放射線治療中の食欲低下|原因・対策・いつ受診すべきかを専門医が解説

患者

放射線治療を始めてから、
食欲が落ちてきました…。
あまり食べられないのですが大丈夫でしょうか?

放射線治療医

放射線治療中は食欲低下が起こることがあります。
原因や対処法を知っておけば、
多くの場合は食事を工夫しながら治療を続けることができます。

放射線治療中に「食欲が落ちて食べられない」と感じる患者さんは少なくありません。

実際、がん治療中には

  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 栄養不足

が起こりやすく、治療の継続や体力維持に影響することがあります。

しかし、原因を理解し、適切に対処すれば食事量を保ちながら治療を続けることが可能です。

この記事では、
放射線治療中の食欲低下の原因・対処法・受診の目安について
国際的ガイドラインや研究結果をもとに、放射線治療専門医がわかりやすく解説します。

👉 放射線治療の副作用全体については
放射線治療の副作用まとめ(親記事)
をご覧ください。


患者

どうして放射線治療で食欲が落ちてしまうのですか?

放射線治療医

吐き気、味覚の変化、疲労などが原因になることが多いです。
照射する場所によっても症状は変わります。


放射線治療中に食欲低下が起こる理由

放射線治療による食欲低下は、いくつかの原因が組み合わさって起こります。

主な原因は以下です。

①消化管の炎症

放射線が

  • 食道

に当たる場合、粘膜の炎症が起こることがあります。

これにより

  • 食事で痛み
  • 吐き気
  • 胃もたれ

などが起こり、食欲が低下します。

参考
https://www.nccn.org/guidelines


②吐き気(放射線誘発悪心)

放射線治療では、照射部位によって吐き気が起こることがあります。

特に起こりやすい部位

  • 上腹部
  • 全身照射

参考
MASCC/ESMO antiemesis guideline
https://mascc.org/


③味覚の変化

頭頸部への放射線では

  • 味覚低下
  • 味覚異常
  • 金属味

などが起こり、食欲低下につながることがあります。


④全身の疲労

放射線治療では

  • 疲れやすい
  • 体力低下

が起こることがあります。

疲労が強いと

食事を準備することや食べること自体が負担になる

場合があります。

👉 関連記事
放射線治療中の疲労


食欲低下はどれくらい起こる?

研究では、放射線治療中の食欲低下は

約30〜60%

の患者でみられると報告されています。

特に多いのは

  • 頭頸部がん
  • 食道がん
  • 膵がん
  • 上腹部照射

などです。

参考研究

Arends J, et al.
ESPEN guideline on nutrition in cancer patients.
Clin Nutr. 2017.

https://www.espen.org/guidelines


患者

食欲がないときは、
どうやって食事をとればいいのでしょうか?

放射線治療医

無理に食べる必要はありません。
少量を回数多く食べたり、
食べやすい食品を選ぶことで栄養をとることができます。


食欲低下を改善するための対策

食欲低下がある場合、食事の取り方を工夫することが重要です。

①少量を回数多く食べる

1日3食にこだわらず

  • 5〜6回に分けて食べる

と食事量を保ちやすくなります。


②食べやすい食品を選ぶ

おすすめ

  • ゼリー
  • ヨーグルト
  • プリン
  • スープ
  • おかゆ
  • うどん

食べにくいもの

  • 脂っこい料理
  • においの強い料理

③高カロリー食品を活用

少量でもエネルギーが取れる食品

  • 栄養補助飲料
  • プロテイン飲料
  • アイスクリーム

なども役立ちます。

参考
American Society of Clinical Oncology
https://www.asco.org

総合栄養飲料

食欲が低下しているときは、少量で栄養が摂れる栄養補助食品が役立つことがあります。

例として以下のような総合栄養飲料があります。

・メイバランス
・エンシュア

医療機関でも栄養補助として使用されることがあります。


④吐き気の治療

吐き気が原因の場合

  • 制吐薬
  • 胃薬

などで改善することがあります。

遠慮せず主治医に相談してください。


体重減少はどのくらい注意?

がん治療では

体重減少5%以上

がある場合は注意が必要とされています。

これは

  • 治療耐性低下
  • 合併症増加

と関連する可能性があるためです。

参考
ASCO Cancer Cachexia guideline
https://ascopubs.org


患者

最近体重が少し減ってきました…。
これは問題でしょうか?

放射線治療医

治療中は体重が減ることがありますが、
栄養不足が続くと体力低下につながることがあります。
早めに対策することが大切です。


食欲低下と栄養不足(がん悪液質)

放射線治療中の食欲低下が長く続くと、栄養不足や体重減少につながることがあります。

がん治療では、単なる食事量の減少だけでなく

  • 体重減少
  • 筋肉量の減少
  • 全身の体力低下

などを伴う状態が起こることがあります。

この状態は がん悪液質(cachexia) と呼ばれています。


がん悪液質とは

がん悪液質とは

がんに伴う慢性的な炎症や代謝変化により、体重や筋肉が減少する状態

を指します。

特徴

・体重減少
・筋肉量の減少
・食欲低下
・疲労
・体力低下

などがみられます。

重要なのは、悪液質では

通常の食事だけでは体重が回復しにくい場合がある

という点です。


なぜ栄養管理が重要なのか

がん治療中の栄養状態は

  • 治療継続
  • 体力維持
  • 生活の質(QOL)

