放射線肺炎とは?症状・発症時期・治療を放射線治療専門医が解説

放射線治療のあと、咳が出たり息苦しくなったら大丈夫でしょうか?

放射線肺炎という副作用の可能性があります。
ただし多くは軽症で、適切に治療すれば改善することが多いですよ。
放射線治療はがん治療において重要な治療法ですが、肺に放射線が当たる場合、放射線肺炎という副作用が起こることがあります。
特に次のような治療で起こる可能性があります。
- 肺がんの放射線治療
- 乳がんの放射線治療(左乳房など)
- 食道がんの放射線治療
- 縦隔リンパ節への放射線治療
ただし、重症になるケースは多くありません。
早期に気づき、適切に治療すれば改善することがほとんどです。
この記事では、放射線治療専門医の立場から
- 放射線肺炎の症状
- 発症時期
- 治療方法
- 注意すべきサイン
を、国際的なガイドラインや研究に基づいて解説します。
💡放射線治療の副作用の全体像はこちら
放射線肺炎とは
放射線肺炎(radiation pneumonitis)とは、
放射線によって肺に炎症が起こる副作用
です。
放射線はがん細胞だけでなく、周囲の正常組織にも影響するため、肺に照射が及ぶ場合、炎症が起こることがあります。
国際的には
- ASTRO(米国放射線腫瘍学会)
- ESMO(欧州腫瘍学会)
- NCCNガイドライン
などでも重要な副作用として解説されています。
参考
ASTRO
https://www.astro.org/
発症する時期

放射線治療が終わってすぐに肺炎になるんですか?

多くは治療後1〜3か月ごろです。
少し時間がたってから症状が出るのが特徴ですね。
放射線肺炎は、通常
放射線治療後1〜6か月
に起こります。
典型的な発症時期
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 治療直後 | ほぼ起こらない |
| 1〜3か月 | 発症が多い |
| 3〜6か月 | やや遅れて発症する場合 |
| 6か月以降 | 通常は少ない |
その後、炎症が治ったあとに
放射線肺線維症
という変化が残ることがあります。
いつまで注意する必要がある?
放射線肺炎の多くは、放射線治療後1〜6か月以内に発症します。
そのため一般的には、治療後半年程度は症状に注意することが重要とされています。
特に次の時期は注意が必要です。
- 治療後1〜3か月(最も多い発症時期)
- 治療後3〜6か月(遅れて発症するケース)
ただし、まれではありますが
- 免疫療法を併用している場合
- 肺の被ばくが多い治療
では、6か月以降に症状が出ることもあります。
そのため、
- 咳が続く
- 息切れが悪化する
- 微熱が続く
といった症状がある場合は、放射線治療から時間が経っていても主治医へ相談することが大切です。
関連記事
放射線治療後に起こるさまざまな晩期副作用については、以下の記事でまとめて解説しています。
主な症状

風邪みたいな症状でも放射線肺炎のことがありますか?

