前立腺がん完全ガイド|リスク分類・治療・副作用・経過観察・再発・転移・QOL・予後まで専門医が解説

本記事では、世界標準である

NCCNおよびASTROのガイドラインをもとに、

前立腺がんの検査・治療・副作用について専門医の立場からわかりやすく解説します。

前立腺がんは、現在日本でも急速に増加しているがんです。しかし、適切な治療選択を行えば長期生存が期待できる病気でもあります。

この記事では次の内容を解説します。

・前立腺がんの基礎
・検査と診断
・治療法の選択
・放射線治療の特徴
・副作用と対策
・生存率と予後

前立腺がんとは

前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺に発生するがんです。高齢化に伴い患者数は増加しており、日本では男性のがん罹患数の上位を占めています。

特徴として、
・進行が比較的ゆっくり
・早期では症状が少ない
・PSA検査で早期発見可能
などが挙げられます。

特に近年はPSA検査の普及により、早期がんが多く見つかるようになっています。

前立腺がんの症状

初期の前立腺がんはほとんど症状がありません。

進行すると以下がみられることがあります。

・排尿困難
・頻尿
・血尿
・骨転移による痛み

症状が出ている場合は進行していることが多いため、早期発見が重要です。

前立腺がんの検査

PSA検査

PSAは前立腺特異抗原の略で、血液検査で測定します。
前立腺がんのスクリーニングとして最も重要です。

PSAが高い場合でも、
・前立腺肥大
・炎症
などでも上昇することがあります。

MRI検査

MRIは前立腺がんの位置や広がりを評価するために重要です。
最近ではMRIを併用した生検が主流となっています。

前立腺生検

確定診断には組織検査が必要です。
合併症として
・感染
・出血
などがありますが、多くは軽度です。

PSMA-PET検査

PSMA-PETは、前立腺がんに特異的に発現するPSMA(前立腺特異膜抗原)を標的とした最新の画像検査です。

従来のCTや骨シンチグラフィよりも高い感度で転移や再発の検出が可能とされ、特にPSA再発時の評価に有用とされています。

欧米ではすでに広く使用されており、国際的なガイドラインであるNCCNでも推奨されています。

小さなリンパ節転移や遠隔転移を早期に発見できるため、治療方針の決定に重要な役割を果たします。

ただし、日本では現時点で前立腺がんに対するPSMA-PETは保険適用となっておらず、自由診療として行われることが多いのが現状です。

そのため、検査費用が高額になる点に注意が必要です。

前立腺がんのリスク分類(NCCN推奨)

前立腺がんの治療方針を決定する上で最も重要なのがリスク分類です。
これはNCCN
で推奨されている方法で、世界的に標準となっています。

主に次の3つをもとに低リスク、中リスク、高リスクに分類されます。

・PSA値
・Gleason score(病理)
・臨床病期(ステージ)

なぜリスク分類が重要か

リスクにより
・再発率
・副作用
・治療期間
が大きく異なります。

適切な分類は、治療後の予後改善に直結します。

前立腺がんのリスクについてはこちら

リスク分類について詳しく解説しています。

前立腺がんの治療法(NCCN・ASTRO推奨)

前立腺がんの治療は、リスク分類や患者背景に応じて選択されます。

主な治療は次の4つです。

監視療法(Active surveillance)

低リスク前立腺がんでは、すぐに治療せず経過観察を行うことが推奨されています。
過剰治療を避けることが目的です。

監視療法は有効な方法ですが、重要なことは経過観察を「継続する」ということです。

変化が無いからと自己判断で中断してしまうと予後が悪くなると報告されています。

監視療法は中断せず、継続することによって効果を発揮します。

手術(前立腺全摘)

若年で全身状態が良好な患者に選択されます。

最近はロボット手術が普及しています。

メリット
・病理診断が可能

デメリット
・尿失禁
・勃起障害

放射線治療

前立腺がんに対する放射線治療は、世界的にも標準治療です。
手術と同等の治療成績が報告されています。

放射線治療には以下があります。

外部照射

・IMRT
・SBRT

小線源治療

・LDR:線源を半永久的に体内に留置
・HDR:線源を一時的に前立腺内に挿入、治療後は除去

メリット
・体への負担が少ない
・高齢者にも適応
・入院期間が短い

デメリット
・晩期副作用

ホルモン療法

前立腺がんは男性ホルモンに依存するため、ホルモン抑制が有効です。

副作用
・骨粗鬆症
・筋力低下
・体重増加

前立腺がんの治療法の詳しい記事はこちら

放射線治療専門医の立場から、前立腺がんの治療法について網羅的に詳しく解説しています。

放射線治療の役割(ASTROの推奨)

ASTROでは以下が推奨されています。

・中リスク以上では放射線+ホルモン療法
・高リスクでは長期ホルモン療法
・再発症例への放射線

放射線治療は
・根治
・再発
・転移
すべてに対応可能です。

特に近年は高精度治療の進歩により、副作用は大きく減少しています。

前立腺がんの治療選択をどうするのか?

