高リスク前立腺癌に対して手術を勧めるのは正しいのか?①
解説
今回の記事は完全に個人の見解という形にはなるのだが、高リスク前立腺癌の話題である。
最近、高リスク前立腺癌に対して手術を受け、その後再発したために放射線治療をお願いしますという方が何件か立て続けに来たために気になったので書いてみる。
そもそも前立腺癌はそのリスクによって治療法が分けられる。
リスクは前立腺癌のステージや病理検査の結果、PSAなどから総合的に判断されるものである。
リスクは低リスク、中リスク、高リスクに分けられ、もちろん低リスクのほうが治りやすく、生存期間も長いというものである。
上の図は低リスク前立腺癌における手術や放射線治療などの様々な治療法の治療成績を示したものである。
簡単に言うと赤丸は手術、青丸は小線源治療あるいは小線源治療+放射線治療(体外照射)、緑丸は放射線治療(体外照射)、黄色は陽子線治療である。
横軸は治療後年数であり、通常はだんだんと右下へ下がっていくことになる。
縦軸は治療の奏効率で、上にあるほうが優れた治療法ということになる。
これで見るとそれぞれの治療法で大きな治療成績の差はないことがわかる。
実際の日常診療においても、低リスク前立腺癌ではいずれの治療法を選択しても問題はないし、こちらも特にどれかを優先してお勧めすることはない。
次に示すのは中リスク前立腺癌における治療成績である。
これを見ると手術(赤丸)や体外照射単独(緑丸)が先ほどよりも治療成績が低下していることがわかる。
いっぽう小線源治療(青丸)については良好な治療成績を示している。
放射線治療に関して言うと、体外照射単独よりもホルモン治療と組み合わせたほうが治療成績は良好である。
この図からは中リスク前立腺癌については小線源治療を組み合わせた治療がおすすめであり、放射線治療を行う場合でも可能であればホルモン治療を組み合わせたほうが良いと言える。
いっぽうで、手術については積極的に勧めるとはいいがたい結果ではないかと考える。
以上が中リスク前立腺癌についての話である。
それでは高リスク前立腺癌についてはどうか。
手術の治療成績はさらに低下している。この図によると10年で30-60%程度の奏効率となっている。
放射線治療(体外照射)は緑丸、放射線治療+ホルモン治療は黒丸である。手術に比べると治療成績は良好である。
これよりも治療成績が良いのは青丸で、小線源治療や、小線源治療+体外照射になる。
このサイトは図中にも表記されているが、prostatecancerfree.orgというサイトで、誰でもアクセス可能である。(この記事の下部にリンクあり)
このサイトでは過去の信頼性の高い大規模試験の結果をもとに図を作成しており結果についての信頼性も十分にあると考えられる。
高リスク前立腺癌の治療成績を参照するに、手術を選択するというのはあまりお勧めできないのではないかと個人的には考える。
その一方で最近、高リスク前立腺癌の手術後症例をよく経験するというのはどういうわけだろうか。
長くなってきたので、次回に続く。
参考文献
https://www.prostatecancerfree.org/
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