オリゴ転移の過去、現在、未来
目次
1:オリゴ転移とは
2:放射線治療におけるオリゴ転移
3:オリゴ転移研究の今後
4:参考文献
オリゴ転移とは
放射線治療のこの10年ほど、オリゴ転移についての議論が盛んになっています。
オリゴとは少数という意味で、オリゴ転移は少数転移を意味します。
癌治療において、以前から生命予後を規定する大部分は転移であるというのは様々なデータで示されてきました。
このため、転移をいかにコントロールするかというのは癌治療における大きな問題であったわけです。
オリゴ転移の重要性が最初に指摘されたのは外科領域からでした。
転移が存在すると予後が悪いとのはわかっていましたが、その転移を外科切除などでコントロールできれば、生命予後が改善するということがいくつかの研究によって示されたのです。
これ以降、少数転移であるオリゴ転移をいかにコントロールし、治療成績を改善するかということを目標に様々な研究が行われてきました。
放射線治療におけるオリゴ転移
その後、外科治療だけでなく、放射線治療においてもオリゴ転移に関する報告が出始めました。
脳転移以外で、5か所以内の転移を有する症例に対して、5回程度の体幹部定位照射(SBRT)をおこなった場合に、生命予後が改善することが報告されました。
放射線治療は外科治療と比較すると侵襲も少なく、複数個の転移が存在しても、それぞれをピンポイントに治療することが可能です。
言ってみれば、放射線治療はオリゴ転移の治療に最も適している治療法と言えます。
最近では他施設共同のphase II研究であるSABER-COMET研究において、オリゴ転移にSBRTを行った場合、無増悪期間が倍に延長し、全生存期間も13ヶ月延長したことが示されました。
現在も、様々な形でphase IIやphase IIIの試験が進行しています。
オリゴ転移研究の今後
オリゴ転移については、その概念が提唱されてからすでに10年以上が経過していますが、まだまだ十分に解明されていない部分も多い領域です。
どのような疾患においてオリゴ転移の治療がより有効であるのか、遺伝子的な影響がどれほどあるのか、また新しい治療法である免疫療法との組み合わせによる効果はどれほどなのか、など解明すべき点が様々あります。
現在進行中の研究も多く、できるだけ早い時期にこれらの成果が出てくることを期待したいです。
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