乳癌の放射線治療におけるX線と陽子線治療の比較

2017年3月27日

2017 Mar 15;97(4):754-761. doi: 10.1016/j.ijrobp.2016.12.008. Epub 2016 Dec 13.

Joint Estimation of Cardiac Toxicity and Recurrence Risks After Comprehensive Nodal Photon Versus Proton Therapy for Breast Cancer.

乳癌の放射線治療におけるX線と陽子線の比較の論文。
統計解析があまり見慣れないもののため、詳細に読み込んではいないが、要点に関して。
今回の論文で特に対象としているのは、内胸リンパ節領域のような領域照射をあわせて行うような状況である。
内胸リンパ節を照射野に含める場合には、通常の照射に比べると、どうしても肺が深部まで照射され、また心臓の線量も上がってしまうという特徴があり、長期的なリスクを考えた上では、どこまで照射するのかというのは難しい問題である。
今回の研究では、陽子線治療をspot scanningという手法を用いて照射していくことにより、粒子線の特徴を生かして、肺および心臓の線量を増加させずに領域照射が可能であると報告している。
また、それに伴い将来的な心血管リスクを低減することができ、およそ2.9%程度リスクを減らせるというものである。
この2.9%という数字がどこまでインパクトのあるものなのかというのは議論する必要があるであろう。
一般的に、粒子線治療は高額であり、医療経済的にも簡単に適応を拡大するのは難しい治療法である。
今回の研究では内胸リンパ節の照射というような状況を想定しているが、内胸リンパ節への照射が必要な症例も限定的であり、個別に検討すべきであろう。
もともと左胸部への通常の放射線治療でも、心血管リスクの上昇は限定的であるため、費用に見合うだけのメリットがあるのかどうかは疑問が残る点である。
現時点では、乳癌への粒子線治療の適応は十分にあるとは言えず、通常のX線治療を超えるようなメリットは見出しにくいという印象である。

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