放射線治療専門医の立場から、前立腺がんの治療選択について、リスク分類に基づいて分かりやすく解説しています。

前立腺がんの副作用

治療による主な副作用です。

尿症状

・頻尿
・尿失禁

性機能

・勃起障害

腸症状

・下痢
・出血

副作用の多くは軽度であり、対策も可能です。

前立腺がんの放射線治療における副作用はこちら

現在では前立腺がんの放射線治療はIMRTが主体となっていますが、その副作用について詳しく解説しています。

治療後の経過観察と再発

前立腺がん治療後は、長期的なフォローが非常に重要です。
再発は早期発見することで、追加治療が可能となります。

PSAフォロー

最も重要なのがPSA測定です。

一般的には
・3〜6か月ごと
に検査を行います。

PSAの上昇は、再発のサインとなる可能性があります。

PSA再発とは

治療後にPSAが上昇する状態です。

手術後
・PSAが0.2以上

放射線後
・最低値から+2.0以上

と定義されることが多いです。

再発してもすぐに命に関わるわけではありませんが、早期治療が重要です。

PSMA-PET検査

PSMA-PETは、前立腺がんに特異的に発現するPSMA(前立腺特異膜抗原)を標的とした最新の画像検査です。

特にPSA再発時の評価に有用とされています。

欧米ではすでに広く使用されていますが、日本では現時点で前立腺がんに対するPSMA-PET検査は保険適用となっていないため注意が必要です。

再発後の治療

主な選択肢です。

・救済放射線治療
・ホルモン療法
・新規薬物療法

特に手術後の再発では、早期の放射線治療が推奨されています。

長期フォローの重要性

前立腺がんは再発までの期間が長いことがあります。
10年以上の経過観察が必要な場合もあります。

前立腺がんの治療後の経過観察と再発について

経過観察と再発時の対応について、詳しく解説しています。

転移性前立腺がん

転移がある場合でも、現在は多くの治療選択があります。

特に骨転移が多く、治療目標は

・症状の改善
・寿命の延長
・生活の質の維持

となります。

骨転移

前立腺がんでは骨転移が最も多いです。

症状
・痛み
・骨折
・脊髄圧迫

放射線治療は骨転移の痛みに非常に有効です。

全身治療

転移例では以下が中心です。

・ホルモン療法
・新規ホルモン薬
・抗がん剤

近年は治療の進歩により、生存期間は大きく延長しています。

転移に対する放射線治療

放射線は

・疼痛緩和
・脊髄圧迫予防
・オリゴ転移

などに使用されます。

近年は、少数転移に対する根治的放射線治療も注目されています。

オリゴ転移とは

転移が少数の場合です。

積極的治療により

・病勢の抑制
・治療期間延長

が期待されています。

オリゴ転移の詳しい記事はこちら

オリゴ転移(少数転移)の基準から予後まで、放射線治療専門医が詳しく解説しています。

性機能への影響

前立腺がん治療では、性機能(勃起機能や性欲)への影響も重要な課題です。
治療法によって影響の程度は異なり、患者さんの年齢や治療前の状態によっても大きく変わります。

国際的なガイドラインである
NCCN

ASTRO
でも、性機能や生活の質(QOL)を考慮した治療選択が推奨されています。

手術では神経への影響により一時的または持続的な勃起障害が起こることがあります。
放射線治療では急激な低下は少ないものの、数年かけて徐々に低下することがあります。
ホルモン療法では性欲の低下がみられることが多いです。

一方で、現在は
・内服薬
・リハビリ
・補助器具
など多くの対策があり、改善が期待できるケースも少なくありません。

治療前に十分な説明を受け、性機能の希望も含めて治療方針を相談することが重要です。

生存率と予後

前立腺がんは予後が良好ながんの一つです。

早期では10年以上の生存が期待できます。
一方で高リスクでは治療選択が重要となります。

前立腺がんに関するよくある質問(FAQ)

Q1:前立腺がんはどのくらい多い病気ですか?

