放射線治療の尿漏れ|原因・対処・いつまで続くかを専門医が解説

放射線治療のあと、
少し尿が漏れることがあります…。
これって大丈夫なんでしょうか?

放射線治療のあとに軽い尿漏れが起こることはあります。
ただし重い尿失禁は多くなく、
多くの場合は時間とともに改善します。
原因や対処法を一緒に見ていきましょう。
放射線治療を受けた後に、
- 「尿が少し漏れる」
- 「くしゃみや咳で尿が出る」
- 「トイレが間に合わない」
といった尿漏れ(尿失禁)が起こることがあります。
頻度はそれほど高くありませんが、生活の質(QOL)に影響するため不安になる方も多い副作用です。
この記事では放射線治療後の尿漏れについて、
- なぜ起こるのか
- どれくらいの頻度で起こるのか
- いつまで続くのか
- 自宅でできる対策
を放射線治療専門医の視点からわかりやすく解説します。
→内部リンク:【放射線治療の副作用まとめ】
放射線治療で尿漏れは起こる?
放射線治療後に尿漏れ(尿失禁)が起こることがあります。
ただし重要なのは、
放射線治療単独では重い尿失禁は比較的まれ
という点です。
特に多いのは
- 前立腺がん
- 膀胱付近のがん
の治療後です。
参考:
外部リンク
European Association of Urology Guidelines
https://uroweb.org/guidelines

どうして放射線治療で尿漏れが起こるんですか?

主な原因は
・膀胱の刺激
・尿道括約筋の働きの変化
です。
多くは一時的な炎症によるものです。
尿漏れが起こる主な原因
放射線治療後の尿漏れは主に次の3つの原因で起こります。
尿道括約筋の機能低下
尿を止めている筋肉を
尿道括約筋
といいます。
放射線により
- 軽い炎症
- 組織の硬さ(線維化)
が起こることで、尿を止める力が弱くなる場合があります。
膀胱刺激症状
放射線により膀胱が刺激されると
- 頻尿
- 尿意切迫(急にトイレに行きたくなる)
が起こります。
これが原因で
トイレに間に合わない尿漏れ
が起こることがあります。
手術後の放射線治療
尿漏れが起こりやすいのは
前立腺全摘術後の放射線治療
です。
手術により
- 尿道括約筋
- 神経
が影響を受けるため、放射線が追加されると尿漏れが起こる可能性が高くなります。

前立腺がんの手術を受けた人は、
尿漏れが起こりやすいと聞いたのですが…

はい。
前立腺手術後に放射線治療を追加する場合は、
尿を止める筋肉が影響を受けているため、
尿漏れが起こりやすくなることがあります。
尿漏れのタイプ
尿漏れにはいくつかのタイプがあります。
放射線治療後に多いのは次の2つです。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、運動などで
お腹に力が入ったときに尿が漏れるタイプ
です。
原因
- 尿道括約筋の機能低下
- 骨盤底筋の弱化
前立腺手術後に比較的多くみられます。
切迫性尿失禁
突然強い尿意が起こり
トイレに間に合わず漏れてしまうタイプ
です。
原因
- 膀胱の過敏性
- 膀胱刺激症状
放射線治療後の膀胱刺激で起こることがあります。
尿漏れの頻度
研究によると
放射線治療単独の場合
重度尿失禁は
約1〜3%程度
と報告されています。
参考研究
外部リンク
Dearnaley et al. Lancet Oncology 2016
手術と放射線治療で尿失禁の頻度は違う?
前立腺がん治療では
- 手術(前立腺全摘術)
- 放射線治療
の両方が選択肢になります。
一般的に
尿失禁は手術のほうが起こりやすい
とされています。
研究では
手術後
約10〜20%
放射線治療
約1〜3%
と報告されています。
参考
ProtecT Trial
NEJM
ただし治療選択は
- がんの状態
- 年齢
- 合併症
などによって総合的に決められます。
尿漏れはいつまで続く?

尿漏れはずっと続いてしまうんでしょうか?

多くの場合は数か月〜1年ほどで改善していきます。
膀胱や周囲の組織が回復してくるためです。
多くの場合
数ヶ月〜1年以内に改善
します。
理由は
- 炎症が改善する
- 膀胱が回復する
ためです。
ただし
- 手術後照射
- 高齢
- 糖尿病
などでは長く続くことがあります。
自宅でできる対策

自分でできる対策はありますか?

