放射線治療による認知機能障害|原因・症状・予防と対策を専門医が解説

放射線治療のあと、物忘れが増えるって聞いたのですが…本当ですか?

脳に放射線を当てる治療では、まれに記憶力や集中力に影響が出ることがあります。ただし、最近は認知機能を守る治療法も増えてきています。
放射線治療は多くのがんに有効な治療ですが、治療部位や照射範囲によっては認知機能(記憶・注意・思考力など)に影響が出ることがあります。
特に脳腫瘍や脳転移に対する放射線治療では、治療後に「物忘れが増えた」「集中力が続かない」といった症状が出ることがあります。
この記事では、
- 放射線治療による認知機能障害の原因
- どのくらいの頻度で起こるのか
- 予防方法(海馬回避照射など)
- 症状が出た場合の対処
について、国際的ガイドラインや最新研究に基づきわかりやすく解説します。
関連記事
放射線治療では、さまざまな神経症状が起こる可能性があります。
しびれ・痛み・頭痛・めまいなどの症状の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。
放射線治療の副作用全体について
放射線治療ではさまざまな副作用が起こる可能性があります。
副作用の全体像については、以下の記事で詳しくまとめています。
- 1. 放射線治療による認知機能障害とは
- 2. なぜ放射線治療で認知機能が低下するのか
- 3. どのような治療で起こりやすい?
- 4. 認知機能低下が「腫瘍の増悪」で起こる場合もある
- 5. 認知機能障害のリスクが高い患者さん
- 6. どのくらいの頻度で起こる?
- 7. 最新の予防法|海馬回避照射
- 8. 認知機能低下を防ぐ薬
- 9. 症状はいつ出る?
- 10. 放射線治療による認知機能障害は改善する?
- 11. 家族が気づきやすい認知機能障害のサイン
- 12. 放射線治療による認知機能障害は日常生活にどの程度影響する?
- 13. 放射線治療後の認知機能はどのように評価する?
- 14. 症状が出た場合の対処
- 15. 生活習慣の工夫も認知機能の維持に役立つ
- 16. 国際ガイドラインの位置づけ
- 17. 専門医コメント
- 18. まとめ
- 19. FAQ(よくある質問)
- 20. 放射線治療の総合ガイド
- 21. この記事の執筆者
放射線治療による認知機能障害とは

認知機能障害って、
具体的にはどんな症状ですか?

物忘れ、集中力の低下、考えるスピードが遅くなるなどです。
日常生活ではメモを忘れやすいなどの形で気づくこともあります。
認知機能障害とは、以下のような脳の働きの低下を指します。
主な症状
- 物忘れが増える(記憶力低下)
- 集中力が続かない
- 思考速度が遅くなる
- 計画や判断が難しくなる
- 注意力の低下
これらはまとめて
radiation-induced cognitive impairment
(放射線誘発認知機能障害)
と呼ばれます。
なぜ放射線治療で認知機能が低下するのか

どうして放射線で物忘れが起こるんですか?

記憶に関係する海馬という脳の部分が影響を受けることがあるからです。そのため最近は海馬を避ける放射線治療も行われています。
主な原因は以下の3つです。
脳の神経細胞のダメージ
放射線はがん細胞だけでなく、周囲の正常な神経細胞にも影響を与えることがあります。
特に影響を受けやすいのが
海馬(hippocampus)
という脳の記憶に関わる部分です。
神経新生の低下
海馬では
新しい神経細胞が作られる(神経新生)
ことが知られています。
放射線はこの神経新生を低下させる可能性があります。
脳の血管や炎症の影響
放射線によって
- 微小血管障害
- 慢性炎症
- 白質障害
が起こると、神経ネットワークの働きが低下し、認知機能に影響することがあります。
どのような治療で起こりやすい?
特に関連が強いのは以下です。
全脳照射(WBRT)
脳転移の治療で行われる
全脳照射(Whole Brain Radiotherapy)
では認知機能低下のリスクがあります。
→脳転移に対する全脳照射についてはこちらの記事で解説しています。
脳腫瘍の放射線治療
- 神経膠腫
- 髄芽腫
- 小児脳腫瘍
などでも認知機能への影響が問題になることがあります。
認知機能低下が「腫瘍の増悪」で起こる場合もある

物忘れが出たら、
全部副作用なんですか?

