放射線治療後のリンパ浮腫|原因・症状・予防と治療を専門医が解説

患者

放射線治療のあとに腕や脚がむくむことがあると聞きました。
本当に起こるのでしょうか?

放射線治療医

はい。リンパの流れが障害されることでリンパ浮腫が起こることがあります。
ただし、早く気づけば適切に対処できる副作用です。

放射線治療のあとに、手足や首がむくむ「リンパ浮腫」が起こることがあります。

リンパ浮腫は

  • がん手術
  • 放射線治療
  • リンパ節郭清

などによってリンパの流れが妨げられることで発生する慢性的なむくみです。

特に

  • 乳がん治療後の腕
  • 婦人科がん治療後の脚
  • 頭頸部がん治療後の顔や首

で起こることが知られています。

この記事では、放射線治療後に起こるリンパ浮腫について

  • 原因
  • 起こりやすい部位
  • 症状
  • 予防方法
  • 治療方法

放射線治療専門医の立場から最新の国際ガイドラインに基づき解説します。

なお、放射線治療の副作用全体については
放射線治療の副作用まとめ
をご覧ください。


放射線治療によるリンパ浮腫とは

患者

ただのむくみとは違うのでしょうか?

放射線治療医

リンパ浮腫はリンパ液が体に溜まって起こる慢性的なむくみです。
通常のむくみとは原因が異なり、早めのケアが大切です。

リンパ浮腫とは

リンパ液が皮下に溜まり、慢性的な腫れ(むくみ)を起こす状態です。

通常、リンパ液は

  • リンパ管
  • リンパ節

を通って体内を循環しています。

しかし

  • リンパ節郭清
  • 放射線治療
  • 手術

などによってリンパの流れが障害されると、リンパ液が滞留して浮腫が発生します。

国際リンパ学会(International Society of Lymphology)のガイドラインでも

リンパ浮腫は

「リンパ輸送障害による慢性進行性の浮腫」

と定義されています。

外部参考
International Society of Lymphology
https://isl.arizona.edu


放射線治療でリンパ浮腫が起こる理由

放射線治療は

  • 腫瘍
  • 周囲リンパ節

に照射することで治療効果を得ます。

しかし同時に

リンパ管やリンパ節に線維化が起こることがあります。

これにより

  • リンパ管狭窄
  • リンパ流障害

が生じ、リンパ浮腫が発生します。

特に

  • 手術によるリンパ節郭清
  • 放射線治療

併用されるとリスクが高くなることが知られています。

参考
Rockson SG. Circulation. 2018
Mortimer PS. Lancet. 2021


リンパ浮腫が起こりやすいがん

放射線治療後のリンパ浮腫は以下のがんで比較的多くみられます。

乳がん

乳がんでは

  • 腋窩リンパ節郭清
  • 腋窩照射

により

腕のリンパ浮腫

が起こることがあります。

詳しくはこちら
乳がん術後の上肢リンパ浮腫


婦人科がん

以下のがんでは

  • 骨盤リンパ節郭清
  • 骨盤放射線治療

により

下肢リンパ浮腫

が起こることがあります。

代表例

  • 子宮頸がん
  • 子宮体がん
  • 卵巣がん

頭頸部がん

頭頸部がんでは

  • 頸部リンパ節郭清
  • 頸部放射線治療

により

顔・首のリンパ浮腫

が生じることがあります。

詳しくはこちら
頸部リンパ浮腫


リンパ浮腫の症状

患者

むくみ以外にも症状はありますか?

放射線治療医

初期にはだるさ・皮膚の張り・重い感じなどがあります。
進行すると皮膚が硬くなることもあるので、
早めに気づくことが重要です。

リンパ浮腫の症状には次のようなものがあります。

初期症状

  • 手足のむくみ
  • だるさ
  • 皮膚の張り
  • 指輪や靴がきつい

進行すると

  • 皮膚の硬化
  • 皮膚肥厚
  • 感染(蜂窩織炎)

などが起こることがあります。

早期発見がとても重要です。


リンパ浮腫はいつ起こる?

リンパ浮腫は

治療後数か月〜数年後に発症することがあります。

発症時期

  • 治療後数か月
  • 治療後1〜3年
  • 10年以上後

など様々です。

そのため

長期的な経過観察が重要です。

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放射線治療後に起こるさまざまな晩期副作用については、以下の記事でまとめて解説しています。

放射線治療の晩期副作用まとめ(症状・原因・対処法)


放射線治療後に起こる可能性のある後遺症の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。

放射線治療後の後遺症まとめ|長期に残る症状を専門医が解説


リンパ浮腫の予防方法

患者

リンパ浮腫は予防できるのでしょうか?