あります。咳や息切れ、微熱などは似ているので、気になる場合は主治医に相談することが大切です。
放射線肺炎の症状は、風邪や肺炎と似ています。
主な症状
- 咳
- 息切れ
- 微熱
- 呼吸が苦しい
- 胸の違和感
- 疲れやすい
軽症の場合は
症状がほとんど出ない
こともあります。
放射線肺炎の重症度(CTCAE分類)
医療現場では、放射線肺炎の重症度は
CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)という国際基準で分類されます。
| グレード | 状態 |
|---|---|
| Grade1 | 画像のみの変化、症状なし |
| Grade2 | 咳や息切れがあり治療が必要 |
| Grade3 | 酸素投与が必要 |
| Grade4 | 生命に関わる重症状態 |
| Grade5 | 死亡 |
多くの放射線肺炎は
Grade1〜2の軽症
です。
Grade3以上はまれですが、入院治療が必要になることがあります。
参考
National Cancer Institute
https://ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/ctc.htm
放射線肺炎の頻度
研究によって差がありますが、一般的には
10〜20%程度
とされています。
ただし、
治療技術の進歩によって減少しています。
特に
- IMRT
- SBRT
- 画像誘導放射線治療
などにより、正常肺の被ばくを減らせるようになっています。
参考研究
Graham MV et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1999
放射線肺炎のリスク因子
研究で知られている主なリスク因子
肺に当たる放射線量
特に重要なのが
V20
という指標です。
これは
肺の20Gy以上の被ばく体積
を意味します。
V20が高いほど
放射線肺炎のリスクが上がります
患者側の要因
- 高齢
- 喫煙歴
- COPD
- 既存の肺疾患
薬物治療
特に
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 一部の抗がん剤
と併用すると
肺炎リスクが上がる場合があります
放射線肺炎に注意が必要ながん治療
放射線肺炎は、肺に放射線が当たる治療で起こる可能性があります。
そのため、がんの種類によってリスクは異なります。
ここでは、特に放射線肺炎に注意が必要な治療を紹介します。
肺がんの放射線治療
最も放射線肺炎が起こりやすい治療の一つです。
理由は
肺そのものに放射線を当てるため
です。
特に
- 局所進行肺がんの化学放射線療法
- 広範囲の照射
- 両側肺への被ばく
では、肺炎のリスクが高くなることがあります。
食道がんの放射線治療
食道は胸の中央にあるため、放射線治療では
周囲の肺に一定量の放射線が当たります。
そのため
- 咳
- 息切れ
などの症状に注意が必要です。
乳がんの放射線治療
乳がんの放射線治療でも、肺の一部に放射線が当たります。
特に
左乳房の放射線治療
では
- 肺
- 心臓
への被ばくを減らす工夫が行われています。
現在は
- 深吸気息止め照射(DIBH)
- IMRT
などの技術により、肺への影響は大きく減っています。
縦隔リンパ節への放射線治療
次のようながんでは
縦隔リンパ節
へ放射線を当てることがあります。
- 肺がん
- 食道がん
- 悪性リンパ腫
この場合も
周囲の肺が照射野に入る
ため、放射線肺炎のリスクがあります。
免疫療法を併用する治療
近年は、放射線治療と
免疫チェックポイント阻害薬
を併用する治療が増えています。
代表例
- ニボルマブ
- ペムブロリズマブ
これらの薬剤は
免疫関連肺炎
を起こすことがあるため、
放射線肺炎との鑑別が重要になります。

私は乳がんの放射線治療ですが、
肺炎の心配はありますか?

肺の一部に放射線が当たることはありますが、現在は技術が進歩しており、肺への影響はできるだけ少なくなるよう計画されています。
放射線肺炎を防ぐための線量制約
放射線治療では、肺への被ばくを減らすために
線量制約(dose constraints)が設定されています。
代表的な指標
V20
肺のうち
20Gy以上の放射線が当たる体積割合
一般的な目安
V20
35%以下
平均肺線量(Mean Lung Dose)
肺全体の平均線量です。
目安
20Gy未満
V5
低線量被ばくの指標です。
IMRTでは
V5が高いと肺炎リスクが増える
とする研究があります。
診断
診断には
CT検査
放射線が当たった範囲に
- すりガラス影
- 浸潤影
が見られます。
特徴として
照射野と一致する
ことが多いです。
鑑別が必要な病気
- 細菌性肺炎
- ウイルス肺炎
- 薬剤性肺炎
- がんの進行
そのため
医師による慎重な判断が必要です。
放射線肺炎のCT画像の特徴
CT検査では、次のような所見が見られます。
主な画像所見
- すりガラス影(ground glass opacity)
- 浸潤影
- コンソリデーション
- 線維化
特徴的なのは
放射線照射野に一致した分布
です。
これは
感染性肺炎との鑑別
に重要なポイントになります。
照射野を超えて炎症が広がることもある(臨床現場での経験)

放射線が当たった場所だけに肺炎が出るんですか?

多くはそうですが、実際の診療では照射範囲を超えて炎症が広がるケースもあります。
CTだけでなく治療内容や時期も合わせて判断します。
教科書的には、放射線肺炎は
「放射線照射野に一致して炎症が起こる」
と説明されることが多いです。
しかし、実際の臨床では、炎症の陰影が照射野を超えて広がるケースも少なくありません。
例えば、
- 照射野周囲に炎症が拡大する
- 両側肺に炎症が広がる
- びまん性のすりガラス影として出現する
といったパターンがみられることがあります。
これは、放射線による局所の炎症に加えて、
- 免疫反応
- 炎症性サイトカインの影響
などが関与している可能性が指摘されています。
そのため、CT画像で照射野と完全に一致しないからといって、必ずしも放射線肺炎を否定できるわけではありません。
実際の診療では、
- 放射線治療の照射範囲
- 発症時期
- 症状
- 他の肺炎の可能性
などを総合的に評価して診断が行われます。
治療

放射線肺炎になったら治るんでしょうか?

