放射線感受性を遺伝子検査を利用して評価する

目次

1:放射線感受性と遺伝子検査
2:放射線治療領域における研究
3:将来的な利用について
4:参考文献

放射線感受性と遺伝子検査

自分自身がこの領域に対してそこまで詳しくないので、軽めにふれますが、遺伝子検査を用いて放射線感受性を評価しようという試みがあります。

実際に臨床現場で治療を行っていても、すべての症例で同じように治療をして同じような反応が返ってくるわけではありません。

非常に良く効いたなと思う症例もあれば、いつもより効きが悪いなと感じる症例もあります。

その原因もさまざまで、患者自身の生活習慣(喫煙など)が影響する場合もありますし、腫瘍の局在や、腫瘍内部の性状が影響することもあります。

その他の要因としては遺伝子型も治療成績に影響を及ぼしている可能性があります。

同じ肺癌で、腺癌であったとしても、腫瘍の遺伝子型は非常に細かく分かれます。

遺伝子型が異なれば、その腫瘍に効果的な薬剤も変わってくるため、肺癌領域(主に腺癌)では遺伝子型に関する研究が非常に盛んにおこなわれています。

おそらく放射線治療領域においても、遺伝子型というのは放射線感受性に影響してくる可能性があるのですが、現時点では明確にどのような遺伝子型において、放射線感受性が高いかというのはわかっていません。

放射線治療領域における研究

放射線治療領域における研究を紹介したいと思います。

これは子宮内膜癌において、どのような遺伝子型が放射線感受性に影響を及ぼした可能性があるかを検討したものです。

子宮内膜癌の放射線治療において、腫瘍組織が得られた症例を分析し、その遺伝子型と再発率を検討しています。

ここでは遺伝子型の中でも10個の項目について、それぞれを重みづけして、合計した指標を用いて放射線感受性として評価しています。

(計算式については興味がある方は原文を参照していただければと思います。)

 

将来的な利用について

今回紹介した研究だけでなく、遺伝子型については、他にも様々な機関で研究が行われています。

将来的には、遺伝子型をもとに放射線治療の照射方法を決定するような時代が来る可能性も高いです。

遺伝子型の検査についても、最も正確なのは組織を採取することですが、これは侵襲性も高くすべての症例で可能な方法ではありません。

最近では血液検査から腫瘍の組織型を特定する方法も報告されており、将来的にはより侵襲が少なく検査をすることも可能になると期待できます。

いっぽうで、放射線治療領域は肺癌の薬物療法のようにお金には直接結びつかない領域です。

このため、製薬会社が中心となって潤沢な資金力をもとに研究を進めているというわけでは無いため、薬物療法の研究に比べると遅れをとっている現状があるのではないかと考えています。

また、遺伝子型については人種差が存在する可能性もあるため、できれば日本国内から信頼性のある結果が出てきてほしいところですが、こちらも資金力の面から欧米に比べると遅れていると言わざるを得ないと思います。

しかしながら、遺伝子検査じたいは大きな可能性を持った領域であり、今後の発展には期待しています。

参考文献

Using the Radiosensitivity Index (RSI) to Predict Pelvic Failure in Endometrial Cancer Treated With Adjuvant Radiation Therapy

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