前立腺がんは日本でも増加しており、男性のがんの中でも上位を占めています。高齢化とPSA検査の普及により、今後も患者数の増加が予想されています。特に50歳以上の男性では注意が必要です。

Q2:前立腺がんは命に関わる病気ですか?

前立腺がんは比較的進行がゆっくりなことが多く、早期に発見できれば長期生存が期待できます。ただし、高リスクや進行例では治療が重要となるため、適切な検査と治療選択が重要です。

Q3:前立腺がんはどのようにして見つかりますか?

最も重要なのはPSA(前立腺特異抗原)検査です。血液検査で簡単に測定でき、早期発見につながります。PSAが高い場合はMRIや生検を行い、確定診断を行います。

Q4:PSAが高いと必ず前立腺がんですか?

必ずしもがんとは限りません。前立腺肥大や炎症でもPSAは上昇します。PSA値だけで判断せず、MRIや生検などを組み合わせて診断します。

Q5:前立腺がんの症状はどのようなものですか?

初期には症状がほとんどありません。進行すると排尿障害や血尿、骨転移による痛みがみられることがあります。症状が出ている場合は進行していることが多いため、早期検査が重要です。

Q6:前立腺がんのリスク分類とは何ですか?

PSA値、病理(Gleason score)、臨床病期をもとに低・中・高リスクに分類します。この分類は世界的な標準であり、治療法や予後の予測に非常に重要です。

Q7:すぐに治療しなくてもよい場合はありますか?

低リスク前立腺がんでは、監視療法(Active surveillance)が推奨されることがあります。過剰な治療を避け、生活の質を保つことが目的です。

Q8:前立腺がんの治療にはどのような選択肢がありますか?

主に以下の4つです。
・監視療法
・手術
・放射線治療
・ホルモン療法
患者の年齢、体力、リスク分類に応じて選択します。

Q9:手術と放射線治療のどちらが良いですか?

多くの研究で治療成績は同等と報告されています。副作用や生活への影響が異なるため、患者の希望や状態を考慮して選択します。

Q10:放射線治療は安全ですか?

現在の高精度放射線治療では正常組織への影響を抑えることが可能です。副作用は以前より大きく減少しています。高齢者や合併症がある方にも適応しやすい治療です。

Q11:放射線治療の副作用はどのようなものがありますか?

主に以下があります。
・頻尿
・排尿障害
・腸症状
・性機能低下
多くは軽度で、時間とともに改善することが多いです。

Q12:性機能は回復しますか?

治療法や年齢によりますが、内服薬やリハビリなどで改善する場合があります。治療前から相談しておくことが重要です。

Q13:ホルモン療法の副作用はありますか?

骨粗鬆症、筋力低下、体重増加、疲労感などがみられることがあります。運動や栄養管理による予防が重要です。

Q14:前立腺がんは再発しますか?

再発することがありますが、多くはPSAの上昇で早期に発見できます。再発後も治療の選択肢が多く、長期生存が可能な場合もあります。

Q15:治療後のフォローはどのくらい必要ですか?

通常は3〜6か月ごとのPSA検査を行い、長期フォローが推奨されます。10年以上の経過観察が必要な場合もあります。

Q16:転移していても治療は可能ですか?

現在は多くの治療法があり、生存期間は大きく延長しています。症状の改善や生活の質の維持を目的とした治療が行われます。

Q17:骨転移の痛みにはどのような治療がありますか?

放射線治療が非常に有効で、短期間で痛みの改善が期待できます。骨折や神経障害の予防にも重要です。

Q18:前立腺がんの生存率はどのくらいですか?

早期であれば10年以上の生存が期待できます。リスク分類や治療内容によって予後は異なります。

Q19:高齢でも治療は受けられますか?

高齢でも放射線治療やホルモン療法など、体への負担が少ない治療が可能です。年齢だけでなく全身状態が重要です。

Q20:どの病院で治療を受けるべきですか?

治療経験が豊富で、複数の治療選択肢を提示できる施設が望ましいです。専門医による説明を受け、納得して治療を選択することが重要です。

まとめ

前立腺がんは
・早期発見
・適切な治療
により長期生存が期待できます。

治療法は多く、患者ごとに最適解が異なります。
そのため、専門医との相談が非常に重要です。

監修・執筆

放射線治療専門医として、前立腺がん治療に日常的に関わっています。
本記事は国際ガイドラインに準拠し、臨床経験をもとに作成しています。

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