ガンマナイフとは?脳腫瘍・脳転移の定位放射線治療を専門医が解説
ガンマナイフとは
ガンマナイフ(Gamma Knife)は、脳の病変に対して行う高精度な定位放射線治療(Stereotactic Radiosurgery:SRS)です。
数百本のコバルト60から出るガンマ線を一点に集中させ、脳腫瘍や血管奇形などの病変をピンポイントで治療します。
特徴は次の通りです。
- 開頭手術を行わない非侵襲的治療
- 1回の照射で治療が完了することが多い
- 周囲の正常脳への影響が少ない
- ミリ単位の非常に高い精度
そのため現在では、世界中で脳疾患に対する代表的な定位放射線治療として使用されています。
参考
https://www.nccn.org
https://www.estro.org
ガンマナイフの治療原理
ガンマナイフは約200本前後のガンマ線を一点に集中させて照射します。
1本1本の線量は弱いため正常組織への影響は小さいですが、
焦点では高線量になるため腫瘍を破壊できます。
イメージとしては
- 虫眼鏡で太陽光を一点に集める
のと似た原理です。
この方法により
- 脳腫瘍
- 脳転移
- 血管奇形
などを高精度に治療できます。
ガンマナイフで治療できる病気
ガンマナイフは主に脳の病変に使用されます。
脳転移
最も多い適応です。
- 肺がん
- 乳がん
- 腎がん
- 大腸がん
- メラノーマ
などの脳転移に対して広く行われています。
近年の研究では
- 複数個の脳転移でもSRSが有効
であることが示されています。
参考
Yamamoto M et al. Lancet Oncology 2014
良性脳腫瘍
代表的なもの
- 髄膜腫
- 聴神経腫瘍
- 下垂体腺腫
手術が難しい部位でも高い腫瘍制御率が報告されています。
脳動静脈奇形(AVM)
血管が異常につながる病気です。
ガンマナイフによって
- 数年かけて血管が閉塞
します。
三叉神経痛
薬が効かない三叉神経痛に対して
- 神経の一部を放射線で治療
することで痛みを改善します。
ガンマナイフの治療の流れ
一般的な治療の流れです。
1 固定フレーム装着
頭を動かないようにするため
定位フレームを装着します。
局所麻酔で行います。
2 MRI撮影
MRIを撮影し
- 腫瘍
- 神経
- 血管
などを確認します。
3 治療計画
専門医・医学物理士が
- 照射位置
- 線量
を決定します。
4 放射線照射
治療時間
30分〜2時間程度
多くの場合
日帰り治療が可能です。
ガンマナイフの治療効果
病気によって異なりますが、代表的な成績です。
脳転移
局所制御率
80〜90%
参考
Brown PD et al. JAMA 2016
聴神経腫瘍
腫瘍制御率
90%以上
AVM
完全閉塞
60〜80%(数年)
ガンマナイフの副作用
比較的安全な治療ですが、副作用もあります。
急性期
- 頭痛
- 吐き気
- 疲労感
晩期副作用
- 放射線壊死
- 脳浮腫
- 神経症状
ただし頻度は低く
手術に比べて合併症は少ないとされています。
ガンマナイフとサイバーナイフの違い
ガンマナイフとサイバーナイフは、どちらも定位放射線治療(Stereotactic Radiosurgery:SRS)に分類される高精度放射線治療です。
しかし、使用する放射線や治療できる部位などに違いがあります。
| ガンマナイフ | サイバーナイフ | |
|---|---|---|
| 放射線 | ガンマ線(コバルト60) | X線 |
| 治療装置 | 固定型装置 | ロボットアーム |
| 主な対象 | 脳疾患 | 全身 |
| 精度 | 非常に高い | 高い |
| 固定方法 | 頭部フレーム | マスク |
| 照射回数 | 1回が多い | 1〜5回 |
治療できる部位の違い
ガンマナイフ
脳専用装置です。
主な適応
- 脳転移
- 髄膜腫
- 聴神経腫瘍
- 下垂体腫瘍
- 脳動静脈奇形(AVM)
- 三叉神経痛
サイバーナイフ
全身の腫瘍を治療できます。
主な適応
- 脳腫瘍
- 肺がん
- 前立腺がん
- 肝臓がん
- 脊椎転移
詳しくはこちら
→ サイバーナイフとは
精度の違い
ガンマナイフは
- 頭部フレーム固定
- 脳専用設計
のため、非常に高い照射精度(1mm以下)を実現しています。
一方、サイバーナイフは
- ロボットアーム
- 画像誘導システム
により、体の動きを補正しながら照射することができます。
患者の負担の違い
ガンマナイフ
- フレーム固定が必要
- 多くは1回治療
サイバーナイフ
- マスク固定
- 数回照射が多い
そのため患者の状態に応じて
- 短時間で治療するガンマナイフ
- 分割照射を行うサイバーナイフ
が使い分けられます。
どちらが優れている?
