転移に対する放射線治療とは?―「もう治らない」ではなく、「戦略的に抑える」時代へ―

がんの「転移」と聞くと、

  • もう治療はできないのでは?

  • 余命が短いのでは?

  • 痛みを取るだけの治療?

このようなイメージを持つ方も少なくありません。

しかし現在、転移に対する放射線治療は大きく進歩しています。

✔ 痛みを取る
✔ 神経症状を改善する
✔ 命に関わる合併症を防ぐ
✔ 条件がそろえば「長期生存」も目指せる

この記事では、転移に対する放射線治療の全体像を、一般の方にも分かりやすく解説します。


転移に対する放射線治療の役割

転移治療の目的は、大きく3つに分けられます。

① 症状を和らげる(緩和的治療)

  • 骨転移による強い痛み

  • 脳転移による麻痺やけいれん

  • 臓器圧迫による呼吸困難や出血

放射線は、短期間で症状を改善できる非常に強力な治療です。

特に骨転移では、1~10回程度の治療で痛みが大きく改善することが多く、生活の質(QOL)を保つうえで重要です。

▶ 詳しくはこちら
【骨転移の放射線治療】

緩和照射?姑息照射?違いは


② 臓器機能を守る(合併症予防)

転移が大きくなると、

  • 脊髄圧迫 → 歩けなくなる

  • 脳圧亢進 → 意識障害

  • 肝機能悪化 → 全身状態低下

といった重大な問題が起きます。

放射線治療は、症状が出る前・出始めの段階で介入することで、機能を守る治療でもあります。


③ 長期コントロールを目指す(根治的アプローチ)

近年注目されているのが、

オリゴ転移(少数転移)

転移が限られた個数(一般に1~5個程度)であれば、
定位放射線治療(SBRT)によって根治を目指す戦略が可能です。

▶ 詳しくはこちら
【オリゴ転移とは?】
【オリゴ転移の分類】

がんは「全身病」と言われますが、
すべての転移が同じスピードで進むわけではありません。

“攻められる転移”を見極める時代に入っています。


転移部位ごとの放射線治療

転移は、臓器によって治療方針が大きく異なります。


脳転移

脳転移は、がんの転移の中でも特に重要です。

  • 頭痛

  • 麻痺

  • けいれん

  • 認知機能低下

などを引き起こします。

現在は、

✔ 定位照射(ピンポイント照射)
✔ 多発転移への戦略的治療

といった選択肢があります。

1~数個の場合

→ 定位放射線治療が第一選択になることが多い

▶ 【脳転移の定位照射】

多発している場合

→ 全脳照射や定位照射の組み合わせを検討

▶ 【多発脳転移の記事へ】

近年は、「認知機能を守る工夫(海馬温存など)」も進歩しています。


骨転移

骨転移は最も頻度が高い転移の一つです。

  • 強い痛み

  • 病的骨折

  • 脊髄圧迫

を起こすことがあります。

放射線治療は、

✔ 痛み改善率 約60~80%
✔ 比較的短期間
✔ 体への負担が少ない

という特徴があります。

▶ 詳細解説
【骨転移の放射線治療】


肝臓転移

肝転移はこれまで「全身治療中心」でしたが、

現在は

✔ 定位放射線治療(SBRT)
✔ 高精度放射線治療

によって局所制御率の高い治療が可能になっています。

特に、

  • 大腸がんの肝転移

  • 限局した再発

では、局所治療の価値が高まっています。

▶ 詳しくはこちら
【肝臓転移の放射線治療】


オリゴ転移という考え方

「転移=末期」ではありません。

転移が少数であれば、

✔ 手術
✔ 放射線治療
✔ 局所治療+全身治療

を組み合わせることで、長期生存が期待できるケースもあります。

この考え方が

オリゴ転移

です。

さらに、

  • 同時性オリゴ転移

  • 異時性オリゴ再発

  • オリゴ進行(oligoprogression)

など、細かな分類があります。

厳密には分類によって予後が変わってきます。

 


転移部位別 放射線治療の目的と特徴まとめ

転移部位主な症状治療目的治療回数目安特徴
脳転移頭痛・麻痺・けいれん神経症状改善・局所制御1~5回(定位)/10回前後認知機能温存の工夫あり
多発脳転移認知機能低下・意識障害症状緩和・進行抑制数回~10回全脳照射+定位併用戦略
骨転移強い痛み・骨折痛みの改善1~10回痛み改善率60~80%
肝転移倦怠感・肝機能低下局所制御・長期生存狙い3~5回SBRTで高制御率
オリゴ転移無症状のことも多い根治的治療1~5回長期生存が期待できる

転移治療で大切な3つの視点

① がんの種類

肺がん、乳がん、大腸がんなどで治療方針は異なります。

② 転移の数と場所

1個か、5個か、10個以上かで戦略は変わります。

③ 全身状態

体力・臓器機能・治療歴も重要です。


放射線治療の費用を解説

放射線治療の副作用まとめ

放射線治療中の食事ガイド

よくある質問(FAQ)

Q1. 転移があると治らないのですか?

一概には言えません。
オリゴ転移では長期生存例もあります。


Q2. 放射線は体に強いダメージがありますか?

高精度治療では正常組織への影響は最小限に抑えられています。
副作用は部位によって異なります。


Q3. 何回くらい通院しますか?

目的によります。

  • 緩和目的 → 1~10回程度

  • 定位照射 → 1~5回程度


Q4. 放射線治療と抗がん剤・免疫療法は一緒にできますか?

多くの場合、併用可能です。
特に近年は、

・免疫療法+放射線
・分子標的薬+局所照射
・オリゴ進行に対する局所照射

など、「全身治療を続けながら一部の転移だけを叩く」戦略が広がっています。

ただし薬剤によっては副作用が強くなる可能性があるため、治療タイミングの調整が重要です。


Q5. 高齢でも放射線治療は受けられますか?

多くの場合、可能です。

放射線治療は

・体への負担が比較的少ない
・通院治療が可能
・短期間で終わることも多い

という特徴があり、高齢の方にも適した治療選択肢です。

実年齢よりも「全身状態」が重要になります。


Q6. 放射線治療をすると他の治療ができなくなりますか?

通常はそのようなことはありません。

むしろ、

・症状を改善して全身治療を継続できる
・局所を抑えて薬の効果を長持ちさせる

というメリットがあります。

治療は「排他的」ではなく、「組み合わせる」時代です。


Q7. 転移が増えてからでも放射線は意味がありますか?

はい、あります。

転移が多発していても、

・強い痛みのある部位
・神経症状を起こしている部位
・生命に関わる部位

に対しては放射線治療が非常に有効です。

「治らないから意味がない」ということはありません。


Q8. オリゴ転移かどうかはどうやって判断しますか?

画像検査(CT・MRI・PET)により転移数を評価し、

・原発巣が制御されているか
・他に隠れた転移がないか
・全身状態が保たれているか

などを総合的に判断します。

専門施設での評価が重要になります。

まとめ

転移に対する放射線治療は、

✔ 痛みを取る治療
✔ 機能を守る治療
✔ 条件次第で根治を目指す治療

という多面的な役割を持っています。

転移=終わりではありません。

正確な情報を知り、
適切な治療選択を行うことが重要です。

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