【放射線治療後のED】原因・回復の可能性・治療法を放射線治療専門医が解説
放射線治療後のED(勃起障害)
放射線治療後に、勃起機能の低下(ED:Erectile Dysfunction)を経験する患者さんは一定数存在します。
特に以下の治療ではEDが問題になることがあります。
- 前立腺がんの放射線治療
- 骨盤内腫瘍の放射線治療
- 小線源治療(ブラキセラピー)
ただし、放射線治療によるEDは手術と比べて発症がゆるやかで、回復の可能性もあります。
まずは、EDが起こる理由を理解しておきましょう。
※放射線治療中・治療後の生活全般については
→ 【放射線治療中・治療後の生活ガイド】
※放射線治療と性機能のまとめ記事については
放射線治療後にEDが起こる原因
放射線治療によるEDは主に以下の3つの要因で起こります。
1. 血管への影響
勃起は陰茎への血流によって起こります。
放射線治療では
- 陰茎海綿体へ血流を送る血管
- 骨盤内の微小血管
が影響を受けることがあります。
時間とともに血流が低下し、勃起の維持が難しくなることがあります。
2. 神経への影響
勃起には骨盤内の神経(陰茎海綿体神経)が重要です。
放射線治療では
- 神経周囲組織
- 神経を栄養する血管
に影響が出ることがあります。
ただし手術と違い、神経を直接切断するわけではないため回復する可能性があります。
3. 時間をかけて進行する
放射線治療の特徴として
EDはすぐには起こらず、数年かけてゆっくり進行する
ことが知られています。
研究では
- 治療後1年
- 治療後3〜5年
でEDの頻度が増える傾向があります。
(引用:International Journal of Radiation Oncology Biology Physics)
家庭用血圧計
EDは血管機能と関係があることが知られています。
高血圧や血管リスクの管理はED予防にも重要とされています。
放射線治療後のEDはいつから起こる?
放射線治療によるED(勃起障害)は、治療直後に起こることは少なく、時間をかけて徐々に現れることが特徴です。
多くの研究では、EDの発症は以下のような経過をとることが知られています。
EDが起こりやすい時期
- 治療直後:ほとんど変化なし
- 治療後6か月〜1年:軽度の変化が出ることがある
- 治療後1〜3年:EDが増える
- 治療後3〜5年:発症率がピークになる
これは、放射線治療による影響が
- 血管
- 神経周囲組織
にゆっくり現れるためと考えられています。
このため放射線治療では、手術とは異なり
「すぐにEDになる」のではなく、数年かけて変化する
ことが特徴です。
(参考:International Journal of Radiation Oncology Biology Physics)
治療法によるED発症タイミングの違い
前立腺がんの治療法によって、EDの起こり方は異なります。
手術(前立腺全摘)
- 手術直後からEDが起こることが多い
放射線治療
- 数年かけて徐々に起こることが多い
そのため放射線治療では
治療後しばらく性生活に問題がなくても、数年後に変化が出ることがあります。
ED予防のためにできること
完全な予防方法はありませんが、以下が重要とされています。
- 生活習慣の改善
- 血圧・糖尿病の管理
- 適度な運動
- ED治療薬の早期使用(陰茎リハビリ)
これらは勃起機能の維持に役立つ可能性が報告されています。
(参考:Journal of Sexual Medicine)
放射線治療後EDの発症率
報告によって差はありますが、
前立腺がん放射線治療後のED発症率
約30〜50%
とされています。
参考研究
- International Journal of Radiation Oncology Biology Physics
- European Urology
ただし発症率は以下の影響を受けます。
EDリスク因子
- 年齢
- 糖尿病
- 高血圧
- 喫煙
- 治療前の性機能
- ホルモン治療併用
特にホルモン療法併用ではEDが起こりやすくなります。
放射線治療後のEDは回復する?
