放射線治療による体力低下|原因・回復の目安・対処法を専門医が解説

放射線治療を始めてから、
体力が落ちた気がします…

それは珍しいことではありません。
放射線治療では疲労や体力低下を感じる方が多いです。

やはりそうなんですね。
回復するのでしょうか?

多くの場合は一時的で、治療終了後に徐々に回復します。
この記事で原因と対処法を解説します。
放射線治療中や治療後に、
- 「体力が落ちた気がする」
- 「少し動いただけで疲れる」
- 「以前より活動量が減った」
と感じる患者さんは少なくありません。
これは単なる気のせいではなく、放射線治療に伴う疲労(倦怠感)や身体機能の変化によって起こることがあります。
国際ガイドラインでも、がん治療中の体力低下は非常に頻度の高い症状として知られています。
この記事では、放射線治療による体力低下について
- なぜ起こるのか
- どのくらい続くのか
- 回復のためにできること
を放射線治療専門医の視点でわかりやすく解説します。
※放射線治療全体の副作用については
→ 内部リンク:放射線治療の副作用まとめ(親記事)
をご覧ください。
放射線治療で体力低下が起こる理由

疲れているだけなのか、
体力が落ちているのか分かりません。

がん治療ではがん関連疲労と呼ばれる特有の疲労が起こります。

普通の疲れとは違うんですか?

休んでも完全には回復しにくいのが特徴です。
ただし多くは時間とともに改善します。
放射線治療による体力低下には、いくつかの要因が関係しています。
放射線治療による疲労(Cancer-related fatigue)
もっとも大きな原因はがん関連疲労(Cancer-related fatigue)です。
これは
- がんそのもの
- 放射線治療
- 化学療法
- 精神的ストレス
などが複合的に影響して起こる症状です。
国際ガイドラインでも、がん患者の約60〜90%が経験すると報告されています。
参考
NCCN Guidelines – Cancer-Related Fatigue
https://www.nccn.org/guidelines
筋力低下(活動量の減少)
治療中は
- 外出が減る
- 運動量が減る
- ベッドで過ごす時間が増える
といった生活の変化が起こりやすくなります。
これにより
筋肉量が減少し体力が落ちる
という状態になります。
特に高齢者では、短期間でもサルコペニア(筋肉減少)が起こることがあります。
炎症反応
最近の研究では、がん治療による疲労の原因として
炎症性サイトカイン
が関与することが示されています。
これにより
- 倦怠感
- 活動低下
- 筋力低下
などが起こると考えられています。
参考
American Society of Clinical Oncology
Cancer-related fatigue guideline
https://www.asco.org
貧血
放射線治療中には
- 骨髄抑制
- 栄養状態の変化
などにより軽度の貧血が起こることがあります。
貧血があると
- 動くと息切れ
- 体力低下
- 疲れやすい
といった症状が強くなることがあります。
体力低下はどのくらい続く?
体力低下のピークは
治療後半〜治療終了直後
であることが多いです。
多くの場合
回復の目安
- 治療終了後1〜2週間 → 徐々に改善
- 治療後1〜2か月 → 多くは回復傾向
- 治療後3か月 → かなり改善
とされています。
ただし
- 高齢
- 化学療法併用
- 長期間の治療
などの場合は回復に時間がかかることもあります。
体力低下を改善する方法
国際ガイドラインでは、次の方法が推奨されています。
軽い運動
最も効果があるとされているのが
適度な運動
です。
例
- 散歩
- 軽いストレッチ
- ヨガ
- 自転車
研究では
軽い運動は疲労をむしろ改善する
ことが示されています。
参考
American College of Sports Medicine
Exercise Guidelines for Cancer Survivors
→放射線治療中の運動についてはこちらの記事で解説しています。
睡眠の改善
睡眠の質が悪いと疲労は悪化します。
ポイント
- 毎日同じ時間に寝る
- 昼寝を長くしすぎない
- 就寝前のスマホを控える
→放射線治療中の睡眠についてはこちらの記事で解説しています。
栄養管理
体力回復には
十分な栄養摂取
が重要です。
特に
- タンパク質
- 鉄分
- ビタミン
が不足しないようにしましょう。
→放射線治療中の食事についてはこちらの記事で解説しています。
無理をしない
疲労が強いときは
休むことも大切です
活動と休息のバランスを取ることが重要です。
放射線治療後の体力回復までの期間

体力はどのくらいで戻りますか?

