筋層浸潤膀胱癌に対する寡分割照射

目次

1:寡分割照射とは
2:筋層浸潤膀胱癌に対する寡分割照射
3:今後の放射線治療について
4:参考文献

寡分割照射とは

筋層浸潤膀胱癌に対する寡分割の放射線治療についてのメタアナリシスを紹介します。

寡分割照射というのは、通常の放射線よりも1回線量を多くして、全体の治療回数、治療期間を短くした治療です。

通常の放射線治療よりも短期間で終了でき、また投与線量によっては通常の放射線治療よりも強く放射線を照射することができるメリットがあります。

その分、寡分割照射では短期の副作用が強くなる傾向になり、一般的には高精度治療を用いて、正常組織への照射を減らす必要があります。

筋層浸潤膀胱癌に対する寡分割照射

今回紹介する研究では約800例の症例を対象としており、寡分割照射群400例、通常照射群400例にわけて検討を行っています。

寡分割照射群では55Gyを20回にわけて照射しており、治療期間としては4週間になります。

通常照射群では64Gyを32回にわけて照射し、6.4週間治療にかかります。

年齢や性別といったリスクファクターを調整した後での比較では、寡分割照射群で局所制御が優れているという結果でした。

また全生存や膀胱、直腸障害については両群で変わらないという結果でした。

今後の放射線治療について

この研究結果から、筋層浸潤膀胱癌に対する寡分割照射は標準治療のひとつになり得ると考えられます。

寡分割照射は上で書いたように、治療期間も短く、患者側のメリットも大きいです。

ただ、日本においてすぐに寡分割照射が浸透していくとは言えない現状もあります。

これは日本の放射線治療において、医療機関が請求できる金額は治療回数に依存しているためです。

つまり通常照射から寡分割照射に切り替えた場合、治療回数が減ってしまうので、 病院の収益が減ってしまうのです。

今はどこの病院もぎりぎりのレベルで経営を行っているため、経営面を考えると、すぐに寡分割照射に移行できないというジレンマがあります。

日本の医療制度は優れた面も多いですが、最近では社会保障費の増大により、十分な医療を提供できないという足かせの部分も目立つようになってきていると感じています。

参考文献

Hypofractionated radiotherapy in locally advanced bladder cancer: an individual patient data meta-analysis of the BC2001 and BCON trials

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