中枢型の肺癌に対する定位照射の考え方

目次
1:肺癌における「no fly zone」とは
2:「no fly zone」から「fly-with-caution zone」へ
3:まとめ
4:参考文献
肺癌における「no fly zone」とは

肺癌に対する定位照射において「no fly zone」と呼ばれる考え方があります。
直訳すると「飛んではいけない領域」となりますが、これは古代ギリシャの故事であるイカロスの話に由来しています。
イカロスは太陽に近づきすぎたせいで、ろうで固めた羽が溶けてしまい墜落して死んでしまいました。
肺癌に対する放射線治療では、中枢領域つまり、縦隔に近い部分は注意が必要で、そこに強く放射線が当たってしまうと気道出血などの重篤な副作用で死亡するリスクがあります。
この中枢側の照射によるリスクをイカロスの故事と結び付けて「no fly zone」と呼んでいるわけです。
ただこの「no fly zone」が提唱されたのも20年ほど前のことであり、それ以降で放射線治療領域も大きく進化してきました。
現在の「no fly zone」に対する考え方を紹介します。
「no fly zone」から「fly-with-caution zone」へ

現在の「no fly zone」の考え方は、「fly-with-caution zone」へと変わってきています。
直訳すると「飛んではいけない領域」から「注意して飛ぶ領域」へと変わったということです。
つまり、これまでは中枢型肺癌は基本的に強い放射線を避けるべきでしたが、現在ではリスク臓器に注意すれば高線量照射も可能な状態に変わってきているということです。
いくつかの研究で、中枢型肺癌に対する安全な線量が検討されています。
HILUS試験では中枢型肺癌に対する定位照射の成績を評価しています。
この試験では56Gyを8回に分けて照射しており、PTVの最大線量を150%まで(84Gyまで)と規定しています。
この試験の結果から、著者らは気管分岐部あるいは主気管支から10mm以内の症例については、56Gy/8Fr(EQD2 80Gy)までであれば安全に照射できるとしています。
このHILUS試験の注意点としてはPTVマージンを15mmと比較的広くとっており、現在一般的に照射される範囲よりも広い範囲に強く照射されている可能性があります。
また、治療期間が2週間程度であり、その間の腫瘍のサイズ変化を考慮していない点にも注意が必要です。
RTOG0813でも中枢型肺癌に対する定位照射の安全性が評価されています。
この試験では1回10~12Gyを5回照射しており、全期間は1.5~2週間となっています。
この試験では近位気管支(proximal bronchial tree: PBT)とPTVが重なる場合には、重なる領域の最大線量は、処方線量の105%までと規定しています。
重ならない領域のPTVについては処方線量の167%を許容しています。
38ヶ月の経過観察で、重篤な副作用は少数に見られるのみで、十分に許容される結果でした。
この結果から、PBTの線量は処方線量の100%を超えない程度が適当と考えられます。
まとめ
放射線治療技術の進歩に伴い、中枢型肺癌は以前は「no fly zone」と呼ばれる高線量投与が困難な領域でしたが、現在では注意すれば十分に高線量が投与できる領域となっています。
近位気管支(PBT)に対しては、処方線量の100%を超えないように注意が必要です。
参考文献
Performing SBRT in the Fly-With-Caution Zone: Are We Heeding the Advice of Daedalus?
- PMID: 35101193
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.10.143



















ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません