定位照射における腕神経叢の耐容線量

目次

1:定位照射と腕神経叢
2:腕神経叢の耐容線量は?
3:参考文献

定位照射と腕神経叢

今回は少し専門的な話になります。

定位照射、体幹部定位照射は高精度照射のひとつで、近年多くの癌領域において普及してきている照射方法です。

定位照射は1回に当てる放射線量を増やして治療する方法で、腫瘍に大線量を投与しつつ、治療期間の短縮がはかれます。

ただ、腫瘍に大線量を投与するため、周囲の正常臓器にも強い放射線が当たってしまいます。

このため、周囲の臓器に強く当たらないように注意が必要であり、超えてはいけない線量、いわゆる耐容線量というものが設定されています。

腕神経叢は脊髄から出て、腕のほうに出ていく神経のかたまりです。

頸椎から出て、腕に伸びていくため、鎖骨近傍を走行しています。

腕神経叢が問題となるのは頭頚部癌や乳癌、肺癌の放射線治療の際です。

仮に腕神経叢が放射線によって障害された場合には、手のしびれや運動障害が出てくることになります。

腕神経叢の耐容線量は?

これまでの研究から腕神経叢の耐容線量が設定されています。

5回照射であれば最大線量が32Gy、3回照射であれば最大線量が25Gyとなっています。

この線量を守っていれば腕神経叢障害の発生率を10%以下にすることができます。

いっぽうで、腕神経叢の耐容線量評価には難しい点があります。

それは、画像で腕神経叢を同定するのが非常に難しいということです。

神経というのはもともと非常に細い組織のため、CTなどで明瞭に描出されません。

このため、周囲の筋肉や骨、血管の位置関係から神経の走行を同定していく形になります。

なので、神経を明瞭に描出するということが非常に困難なのです。

神経が明瞭に描出できないということは、その線量評価じたいも難しくなります。

間違えた領域を評価してしまうと、間違えた線量が出てしまうからです。

特に定位照射というのは腫瘍のまわりの線量が急激に変化するのが特徴です。

わずかなずれでも大きく線量が変わってしまうのです。

このため、定位照射における腕神経叢の耐容線量評価というのは非常に難しいのが現状です。

 

参考文献

Hypofractionated Stereotactic Radiation Therapy Dosimetric Tolerances for the Inferior Aspect of the Brachial Plexus: A Systematic Review

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