そうとは限りません。
腫瘍の再発や増大によって認知機能が低下する場合もあります。
そのため画像検査で確認することが大切です。
放射線治療後に認知機能低下がみられた場合、必ずしも放射線治療の副作用とは限りません。
特に脳腫瘍や脳転移では、
腫瘍の増大(再発・増悪)によって認知機能障害が起こる
ことがあります。
腫瘍が大きくなると、
- 脳の圧迫
- 脳浮腫(脳のむくみ)
- 神経ネットワークの障害
などが起こり、次のような症状が現れることがあります。
主な症状
- 物忘れ
- 判断力低下
- 注意力低下
- 性格変化
- 意欲低下
これらは放射線治療の副作用による認知機能低下と似た症状になることがあります。
そのため、症状が出た場合には
- MRIなどの画像検査
- 神経学的評価
を行い、腫瘍の状態を確認することが重要です。
脳転移による認知機能障害
脳転移では、腫瘍の位置や大きさによって認知機能障害が初発症状として現れることがあります。
特に
- 前頭葉
- 側頭葉
- 海馬周囲
に病変がある場合、
- 記憶力低下
- 判断力低下
- 行動変化
などが起こることがあります。
脳転移による症状については、以下の記事で詳しく解説しています。
認知機能障害のリスクが高い患者さん
すべての患者さんに同じリスクがあるわけではありません。
以下の条件ではリスクが高くなる可能性があります。
高齢
加齢により脳の予備力が低下するため、認知機能への影響が出やすくなります。
全脳照射
局所照射よりも全脳照射でリスクが高いとされています。
高線量照射
脳への照射線量が高いほどリスクは上昇します。
小児
成長期の脳では
- 学習能力
- 知能発達
への影響が問題になることがあります。
どのくらいの頻度で起こる?
研究によって差はありますが、
全脳照射後
約30〜60%
で認知機能低下が報告されています。
最新の予防法|海馬回避照射

海馬を避ける治療って、
本当にできるんですか?

はい。最新の放射線治療では、海馬への線量を減らす照射方法があり、認知機能低下を減らせる可能性が示されています。
現在、国際的に注目されている方法が
海馬回避全脳照射(Hippocampal Avoidance WBRT:HA-WBRT)
です。
これは
記憶を司る海馬への線量を減らす技術
です。
代表的研究
NRG Oncology CC001 trial
この研究では
- 海馬回避WBRT
- 通常WBRT
を比較し、
認知機能低下が有意に減少
することが示されました。
参考
NRG Oncology CC001 trial
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.19.02767
海馬回避照射のデメリット|回避領域での転移リスク
海馬回避全脳照射は認知機能を保護する目的で行われる治療ですが、いくつかの注意点も報告されています。
その一つが
海馬周囲に転移が発生するリスク
です。
海馬回避照射では、記憶機能を守るために海馬周囲の脳領域への放射線量を意図的に低く設定します。
そのため理論的には、この領域に
- 新たな脳転移が出現する
- 既存の微小転移が増大する
可能性が指摘されています。
実際に、いくつかの研究では
海馬周囲領域(perihippocampal region)での再発
が報告されています。
ただし重要な点として、これまでの多くの研究では
海馬周囲に転移が発生する頻度はもともと非常に低い
ことが示されています。
代表的な解析では、海馬周囲5mm以内に発生する脳転移は
約2〜5%程度
と報告されています。
参考文献
Gondi V, et al.
Avoiding the hippocampus during whole-brain radiotherapy.
J Clin Oncol.
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2010.34.5027
そのため現在の臨床では、
- 転移数
- 腫瘍の分布
- 予後
などを考慮しながら、
認知機能保護のメリットと腫瘍制御のバランス
を評価して治療法を選択します。

海馬を避けると、治療効果は下がらないんですか?

