トランスジェンダーと放射線治療
トランスジェンダーと放射線治療
日本でも昨今、性的マイノリティについての議論が盛んですが、実際に放射線治療の現場でそのような方を対象にすることはまだそこまで多くないと思います。
海外ではより進んでいる印象であり、そのような方に対する放射線治療についての注意点を喚起する論文もあります。
特に注意すべきなのは性転換手術を受けられた方です。
もともとの性別で存在する臓器とは別に新たに作られた部分もあるため、解剖学的な臓器ごとの位置関係を症例ごとに把握する必要があります。
これらの構造は骨盤領域の放射線治療を行う際に問題となります。
男性から女性への性転換手術を受けた方の場合、本来の前立腺が存在するとともに、新たに腟を作成されている場合があります。
この場合、新たに作成された腟に将来的に腟癌を発症する可能性もあるわけです。
作成された腟に腟癌を発症した場合、放射線治療は女性の腟癌の治療に準じて行われますが、周囲にはもともと男性であったときの臓器も残っているため、それらの線量も考慮しながら治療を行う必要があります。
また、作成された腟じたいは本来の腟とは異なるため、放射線が照射できる限度も変わってきます。
あるいは性転換手術を受けて女性になった方に、将来的に残存している前立腺に癌が発生するというパターンも考えられます。
性転換手術を受けた方の骨盤照射ではこのように様々な要素に注意しながら治療を行う必要があります。
日本では性転換手術を受けられた方もまだそこまで多くないと思いますので、そのような状況に遭遇することは稀かもしれませんが、今後、増えてくるようであれば、放射線治療の際には注意が必要です。
参考文献
Gender-Affirming Surgery and Cancer: Considerations for Radiation Oncologists for Pelvic Radiation in Transfeminine Patients
- PMID: 37230432
- PMCID: PMC10527783
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2023.05.028
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