結論から言うと
回復するケースもあります。
放射線治療では
- 神経を切断しない
- 血管機能が回復する場合がある
ためです。
研究では
治療後1〜2年で回復する例
も報告されています。
(引用:American Society for Radiation Oncology)
放射線治療後EDの治療法
現在はEDに対する治療法がいくつか存在します。
1 ED治療薬(第一選択)
最も一般的な治療です。
代表薬
- シルデナフィル
- タダラフィル
- バルデナフィル
これらは
PDE5阻害薬
と呼ばれます。
多くの研究で
前立腺がん放射線治療後EDにも有効
とされています。
(引用:European Association of Urology guideline)
ピルケース(ED治療薬の管理)
ED治療薬は「必要時服用」や定期服用になることがあります。
ピルケースを使うと飲み忘れ防止や持ち運びに便利です。
2 陰圧式勃起補助具
薬が使えない場合
陰圧ポンプ
という方法もあります。
血流を人工的に増やし、勃起を助ける装置です。
3 陰茎リハビリテーション
最近は
penile rehabilitation(陰茎リハビリ)
という考え方が広まっています。
例
- 早期ED薬使用
- 血流維持
- 勃起機能訓練
これにより
性機能の回復率が上がる可能性
が指摘されています。
(引用:Journal of Sexual Medicine)
放射線治療後のEDはどこに相談すればよい?
EDは珍しい症状ではなく、多くの男性が経験する可能性があります。
特に前立腺がんなど骨盤内の放射線治療後には、性機能の変化が起こることがあります。
しかし、EDは適切な治療で改善することも多い症状です。
相談できる診療科
EDの相談先としては以下があります。
泌尿器科
最も一般的な相談先です。
ED治療薬や必要な検査を受けることができます。
がん治療の主治医
放射線治療後の場合、まずは主治医へ相談しても問題ありません。
男性更年期外来
男性ホルモン低下が関係している場合に対応します。
EDを相談するタイミング
以下のような場合は相談をおすすめします。
- 勃起しにくい
- 勃起が維持できない
- 性生活に支障がある
- 治療後に性機能が低下した
EDは生活の質(QOL)に関わる重要な症状です。
遠慮せず医療機関に相談しましょう。
パートナーとのコミュニケーションも重要
EDは身体の問題だけではなく
心理的影響
も大きいとされています。
- 治療への不安
- 自信低下
- パートナーとの関係
などが影響します。
必要に応じて
- 主治医
- 泌尿器科
- 性機能外来
に相談することが重要です。
専門医コメント
放射線治療後のEDは、患者さんにとって非常に重要な問題です。
特に前立腺がん治療では、がんの治療成績だけでなく生活の質(QOL)も重要になります。
放射線治療によるEDは、手術と比べると
- 発症がゆっくり
- 回復する可能性がある
という特徴があります。
また現在は
- ED治療薬
- 勃起補助具
- リハビリ
など、さまざまな治療法があります。
一人で悩まず、主治医や泌尿器科に相談することをおすすめします。
まとめ
放射線治療後のEDは一定の割合で起こります。
ポイント
- EDは主に血管や神経への影響で起こる
- 発症は数年かけて進行することが多い
- 回復する可能性もある
- ED薬などの治療法が存在する
気になる症状がある場合は、主治医へ相談しましょう。
FAQ よくある質問
放射線治療後にEDはよく起こりますか?
前立腺がん放射線治療後では約30〜50%の患者でEDが報告されています。ただし年齢や基礎疾患、ホルモン治療の有無によって変わります。
放射線治療のEDはすぐ起こりますか?
多くの場合、EDは治療直後ではなく数年かけて徐々に起こります。
放射線治療後のEDは回復しますか?
回復するケースもあります。神経を切断する手術とは異なり、血流や神経機能が回復する場合があります。
ED治療薬は放射線治療後でも使えますか?
多くの場合使用可能です。PDE5阻害薬(シルデナフィルなど)は第一選択治療として使用されます。
放射線治療後のEDは手術より多いですか?
手術では神経損傷の影響でEDが早期に起こることが多く、放射線治療ではゆっくり進行する傾向があります。
ホルモン治療はEDに影響しますか?
はい。ホルモン療法は男性ホルモンを低下させるためEDが起こりやすくなります。
EDを予防する方法はありますか?
完全な予防法はありませんが、ED薬を早期に使用する「陰茎リハビリ」が有効な可能性があります。
年齢はEDに影響しますか?
はい。年齢が高いほどEDのリスクは高くなります。
パートナーとの性生活は続けられますか?
多くの場合、ED治療薬などを使うことで性生活を続けることが可能です。
どの診療科に相談すればよいですか?
主治医または泌尿器科に相談することをおすすめします。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。





















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