理論的には、その部分に転移が出る可能性はあります。
ただし海馬周囲に転移ができる頻度はもともと低いと報告されています。
海馬回避全脳照射は日本では保険適応ではない
認知機能低下を抑える方法として注目されている海馬回避全脳照射ですが、
日本では現時点で明確な保険適応としては収載されていません。
この治療は、通常の全脳照射に対して
- IMRT(強度変調放射線治療)
- VMAT
などの高精度放射線治療技術を用いて、記憶に関係する海馬への放射線量を低減する方法です。
しかし日本の診療報酬制度では、HA-WBRTという治療名での診療報酬区分は存在していません。
そのため実際の診療では、
- IMRTとして算定
- 通常の全脳照射として実施
など、施設ごとに運用が異なることがあります。
2026年度診療報酬改定でも保険収載の可能性は高くないと考えられる
海馬回避全脳照射は、海外では臨床試験により認知機能保護の効果が示されており、国際的には重要な治療戦略とされています。
代表的な研究として
NRG-CC001試験
では、海馬回避照射により認知機能低下のリスクが有意に減少することが報告されています。
参考
Brown PD, et al.
Hippocampal Avoidance During Whole-Brain Radiotherapy
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.19.02767
しかし、日本の診療報酬制度では新しい医療技術が保険収載されるまでに
- 医療技術評価
- 国内での普及状況
- 実施体制
などの検討が必要です。
公開されている資料を見る限り、2026年度診療報酬改定でHA-WBRTが新規収載される可能性は高くないと考えられています。
実施できる施設は限られている
海馬回避照射を行うためには、以下のような条件が必要になります。
- 高精度放射線治療装置(IMRT・VMAT)
- MRI画像を用いた精密な治療計画
- 海馬の正確な輪郭作成
- 高度な治療計画技術
そのため現在の日本では、主に専門的ながんセンターや大学病院など、限られた施設で実施されている治療となっています。
今後、放射線治療技術の普及や制度整備が進めば、より多くの施設で実施される可能性があります。
認知機能低下を防ぐ薬
現在、予防薬として注目されているのが
メマンチン(memantine)
です。
アルツハイマー病の治療薬ですが、
全脳照射時の認知機能低下を抑制
する可能性が報告されています。
代表研究
RTOG 0614 trial
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2012.44.2683

薬で予防することもできるんですか?

メマンチンという薬が研究されています。
ただ、日本では全脳照射の予防としては保険適応ではありません。
メマンチンは日本で保険適応がある?
全脳照射(WBRT)による認知機能低下を予防する目的で、メマンチン(memantine)の使用が海外では検討されています。
しかし、日本ではこの用途での保険適応は認められていません。
現在、日本で承認されているメマンチンの効能・効果は
「中等度および高度アルツハイマー型認知症における症状の進行抑制」
のみです。
そのため、
全脳照射時の認知機能低下予防としての使用は適応外使用(off-label use)
となります。
参考
厚生労働省 医薬品添付文書
https://www.pmda.go.jp/
海外ガイドラインでの位置づけ
海外では、以下の臨床試験によりメマンチンの有効性が検討されています。
RTOG 0614試験
この第III相試験では、
- 全脳照射+メマンチン
- 全脳照射+プラセボ
を比較し、認知機能低下の遅延が示されました。
参考
Brown PD, et al.
Memantine for the prevention of cognitive dysfunction in patients receiving WBRT
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2012.44.2683
そのため
- ASTRO
- NCCN
などの海外ガイドラインでは、
全脳照射時のメマンチン使用を推奨する場合があります。
日本での実臨床
日本では
- 保険適応がない
- 適応外使用となる
という理由から、一般的に 通常の全脳照射で使用されることは多くありません。
また近年は
- 定位放射線治療(SRS)
- 海馬回避全脳照射
などの治療法が普及しており、認知機能を保護する放射線治療技術の進歩も進んでいます。
そのため現在は
患者さんごとに治療方法を検討しながら、認知機能への影響を最小限にする戦略
が取られています。
症状はいつ出る?

もし副作用が出るとしたら、いつ頃ですか?