多くの場合、ステロイド治療で改善します。
早めに診断して治療することが大切です。
症状の強さによって治療が決まります。
軽症
経過観察
自然に改善することも多いです。
中等症〜重症
ステロイド治療
が行われます。
代表的には
- プレドニゾロン
などが使用されます。
炎症を抑えることで
多くの患者さんで改善します。
免疫療法と放射線肺炎
近年、がん治療では
免疫チェックポイント阻害薬
が広く使われています。
代表例
- ニボルマブ
- ペムブロリズマブ
これらの薬剤は
免疫関連肺炎
を起こすことがあります。
そのため
放射線治療後に肺炎が起きた場合
- 放射線肺炎
- 免疫関連肺炎
の鑑別が重要になります。
参考研究
Journal of Clinical Oncology
放射線肺炎の予後
放射線肺炎の多くは
適切な治療で改善します。
研究では
- 多くが軽症
- ステロイド治療で改善
とされています。
ただし重症例では
- 長期の呼吸機能低下
- 肺線維症
が残ることもあります。
そのため
早期発見と早期治療
が重要です。
予防

放射線肺炎を完全に防ぐことはできますか?

完全にゼロにはできませんが、治療計画で肺への被ばくをできるだけ減らす工夫がされています。
完全な予防は難しいですが、
次の方法でリスクを減らせます。
放射線治療計画の最適化
- IMRT
- SBRT
- 呼吸同期照射
などにより
肺の被ばくを減らします
喫煙を控える
喫煙は
肺機能を低下させる
ためリスクを上げます。
すぐに医師へ相談すべき症状
次の症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
- 息苦しさが強い
- 咳が続く
- 発熱
- 呼吸が苦しい
- 酸素が低い
早期治療が重要です。

放射線肺炎って聞くと、少し怖い気がします…。

確かに注意すべき副作用ですが、重症になるケースは多くありません。
症状に早く気づくことが一番大切です。
専門医コメント
放射線肺炎は、放射線治療の代表的な副作用の一つですが、実際には重症になるケースは多くありません。
現在の放射線治療では、IMRTや高精度治療によって正常肺の被ばくをできるだけ減らすように計画されています。
また、もし放射線肺炎が起きた場合でも、ステロイド治療などで改善することが多い副作用です。
大切なのは
- 咳
- 息切れ
- 微熱
などの症状に早く気づくことです。
放射線治療後に気になる症状があれば、遠慮せず主治医へ相談してください。
まとめ
放射線肺炎のポイント
- 放射線による肺の炎症
- 多くは治療後1〜6か月に発症
- 症状は咳・息切れ・微熱など
- 重症例は多くない
- ステロイド治療で改善することが多い
早期発見と適切な治療が重要です。
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FAQ(よくある質問)
放射線肺炎とは何ですか
放射線治療によって肺に炎症が起こる副作用です。通常は治療後1〜6か月で発症します。
放射線肺炎はどのくらいの頻度で起こりますか
一般的には約10〜20%程度とされています。
放射線肺炎の症状は何ですか
咳、息切れ、微熱、呼吸困難などです。
放射線肺炎は治りますか
多くの患者で改善します。ステロイド治療が有効なことが多いです。
放射線肺炎はいつ起こりますか
放射線治療後1〜6か月で発症することが多いです。
放射線肺炎は命に関わりますか
重症例はまれですが、重い場合は入院治療が必要になることがあります。
放射線肺炎と感染症はどう違いますか
CT所見や臨床経過から医師が総合的に判断します。
放射線肺炎は予防できますか
完全な予防は難しいですが、放射線治療計画の工夫でリスクを減らすことができます。
放射線肺炎が起きたら放射線治療は中止になりますか
多くの場合、治療終了後に発症するため中止にはなりません。
放射線肺炎の後遺症はありますか
炎症が治ったあと、肺線維症が残ることがあります。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。
























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