多くの方は治療後1〜2週間で改善を感じ始めます。

すぐには戻らないんですね。

はい。1〜3か月かけてゆっくり回復することが多いです。
放射線治療後の体力回復には個人差がありますが、多くの患者さんでは徐々に回復していきます。
一般的な回復の目安は以下の通りです。
治療終了後の経過
1〜2週間
疲労や体力低下が最も強い時期
3〜4週間
少しずつ活動量が戻る
1〜2か月
日常生活はほぼ回復
3か月
多くの患者で体力がかなり回復
ただし次のような場合は回復に時間がかかることがあります。
- 高齢
- 化学療法の併用
- 治療期間が長い
- 栄養状態が悪い
国際ガイドラインでも、がん関連疲労は治療終了後数週間〜数か月で改善することが多いとされています。
参考
National Comprehensive Cancer Network
Cancer-Related Fatigue Guidelines
体力低下が強く出やすい人の特徴
放射線治療による体力低下の程度には個人差があります。
以下のような条件があると、疲労や体力低下が強く出やすいとされています。
高齢
高齢になるほど
- 筋肉量の減少
- 回復力の低下
があるため、体力低下が目立ちやすくなります。
化学療法の併用
化学療法を併用する場合
- 骨髄抑制
- 食欲低下
- 貧血
などの影響で疲労が強くなることがあります。
治療範囲が広い
照射範囲が広い場合
- 炎症反応
- エネルギー消費
が増えるため、疲労が出やすくなります。
もともとの体力が低い
運動習慣が少ない場合
- 筋力低下
- 活動量低下
が起こりやすく、体力低下を感じやすくなります。

体力低下が強いと危険なのでしょうか?

多くの場合は心配ありません。
ただし症状が強い場合は主治医に相談しましょう。

貧血などが原因のこともありますか?

はい。血液検査で確認できることもあります。
放射線治療後の体力回復のためのリハビリ

疲れていると、運動していいのか迷います。

無理のない運動はむしろ疲労改善に役立つことがあります。

どんな運動がいいですか?

まずは短い散歩やストレッチから始めるのがおすすめです。
最近では、がん治療後の体力回復のために
がんリハビリテーション
が重要視されています。
参考
American College of Sports Medicine
Exercise Guidelines for Cancer Survivors
軽い有酸素運動
おすすめの運動
- 散歩
- 軽い自転車
- 水中歩行
目安
1日10〜20分程度
無理のない範囲から始めることが大切です。
軽い筋力トレーニング
筋肉量の回復には
- スクワット
- 軽い体操
- チューブ運動
などが有効です。
エクササイズバンド
体力回復には、軽い筋力トレーニングも効果的とされています。
エクササイズバンド(トレーニングチューブ)は
- 負荷を調整しやすい
- 自宅で簡単に運動できる
- 関節への負担が少ない
という特徴があります。
放射線治療後のリハビリでは、無理のない軽い運動から始めることが大切です。
ストレッチ
ストレッチは
- 血流改善
- 疲労軽減
に役立ちます。
ストレッチマット
自宅でストレッチや軽い運動を行う場合、ストレッチマットがあると体への負担を減らすことができます。
床で直接ストレッチをすると
- 腰や膝が痛くなる
- 滑りやすい
ことがあります。
ヨガマットやストレッチマットを使うことで
- 軽い体操
- ストレッチ
- リハビリ運動
を安全に行うことができます。
フォームローラー
運動後の疲労回復や筋肉のこわばりには、フォームローラー(ストレッチローラー)が役立つことがあります。
フォームローラーは
- 筋肉の緊張をほぐす
- 血流を改善する
- ストレッチをサポートする
といった効果が期待されます。
放射線治療後の体力回復期にも、無理のない範囲でのセルフケアとして使われることがあります。
活動量を少しずつ増やす
重要なのは
少しずつ活動量を増やすこと
です。
急に運動量を増やすと逆に疲労が悪化するため、段階的に増やしていきましょう。
体力低下で注意すべき症状
次の症状がある場合は医師に相談しましょう。
- 強い息切れ
- 動悸
- めまい
- 立てないほどの倦怠感
これらは
- 貧血
- 感染症
- 心疾患
などの可能性があります。