治療後数週間〜数か月で出ることがあります。
認知機能障害にはいくつかのタイプがあります。
急性期
治療中〜数週間
- ぼんやりする
- 集中力低下
亜急性期
1〜6か月
- 記憶力低下
- 注意力低下
晩期障害
6か月〜数年
- 認知症様症状
- 思考速度低下
関連記事
放射線治療後に起こるさまざまな晩期副作用については、以下の記事でまとめて解説しています。
放射線治療後に起こる可能性のある後遺症の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。
▶ 放射線治療後の後遺症まとめ|長期に残る症状を専門医が解説
放射線治療による認知機能障害は改善する?

もし認知機能障害が出てしまったら、
元に戻ることはあるのでしょうか?

原因や出現する時期によって違います。
一時的に改善する場合もあれば、長く続く場合もあります。
放射線治療後に認知機能障害が出た場合、
症状が改善するかどうかは原因や発症時期によって異なります。
大きく分けると、次のような経過が考えられます。
- 一時的に低下し、その後改善する
- 徐々に回復する
- 長期間持続する
- 徐々に進行する
この違いは、急性期・亜急性期・晩期といった副作用のタイプによって異なります。
一時的に起こる認知機能低下は改善することもある

治療後に少し物忘れが増えた気がするのですが、
これはずっと続くのでしょうか?

放射線治療のあと、数週間〜数か月の時期に起こる症状は、一時的な変化で回復することもあります。
放射線治療後、数週間〜数か月以内に出現する認知機能低下は、
比較的一時的な変化であることもあります。
この時期には、
- 脳の炎症反応
- 脳浮腫
- 神経細胞の一時的な機能低下
などが関与していると考えられており、これらが落ち着くことで症状が改善するケースもあります。
そのため、
- 「最近少し物忘れが増えた」
- 「集中力が落ちている気がする」
といった症状が出ても、時間とともに回復する場合もあります。
晩期に出現した認知機能障害は改善が難しいこともある

では、時間がたってから出る症状はどうなのでしょうか?

半年〜数年後に出る晩期の認知機能障害は、
改善が難しく長く続くこともあると考えられています。
一方で、治療から半年〜数年後に出現する認知機能障害は、
長期間持続する可能性があります。
晩期の放射線障害では、
- 白質障害
- 血管障害
- 神経細胞のダメージ
などが関与すると考えられており、これらは完全に元に戻らないこともあります。
そのため臨床的には、
「発症してしまうと改善が難しい場合もある」
と考えられています。
家族が気づきやすい認知機能障害のサイン

最近、同じことを何度も聞くようになった気がします…

認知機能の変化は、ご本人より家族が先に気づくこともあります。
気になる変化があれば主治医に相談することが大切です。
認知機能の変化は、本人よりも家族が先に気づくことも少なくありません。
特に脳転移の治療後には、物忘れだけでなく、注意力・判断力・行動の変化として現れることがあります。
そのため、次のような変化が見られた場合には注意が必要です。
同じことを何度も聞く
最近の出来事を覚えていられず、
- 同じ質問を何度もする
- さっき話した内容を忘れてしまう
といった変化が見られることがあります。
会話の理解が難しくなる
会話の流れについていけず、
- 話の内容を理解するのに時間がかかる
- 会話の途中で内容を忘れてしまう
といった様子がみられることがあります。
判断力が低下する
認知機能が低下すると、日常生活の判断が難しくなることがあります。
例えば
- 予定を立てるのが難しい
- 複数のことを同時に考えられない
- 簡単な判断に時間がかかる
といった変化がみられる場合があります。
性格や行動が変わる
認知機能障害では、性格や行動の変化として現れることもあります。
例えば
- 意欲が低下する
- 以前より無関心になる
- 怒りっぽくなる
といった変化が見られることがあります。
気になる変化があれば主治医に相談を
こうした変化が見られた場合でも、
必ずしも放射線治療の副作用とは限りません。
実際には
- 脳転移の増悪
- 脳浮腫
- 薬剤の影響
などが原因となっていることもあります。
そのため、
「最近様子が変わった」
と家族が感じた場合には、早めに主治医へ相談することが大切です。
放射線治療による認知機能障害は日常生活にどの程度影響する?
認知機能障害の程度は患者さんによって異なりますが、多くの場合は軽度の変化にとどまります。
よくある影響としては次のようなものがあります。
仕事への影響
以下のような変化を感じることがあります。
- 集中力が続きにくい
- 作業スピードが遅くなる
- マルチタスクが難しくなる
ただし、多くの患者さんは適切な休息や環境調整で仕事を続けることが可能です。
家事や日常生活
日常生活では
- 物の置き場所を忘れる
- スケジュール管理が難しい
などが見られることがあります。
そのため
- メモ
- スマートフォンのリマインダー
- 家族のサポート
などが役立つことがあります。
車の運転
軽度の認知機能低下では運転可能なことが多いですが、
- 注意力低下
- 反応速度低下
がある場合は注意が必要です。
心配な場合は主治医に相談しましょう。
放射線治療後の認知機能はどのように評価する?
認知機能障害が疑われる場合、以下のような検査が行われることがあります。
神経心理検査
認知機能を詳しく評価する検査です。
代表的なもの
- MMSE(Mini Mental State Examination)
- MoCA(Montreal Cognitive Assessment)
これらの検査により
- 記憶
- 注意
- 言語
- 遂行機能
などを評価します。
画像検査
必要に応じて
- MRI
- CT
などを行い、
- 腫瘍再発
- 放射線壊死
- 脳萎縮
などを確認します。
症状が出た場合の対処