に大きく影響します。

国際的な栄養ガイドラインでは

がん患者では早期からの栄養管理が重要

とされています。

参考

ESPEN guideline on nutrition in cancer patients
https://www.espen.org/guidelines

ASCO guideline on cancer cachexia
https://ascopubs.org


栄養不足を防ぐためのポイント

食欲低下がある場合は

  • 少量を回数多く食べる
  • 高カロリー食品を利用する
  • 栄養補助食品を活用する

などの方法が推奨されます。

体重減少が続く場合には

  • 栄養指導
  • 栄養補助食品
  • 薬物治療

などが必要になることもあります。

食欲低下や体重減少がある場合は、早めに主治医へ相談することが大切です。

ゼリータイプ

固形の食事が難しい場合は、ゼリータイプの栄養補助食品が飲みやすいことがあります。

・カロリーメイトゼリー
・inゼリー

などは少量でエネルギーを補給できます。


患者

どのくらい食べられなかったら
病院に相談したほうがいいですか?

放射線治療医

ほとんど食事が取れない状態が続く場合や、体重が急に減った場合は早めに相談してください。


すぐに医師に相談すべき症状

次のような場合は早めに医療機関へ相談してください。

  • ほとんど食べられない
  • 体重が急に減った
  • 吐き気が続く
  • 水分も取れない
  • 1週間以上食欲が戻らない

必要に応じて

  • 栄養指導
  • 点滴
  • 薬物治療

を行うことがあります。


放射線治療中の食事の基本

国際ガイドラインでは

がん治療中は

栄養状態の維持が非常に重要

とされています。

推奨

  • エネルギー
    25〜30 kcal/kg/day
  • タンパク質
    1.0〜1.5 g/kg/day

参考
ESPEN guideline

放射線治療中の食事についてはこちらの記事で解説しています。

高カロリー栄養ゼリー

体重減少がある場合は、医療・介護向けの高カロリー栄養ゼリーを利用することもあります。

少量でエネルギー補給ができるため、食欲がないときの補助食品として使われることがあります。


患者

食欲が落ちていると、
放射線治療を続けられるのか不安です。

放射線治療医

多くの場合、食事の工夫や薬で症状は改善します。
食欲低下があっても、主治医と相談しながら治療を続けることができます。


専門医コメント

放射線治療中の食欲低下は、珍しい副作用ではありません。

多くの場合は

  • 吐き気
  • 味覚変化
  • 疲労

など複数の原因が重なって起こります。

重要なのは、無理に食べることではなく、食べられる形で栄養を確保することです。

少量でも構いませんので

  • 食べやすい食品
  • 栄養補助食品

などを活用しながら、体重減少を防ぐことが大切です。

また、食欲低下が強い場合は治療で改善できることも多いため、遠慮せず主治医に相談してください。


まとめ

放射線治療中の食欲低下は

  • 消化管炎症
  • 吐き気
  • 味覚変化
  • 疲労

などによって起こります。

多くの場合は

  • 食事の工夫
  • 栄養補助
  • 薬物治療

で改善できます。

体重減少や食事困難がある場合は早めに医師へ相談することが大切です。

👉 放射線治療の副作用全体については
放射線治療の副作用まとめをご覧ください。


FAQ(よくある質問)

放射線治療で食欲が落ちることはありますか?

あります。
放射線治療では、吐き気、消化管の炎症、味覚変化、疲労などが原因で食欲低下が起こることがあります。照射部位によって症状の出方は異なります。

放射線治療中の食欲低下はどれくらいの頻度で起こりますか?

研究では、放射線治療中の患者の約30〜60%程度に食欲低下がみられると報告されています。特に頭頸部がんや上腹部への放射線治療では起こりやすい傾向があります。

食欲がないときでも無理に食べたほうがいいですか?

無理に食べる必要はありません。
食事は少量を1日5〜6回に分けて食べる方法が推奨されています。食べられる時間帯に少しずつ摂取することが大切です。

放射線治療中におすすめの食事はありますか?

食べやすい食品として
・ゼリー
・ヨーグルト
・プリン
・スープ
・おかゆ
・うどん
など、消化がよく口当たりのよい食品が選ばれることが多いです。

食欲がないときに避けたほうがよい食べ物はありますか?

症状によって異なりますが、一般的には
・脂っこい料理
・香りの強い料理
・刺激の強い食べ物
などは食欲低下や吐き気を悪化させることがあります。

放射線治療中に体重が減るのは問題ですか?

体重減少が5%以上になる場合は注意が必要とされています。
栄養状態の低下は、体力や治療継続に影響する可能性があるため、早めに医師へ相談してください。

栄養補助食品は使ってもよいですか?

はい、食事量が少ない場合には栄養補助飲料や高カロリー食品が役立つことがあります。医療機関で栄養補助食品を紹介してもらえることもあります。

食欲低下は治療が終われば改善しますか?

多くの場合、放射線治療が終了すると徐々に食欲は回復していきます。ただし味覚変化などは回復までに時間がかかることもあります。

水分だけでも取れていれば大丈夫ですか?

水分だけではエネルギーやタンパク質が不足する可能性があります。可能であれば少量でも栄養のある食品や栄養補助飲料を取り入れることが望ましいです。

どのような場合に医師へ相談すべきですか?

次のような場合は医療機関へ相談してください。
・ほとんど食事が取れない
・体重が急に減った
・吐き気が続く
・水分も取れない
・1週間以上食欲が戻らない
栄養指導や薬によって改善できる場合があります。


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  この記事の執筆者

放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。

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