放射線性肺炎のリスク因子

目次

1:肺癌治療における副作用としての肺炎
2:高精度照射における肺炎のリスク因子
3:まとめ
4:参考文献

肺癌治療における副作用としての肺炎

肺癌に対する放射線治療の際に注意すべき副作用の一つとして肺炎があります。

放射線治療に伴う肺炎も様々であり、軽度のものから、重篤になると死にいたるものもあります。

このため、放射線治療においては、いかに放射線治療に伴う肺炎を避けるのかというのは重要な問題です。

放射線治療が開始された当初から、放射線治療に伴う肺炎のリスクは議論されており、さまざまなリスク因子が提唱されてきました。

いっぽうで、近年では肺癌治療において高精度照射が導入されるケースが増え、以前のデータを高精度治療にそのまま適応してよいのか、十分なエビデンスが蓄積されていない状態でした。

今回、肺癌に対する高精度治療における肺炎のリスク因子について検討した研究を紹介します。

高精度照射における肺炎のリスク因子

従来の放射線治療はCT画像をもとに作成した3次元照射と呼ばれる照射で、通常は4方向程度から照射されるのが一般的です。

近年では、肺癌領域においても高精度照射が行われるようになり、一般的にはIMRTやVMATと呼ばれる手法によって照射されます。

IMRTやVMATは病気に対して、さまざまな方向から、さまざまな強度の放射線を複雑に照射し、腫瘍には十分な線量を投与しつつ、正常組織の線量を軽減させることが可能な照射法です。

従来の照射法では肺のV20やMLDといった数値が肺炎のリスク因子として重要な指標となっていました。

今回、1300例を対象として、1回1.8-2.0Gyの高精度照射を行った症例について、肺炎のリスクを評価しています。

治療後6ヶ月の時点でのすべての肺炎の発生率は16%(208症例)でした。

肺炎のGradeが2以上のものは7%(94症例)、3以上のものは1%以下(11例)でした。

多変量解析による、肺炎のリスク因子の評価では、G2以上の肺炎については、肺のV5が有意なリスク因子でした。

G3以上の肺炎については、MLDおよびV20が有意なリスク因子でした。

併存疾患の有無はG3以上の肺炎について有意なリスク因子でしたが、G2の肺炎については有意な因子ではありませんでした。

また、興味深い結果として、喫煙者のほうが、非喫煙者に比べてGrade2以上の肺炎の発生率が少ないという結果でした。

まとめ

肺癌に対する放射線治療において、IMRTやVMATといった最近の照射技術を用いた治療では、V5やV20、MLDといった指標が肺炎発生に有意に影響するという結果でした。

また、その他の指標としては併存疾患が多いほうが肺炎リスクが高く、喫煙者は肺炎のリスクが少ないという結果でした。

参考文献

Predictors of Pneumonitis After Conventionally Fractionated Radiotherapy for Locally Advanced Lung Cancer

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