もし物忘れが出てきたら、どうすればいいですか?

まず主治医に相談してください。
必要に応じてMRIや認知機能検査を行い、
原因を確認します。
以下の対策が行われます。
リハビリテーション
認知リハビリテーション
- 記憶トレーニング
- 注意訓練
薬物療法
場合により
- メマンチン
- 中枢刺激薬
などが検討されます。
生活習慣
脳機能を保つため
- 運動
- 睡眠
- 社会活動
も重要です。
生活習慣の工夫も認知機能の維持に役立つ

認知機能が落ちてきた場合、
日常生活でできることはありますか?

生活習慣を整えることも大切です。
睡眠・運動・脳を使う活動などが、
認知機能の維持に役立つと考えられています。
放射線治療後に認知機能の低下がみられる場合、
日常生活の習慣を整えることも重要な対処法の一つです。
生活習慣そのものが認知機能を直接改善する治療ではありませんが、
- 脳の働きを保つ
- 認知機能の低下を悪化させない
- 日常生活の困りごとを減らす
といった点で役立つことがあります。
ここでは、日常生活で意識したいポイントを紹介します。
規則正しい生活リズムを保つ

最近、昼夜逆転してしまうことがあるのですが、影響はありますか?

睡眠の乱れは集中力や記憶力にも影響します。
できるだけ規則正しい生活リズムを保つことが大切です。
睡眠不足や昼夜逆転は、認知機能をさらに低下させる原因になることがあります。
特に脳の回復には、十分な睡眠が重要です。
そのため、
- 毎日できるだけ同じ時間に寝る・起きる
- 昼寝を長時間とりすぎない
- 朝に日光を浴びる
といった生活リズムを意識することが勧められます。
軽い運動を続ける

体力が落ちていて、運動は難しい気がします…

激しい運動は必要ありません。
散歩やストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことが勧められます。
適度な運動は、脳の血流を改善し、認知機能の維持に役立つ可能性があるとされています。
特別な運動をする必要はなく、
- 散歩
- 軽いストレッチ
- 体操
など、無理のない範囲で体を動かす習慣が大切です。
体力の維持にもつながり、日常生活の活動性を保つことにも役立ちます。
脳を使う活動を続ける

脳の働きを保つために、
何かした方がいいことはありますか?

会話や読書、趣味などで脳を使うことも大切です。
人との交流も認知機能の維持に役立つとされています。
脳は使わない状態が続くと、認知機能が低下しやすくなると考えられています。
そのため、
- 会話をする
- 読書をする
- パズルや計算などの軽い頭の体操をする
- 趣味を続ける
といった脳を使う活動を続けることも重要です。
特に、家族や友人との会話などの社会的な交流は、認知機能の維持に役立つとされています。
メモやスマートフォンを活用する

物忘れが増えてきたときは、
どう対処すればいいですか?