放射線治療医

完全に防ぐことは難しいですが、
体重管理・運動・皮膚ケアなどでリスクを減らすことができます。

完全な予防は難しいですが、以下が推奨されています。

国際ガイドラインでは

早期予防とセルフケアが重要とされています。

予防方法

  • 体重管理
  • 適度な運動
  • 皮膚ケア
  • 外傷を避ける
  • 感染予防

腕のリンパ浮腫では

  • 採血
  • 血圧測定

を避けるよう指導されることがあります。


リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫の治療は

複合的理学療法(CDT)

が基本です。

主な治療

圧迫療法

弾性スリーブや弾性ストッキングで

リンパ液の貯留を防ぎます。


リンパドレナージ

専門的マッサージによって

リンパ液の流れを促進します。


運動療法

筋肉のポンプ作用によって

リンパ循環を改善します。


皮膚ケア

感染予防が重要です。

蜂窩織炎を繰り返すと

リンパ浮腫が悪化することがあります。


リンパ浮腫の最新治療

近年は以下の治療も研究されています。

  • リンパ管静脈吻合術(LVA)
  • リンパ節移植
  • 低侵襲外科治療

外科治療は

専門施設で検討されます。

参考
Campisi C. Microsurgery. 2022


放射線治療によるリンパ浮腫の頻度

発生率はがんの種類によって異なります。

乳がん
約10〜30%

婦人科がん
約20〜40%

頭頸部がん
約20〜50%

※治療内容により大きく変わります


患者

リンパ浮腫が起きたら治らないのでしょうか?

放射線治療医

早期に治療を始めれば、
症状をかなり改善できることが多いです。
むくみを感じたら早めに相談してください。


専門医コメント

放射線治療後のリンパ浮腫は、早期発見と早期介入が非常に重要な副作用です。

近年の研究では、リンパ浮腫は

「発症してから治療する」

よりも

「発症前から予防と早期管理を行う」

ことが重要とされています。

そのため

  • 治療後の体の変化に気づくこと
  • 早めに主治医へ相談すること

が大切です。

むくみや違和感があれば、早めに医療機関に相談することをおすすめします。


まとめ

放射線治療後のリンパ浮腫は

リンパ流障害によって起こる慢性的なむくみです。

ポイント

  • 手術と放射線治療でリスクが上がる
  • 数か月〜数年後に発症することがある
  • 早期発見が重要
  • 圧迫療法・リンパドレナージが基本治療

むくみや違和感を感じた場合は、早めに医療機関へ相談してください。

放射線治療の副作用全体については
放射線治療の副作用まとめ


FAQ(よくある質問)

放射線治療でリンパ浮腫は起こりますか?

はい。放射線治療によってリンパ管やリンパ節に線維化が起こると、リンパ液の流れが障害され、リンパ浮腫が発生することがあります。

リンパ浮腫はいつから起こりますか?

治療後数か月から数年後に発症することがあります。10年以上経過してから発症する例も報告されています。

リンパ浮腫は治りますか?

完全に元の状態に戻すことは難しい場合がありますが、早期に治療を行うことで症状を大きく改善できます。

リンパ浮腫の初期症状は何ですか?

手足のむくみ、だるさ、皮膚の張り、指輪や靴がきつくなるなどの症状があります。

リンパ浮腫は放置しても大丈夫ですか?

放置すると進行する可能性があるため、早めに医療機関へ相談することが重要です。

リンパ浮腫は予防できますか?

完全な予防は難しいですが、体重管理、運動、皮膚ケアなどでリスクを減らすことができます。

リンパ浮腫の治療方法は何ですか?

圧迫療法、リンパドレナージ、運動療法、皮膚ケアなどの複合的理学療法が基本です。

リンパ浮腫は感染と関係がありますか?

はい。蜂窩織炎などの感染はリンパ浮腫を悪化させるため、皮膚ケアが重要です。

リンパ浮腫は手術が必要ですか?

多くは保存的治療で管理できますが、重症例ではリンパ管静脈吻合術などの外科治療が検討されることがあります。

リンパ浮腫になりやすいがんは何ですか?

乳がん、婦人科がん、頭頸部がんなどで比較的多くみられます。


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  この記事の執筆者

放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。

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