はい。もっとも効果が期待できるのは骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)です。
尿を止める筋肉を鍛えることで改善することがあります。
骨盤底筋トレーニング
最も重要なのは
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)
です。
骨盤底筋を鍛えることで
尿漏れが改善する可能性があります。
やり方
- 尿を止める感覚で筋肉を締める
- 5秒キープ
- ゆるめる
- 10回×1日3セット
骨盤底筋トレーニング器具
骨盤底筋トレーニングをサポートする器具も販売されています。
自宅でトレーニングを続けたい方には役立つことがあります。
水分を適度に取る
水分を控えすぎると
- 膀胱刺激
- 尿路感染
の原因になります。
適度な水分摂取が重要です。
カフェインを控える
カフェインは
- 膀胱刺激
- 頻尿
を悪化させることがあります。
注意が必要な飲み物
- コーヒー
- 緑茶
- エナジードリンク
ノンカフェイン飲料
尿漏れパッドを利用する
症状がある間は
尿漏れパッド
を使うことで安心して生活できます。
尿漏れパッドの選び方
尿漏れがある場合、尿漏れパッドを使うことで安心して生活できます。
選ぶポイントは次の3つです。
吸収量
軽い尿漏れ
20〜50ml
中等度
50〜150ml
重度
150ml以上
症状に合わせて選びます。
男性用と女性用
男性は
男性専用パッド
のほうが体の形に合いやすく漏れにくいです。
交換しやすさ
外出時は
- コンパクト
- 個包装
タイプが便利です。
男性用尿漏れパッド
尿漏れがある場合、尿漏れパッドを使うことで安心して生活できます。
症状の程度に合わせて吸収量を選ぶことが大切です。
医療機関での治療
症状が続く場合は
次の治療が行われることがあります。
- 骨盤底筋リハビリ
- 薬物治療
- 尿失禁手術(まれ)
日本泌尿器科学会でも
骨盤底筋訓練が第一選択
とされています。
参考
外部リンク
日本泌尿器科学会
https://www.urol.or.jp
手術後の放射線治療で尿漏れが長く続く場合
前立腺がんの手術後に放射線治療を追加した場合、尿漏れが長く続くことがあります。
これは
- 手術による尿道括約筋への影響
- 神経のダメージ
- 放射線による組織の硬さ(線維化)
などが重なるためです。
そのため一部の患者さんでは
1年以上尿漏れが続くことがあります。
ただし、長期間続く場合でも治療によって改善する可能性があります。
長く続く尿漏れの治療
症状が長く続く場合、泌尿器科では次のような治療が検討されます。
骨盤底筋リハビリ
専門の理学療法士による
骨盤底筋トレーニング指導
が行われることがあります。
自己流よりも効果が高い場合があります。
薬物治療
尿失禁のタイプによって
- 抗コリン薬
- β3作動薬
などが使用されることがあります。
尿失禁手術
重度の尿失禁では次の手術が検討されることがあります。
尿道スリング手術
尿道を支えるテープを入れる手術です。
または
人工尿道括約筋
尿道を人工的に締める装置です。
これは重度の尿失禁に対して非常に有効な治療とされています。
参考
AUA Guideline
https://www.auanet.org/guidelines
専門医からのアドバイス
前立腺手術後に放射線治療を受けた場合、尿漏れが長く続くことがあります。
しかし、
- 骨盤底筋リハビリ
- 薬物治療
- 尿失禁手術
など、改善のための治療法がいくつも存在します。
「治らない」と思い込まず、症状が続く場合は泌尿器科に相談することが大切です。
夜間の尿漏れが心配な場合
夜間の尿漏れが心配な場合は
- 防水シーツ
- マットレスカバー
- 尿器
などを使うことで安心して休むことができます。
医療機関を受診したほうがよい症状
次のような場合は、泌尿器科や放射線治療医に相談することをおすすめします。
- 尿漏れが1年以上続いている
- 尿漏れパッドを1日に何枚も使用する
- トイレに間に合わないことが多い
- 生活や外出に大きく影響している
- 症状が徐々に悪化している
長く続く場合でも、治療によって改善する可能性があります。
早めに相談することで、適切な治療を受けられる可能性が高くなります。

尿漏れがあると、
どうしても不安になります…

そうですよね。
ただ、放射線治療後の尿漏れは多くの場合改善します。
無理に我慢せず、気になる症状があれば医療機関に相談してください。
専門医コメント
放射線治療後の尿漏れは、不安を感じる症状の一つですが、重度の尿失禁は比較的まれです。
多くの場合は
- 炎症の改善
- 膀胱機能の回復
とともに時間とともに改善していきます。
また、骨盤底筋トレーニングは医学的にも効果が確認されている対策です。
症状が強い場合や長く続く場合は、泌尿器科や放射線治療医に相談してください。適切な治療により改善する可能性があります。
外出時の不安がある場合
頻尿や尿漏れがある場合、外出時にトイレが心配になることがあります。
そのような場合は
- 携帯用尿器
- ポータブルトイレ
が役立つことがあります。
まとめ
放射線治療後の尿漏れについてまとめます。
- 放射線治療後に尿漏れが起こることがある
- 重度尿失禁は比較的まれ
- 原因は膀胱刺激や括約筋機能低下
- 多くは数ヶ月〜1年以内に改善
- 骨盤底筋トレーニングが有効
関連記事
→放射線治療の副作用まとめ
FAQ(よくある質問)
放射線治療で尿漏れはよく起こりますか?
放射線治療単独では重い尿失禁は比較的まれで、約1〜3%程度と報告されています。
前立腺がんの放射線治療で尿漏れは起こりますか?
起こることがあります。特に前立腺手術後に追加で放射線治療を行う場合はリスクが高くなります。
尿漏れはいつまで続きますか?
多くは数ヶ月〜1年以内に改善します。
放射線治療中に尿漏れは起こりますか?
治療中よりも、治療後に症状が出ることが多いです。
骨盤底筋トレーニングは効果がありますか?
多くの研究で効果が示されており、第一選択の対策とされています。
水分を減らしたほうがいいですか?
減らしすぎると膀胱刺激や感染の原因になるため適度な摂取が必要です。
コーヒーは飲んでも大丈夫ですか?
カフェインは膀胱刺激を起こすため控えめが望ましいです。
尿漏れパッドは使ってもいいですか?
症状がある間は安心して生活するために使用して問題ありません。
尿漏れが治らない場合はどうすればいいですか?
泌尿器科や放射線治療医に相談すると薬物治療やリハビリが検討されます。
手術が必要になることはありますか?
非常にまれですが、重度の尿失禁では手術が行われる場合があります。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。




























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