メモやスマートフォンのリマインダーを使うなど、
生活の工夫で困りごとを減らすことも大切です。
物忘れが増えた場合には、生活の工夫で困りごとを減らすことも大切です。
例えば、
- メモをとる
- カレンダーや予定表を使う
- スマートフォンのリマインダー機能を使う
といった方法があります。
これらを活用することで、日常生活の負担を減らすことができます。
家族のサポートも重要

家族はどのようにサポートすればいいのでしょうか?

生活リズムを整える手助けや、会話や外出の機会を作ることが、認知機能の維持につながることがあります。
認知機能の低下がある場合には、周囲の理解とサポートも大切です。
家族が
- 生活リズムを整えるサポートをする
- 予定を一緒に確認する
- 会話や外出の機会を作る
といった関わりを持つことで、生活の質を保つことにつながります。
無理をせず、主治医と相談する
認知機能障害の程度は患者さんによって異なります。
症状が強い場合には、
- 神経内科
- リハビリテーション
- 認知機能リハビリ
などの専門的な支援が必要になることもあります。
生活習慣の工夫とあわせて、主治医と相談しながら対処していくことが大切です。
国際ガイドラインの位置づけ
放射線治療後の認知機能については、以下の国際ガイドラインでも重要視されています。
- ASTRO
- NCCN
- ASCO
参考
NCCN Guidelines CNS cancers
https://www.nccn.org/
ASTRO Clinical Practice Guidelines
https://www.astro.org/

放射線治療を受けるのが少し心配です…

その気持ちはとても自然です。
ただ現在は、認知機能を守るための治療法や対策が大きく進歩しています。
専門医コメント
放射線治療による認知機能障害は、特に全脳照射を受ける患者さんで重要な問題とされています。
しかし近年は
- 海馬回避照射
- メマンチン併用
- 精密放射線治療(SRS)
などの進歩により、認知機能低下のリスクを減少できる可能性があります。
また、脳転移の治療では
定位放射線治療(SRS)
を選択することで、認知機能への影響をさらに抑えられる場合もあります。
不安がある場合は、担当医と
- 治療方法
- 予防策
- 長期フォロー
について相談することが大切です。
関連記事
放射線治療では、さまざまな神経症状が起こる可能性があります。
しびれ・痛み・頭痛・めまいなどの症状の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。
まとめ
放射線治療による認知機能障害は、特に脳への照射で起こる可能性があります。
しかし現在は
- 海馬回避照射
- メマンチン
- 精密放射線治療
などの進歩により、リスクは以前より減少しています。
症状が気になる場合は早めに主治医へ相談しましょう。
放射線治療の副作用全体については以下の記事も参考にしてください。
FAQ(よくある質問)
放射線治療で認知症になりますか?
通常の放射線治療で認知症になることはまれです。ただし全脳照射では認知機能低下が起こることがあり、現在は予防技術が進歩しています。
認知機能障害はどのくらいの頻度で起こりますか?
全脳照射では約30〜60%と報告されていますが、海馬回避照射などにより低減しています。
症状はいつ出ますか?
数週間〜数か月後に出ることが多く、まれに数年後に晩期障害として現れることがあります。
認知機能障害は治りますか?
一時的なものは改善することもありますが、慢性的に続く場合もあります。
予防方法はありますか?
海馬回避照射やメマンチンの使用などが予防として研究されています。
海馬回避照射とは何ですか?
記憶に重要な海馬への放射線量を減らす放射線治療技術です。
メマンチンとは何ですか?
アルツハイマー病の薬で、全脳照射時の認知機能低下を抑える可能性があります。
定位放射線治療は認知機能に優しいですか?
い。全脳照射と比較して認知機能への影響が少ないとされています。
小児ではリスクが高いですか?
成長期の脳では影響が出やすいため、特に慎重に治療が行われます。
認知機能低下を防ぐ生活習慣はありますか?
運動、睡眠、社会活動、知的活動が脳機能維持に重要とされています。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。























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