どちらが優れているというより、適応が異なります。
一般的には
- 脳疾患 → ガンマナイフ
- 全身腫瘍 → サイバーナイフ
が選択されることが多いです。
ガンマナイフの費用(保険適用)
ガンマナイフ治療は、日本では健康保険が適用される治療です。
そのため、患者さんの自己負担は通常
- 3割負担の場合:約20万〜30万円程度
になることが多いです。
ただし、費用は
- 病院
- 入院の有無
- 検査内容
などによって多少変わります。
高額療養費制度が利用できる
日本では高額療養費制度を利用することで、医療費の自己負担を抑えることができます。
例えば
年収約370〜770万円の場合
自己負担上限
約8〜9万円程度
になることが多いです。
そのため実際には
10万円前後の負担で治療できるケースもあります。
参考
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/ko額療養費制度.html
入院は必要?
施設によって異なりますが
- 日帰り治療
- 1泊入院
のいずれかで行われることが多いです。
そのため
入院費が追加される場合があります。
民間医療保険は使える?
多くの場合
- 入院給付金
- 手術給付金
の対象になります。
ただし、保険会社によって扱いが異なるため
契約内容の確認が必要です。
自由診療になることはある?
基本的に日本では保険診療です。
ただし
- 海外患者
- 特殊な治療
などでは自由診療になることがあります。
ガンマナイフとSRT・SBRTの違い
ガンマナイフは
定位放射線治療(SRS)の一種です。
定位放射線治療には
- SRS(1回照射)
- SRT(数回照射)
- SBRT(体幹部)
があります。
詳しくはこちら
- SRTとは
- SBRTとは
新しい放射線治療との違い
近年は
- MRリニアック
- 陽子線治療
- 重粒子治療
など新しい技術も登場しています。
詳しくはこちら
内部リンク
- MRリニアックとは
- 陽子線治療とは
- 重粒子線治療とは
専門医コメント
ガンマナイフは、脳疾患に対する非常に高精度な放射線治療として世界中で使用されています。
特に脳転移の治療では、近年の研究により
- 多数個の脳転移でも定位放射線治療が有効
であることが示され、治療戦略が大きく変化しました。
また近年は
- 免疫療法
- 分子標的薬
との併用により、脳転移患者の予後も改善しています。
なお日本では、ガンマナイフは歴史的な経緯から脳神経外科が中心となって担当する施設が多いという特徴があります。
患者さんの病状により
- 手術
- 全脳照射
- ガンマナイフ
を適切に選択することが重要です。
まとめ
ガンマナイフは
- 脳腫瘍
- 脳転移
- 血管奇形
などに対して行われる高精度な定位放射線治療です。
特徴
- 開頭手術が不要
- 高精度
- 日帰り治療可能
現在では脳疾患治療の重要な選択肢となっています。
FAQ(よくある質問)
Q ガンマナイフは手術ですか?
手術ではありません。
放射線治療です。
Q 痛みはありますか?
照射中の痛みはありません。
フレーム装着時に軽い痛みがあります。
Q 入院は必要ですか?
多くの施設で
日帰り治療が可能です。
Q 何回治療しますか?
多くの場合
1回照射
です。
Q 副作用はありますか?
まれに
- 脳浮腫
- 放射線壊死
などが起こることがあります。
Q 再発した場合はどうなりますか?
状態により
- 再度ガンマナイフ
- 手術
- 全脳照射
などを検討します。
Q 高齢者でも受けられますか?
はい。
高齢者でも安全に行える治療です。
Q 保険は適用されますか?
日本では
健康保険適用です。
Q サイバーナイフとの違いは?
ガンマナイフは
脳専用治療装置
です。
Q 放射線は体に残りますか?
残りません。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。




















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