体力が落ちると、このまま戻らないのではと不安になります。

そのように感じる方は多いです。

実際はどうなのでしょうか?

多くの方は回復します。
大切なのは焦らず少しずつ活動量を増やすことです。
専門医コメント
放射線治療中の体力低下は非常に多くの患者さんが経験する症状です。
しかし多くの場合は一時的なものであり、治療終了後に徐々に回復します。
むしろ重要なのは
- 完全に安静にしすぎない
- できる範囲で体を動かす
- 栄養をしっかりとる
という点です。
近年の研究では、適度な運動が疲労改善に最も効果的であることが示されています。
体力が落ちたと感じても、焦らず少しずつ活動量を増やすことが回復の近道になります。
まとめ
放射線治療では体力低下を感じることがあります。
主な原因は
- がん関連疲労
- 筋力低下
- 炎症反応
- 貧血
などです。
多くの場合
治療後数週間〜数か月で改善します。
回復のためには
- 軽い運動
- 睡眠改善
- 栄養管理
が重要です。
疲労が強い場合は、遠慮なく主治医に相談してください。
放射線治療で体力が落ちるのはなぜですか?
放射線治療による体力低下の主な原因は、がん関連疲労(Cancer-related fatigue)です。
がんそのものや治療の影響、活動量の低下、炎症反応、貧血などが複合的に関係して起こります。
放射線治療による体力低下はどのくらい続きますか?
多くの場合、体力低下は治療後半から治療終了直後にピークとなります。
その後、治療終了後1〜2週間で改善し始め、1〜3か月程度で回復することが多いとされています。
放射線治療中に運動しても大丈夫ですか?
体調が許す範囲であれば、軽い運動はむしろ疲労改善に効果があるとされています。
散歩やストレッチなど、無理のない運動が推奨されています。
放射線治療で筋力は落ちますか?
治療中に活動量が減ると、筋肉量が減少して筋力低下が起こることがあります。
そのため、可能な範囲で体を動かすことが重要です。
体力低下を防ぐ方法はありますか?
体力低下を防ぐためには
適度な運動
十分な睡眠
バランスの良い食事
が重要です。無理をせず、少しずつ活動量を維持することが大切です。
疲れていても散歩して大丈夫ですか?
体調が安定していれば、短時間の散歩は疲労改善に役立つことがあります。
ただし強い疲労や体調不良がある場合は無理をせず休むことも重要です。
体力低下が強い場合はどうすればいいですか?
体力低下が強い場合は
貧血
感染症
栄養不足
などが関係していることがあります。
気になる場合は主治医に相談しましょう。
体力回復のために食事で気をつけることはありますか?
体力回復には
タンパク質(肉・魚・卵・豆類)
ビタミン
ミネラル
を含むバランスの良い食事が重要です。
放射線治療後に体力は元に戻りますか?
多くの場合、体力は数週間から数か月で徐々に回復します。
ただし年齢や治療内容によって回復速度には個人差があります。
体力低下と倦怠感は違う症状ですか?
体力低下は身体機能の低下を指し、倦怠感は主観的な疲労感を指します。
放射線治療では両方が同時に起こることが多いとされています。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。



























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