難治性うつ病に対する放射線治療の応用

目次
1:難治性うつ病に対する放射線治療
2:放射線治療による実際の結果
3:まとめ
4:参考文献
難治性うつ病に対する放射線治療

放射線治療はおもに癌を対象としていますが、今回の話題は癌ではありません。
再発を繰り返す難治性のうつ病に対して放射線治療が有効かどうかを検討した研究を紹介します。
うつ病のような感情障害に対して、手術によって脳の一部を切除する治療は以前から行われてきました。
今回の研究は、これまで手術で行われてきた治療を、放射線治療によって代替できないかを検討したものになります。
最近では、画像診断の領域でも日々進歩が見られ、MRIを用いて脳の神経線維の走行をより明瞭に描出することができるようになってきています。
そして手術と比較した放射線治療のメリットとしては、手術では全身麻酔のような大掛かりな準備が必要ですが、放射線治療では麻酔は必要ありません。
また手術では目的の病変に到達するまでに、周囲の脳組織も切開していく必要がありますが、放射線治療では目的病変に集中して照射できるため、周囲の脳組織へのダメージも最小限にすることができます。
そして手術は術者の技量が大きく影響しますが、放射線治療に関しては正確な画像が取得できれば、施設によって治療内容や副作用に大きな違いが生じないというのもメリットであると思います。
放射線治療による実際の結果

今回紹介する研究は、まだ初期報告という形で、3名の患者を対象にしており、ほぼ症例報告に近い形のものです。
この研究では、再発する難治性うつ病の患者を対象として、脳の組織の内包前脚とよばれる領域に放射線を高線量投与しています。
この3名の患者はいずれも治療後にうつ症状の改善を自覚しています。
一人の患者は治療後3か月後の時点で、全体的な症状および機能の改善を自覚していました。
またいずれの患者においても、自殺企図の感情が低減していました。
副作用については、いずれの患者でも認知や行動面で、明らかな放射線治療の副作用は認めませんでした。
治療後のMRIを用いた画像評価では、神経の走行に変化が見られたことが確認されています。
まとめ
難治性うつ病に対する高線量の放射線投与によって、有意に症状の改善が見られました。
最近では外科医を志望する学生の減少も問題となっており、外科治療の代替として放射線治療が一つの選択肢になり得るのではないかと考えます。
まだまだ症例は少ないですが、今後の症例の蓄積に期待したいところです。
参考文献
Noninvasive Capsulotomy for Refractory Depression by Frameless Stereotactic Radiosurgery
- PMID: 35595157
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2022.04.042


















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