっています。

MRIであればカテーテルを入れなくても尿道が描出可能です。

ただ、MRIリニアックは特殊な治療装置のため、日本でも現時点で数施設しか所有していません。

まとめ

以上のように、尿道線量の低減には、副作用を減少させるというメリットはあるものの、いくつかの解決すべき課題もあり、現時点で強くお勧めするとは言えないと考えます。

参考文献

Intraprostatic Urethra: The New Kid on the Block for Prostate Cancer Radiation Therapy?

Affiliations

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